どうでもいい初恋の話

この投稿は「カオスの坩堝 Advent Calendar 2017」の26日目の記事です。

始めまして。そもそもお前誰やねんて方も多いかと思います。中途半端に真面目で中途半端に不真面目をやっておりますみっちです。今回は後から名乗りを上げた人が大勢いるので、ということでの延長戦に機会をいただきました。いやそもそもこれはあどべんとかれんだーでいいのか?というのは昨日の投稿にて説明がありましたね。
自己紹介をします。

恋。なんて甘美な響き。それなのに、残酷なほど鋭い刃を向けることもある。たった二音で、数多の人間が、こうふくを感じ、傷つき、時には成長してゆく。

初恋。そんなもの忘れてしまった、とか、そもそも自分は恋なんてしたことがあるのか、とか思ってみたり。でも少なくとも、私達の人生に何かしらの跡を残しているはずだ。

春は出会いの季節とも別れの季節とも言われるけど、実際はどうなんだろうな。僕にはまだ分からないな。
とか考えながらバスに乗っていると、しばらくして見慣れた門が見えてきた。あれ、立っている先生が前と違うなぁ。

「みなさんおはようございます!」

声が聞こえると同時にはっきりと姿が見えたその女性は、

背は高めだろうか、白のブラウスを着た、僕よりも大人な女性だ。当然か。何よりも、文字通り元気を振りまく声と、明るめの栗色に染めた、それでいて派手に感じないセミロングの髪がマッチしている。

恋に落ちる音がした。

いや正確には当時の私はまだ自覚していなかったはずだ。とにかくあの時胸に響いたあの音はそういう音だったのだろう、今思えば。

呆然としたままの僕を乗せたバスはそのまま門を通り過ぎ、気付けば僕は席に座っていた。
それから二十分くらいで朝の会の時間になった。毎年恒例のドキドキタイム、新しい担任が教室に入ってくるのだ。周りは見知った顔ばかりだし、次は誰だろう、とか、あの人がいいなー、とか話したりして。

ついにその時が来た。

「みなさんおはようございます!」

……。いやいや、これはゆゆしき事態だ。いやまじで?と焦る僕を置いてけぼりにして彼女は自己紹介を始める。

「今日からこのクラスの担任になりましたMです! みんなが楽しく過ごせるように頑張るから、みんなもお手伝いしてね」

まさかこういうことになるとは……。

それからというもの、僕の見える世界はいつもきんいろに輝いていた。朝の挨拶に始まり、昼のお話も帰りの挨拶も、家で過ごす時間さえもがこれまでと全く違うものになっていた。

そんなこんなで九ヵ月ぐらい経って、思いを伝えることもできないまま、そろそろ来年度の話が出てきたなという頃。僕は衝撃の事実を知った。

ある日の帰り際、彼女はこう言ったのだ。

「実は先生、結婚することになりました~」

いやいやいやいや、そんなの聞いてないです先生。友人たちが祝福の言葉をかける中、僕は頭が真っ白になっていた。

どうやって帰ったかはほとんど覚えていない。いつもより少し高めの声で言われたさようならに、返事ができなかったことだけは覚えている。

残り三ヵ月をどう過ごせばいいんだ、と落ち込む私に、全てを察していたらしい偉大なる母は、あんたまだ人生長いやろ、と身も蓋もない言葉を投げてきた。それは分かってるけど、そういうことなんですかおかん……。

数週間の後、母はもちろん友人達のおかげで、納得まではいかないまでも、なんとか心の整理がついた僕は、前と同じように先生に挨拶をしに行く。

やはり半年前より魅力の増した彼女の笑顔を見つけ、より愛しくなると同時に、心が押しつぶされる。

それでも僕は笑顔でこう言うのだ。

「Mせんせぇ、おはよーございますっ!」

みっち6歳、恋を知った春の、終わりと始まりの事である。

なおこの文章はフィクションということにしておきます。

この記事は「カオスの坩堝 Advent Calendar 2017」の26日目の記事でした。 みっちが担当しました。27日目は、KD さん担当の予定です。

コメント

  1. nininga より:

    今度は君が先生となって教え子に恋するのはいかがでしょう

    • みっち より:

      ありよりのありですが、それをここで言うことはできません