これからも私は

この世界には”裏”というものが存在しない。いつも私に見えている部分が表だとするのならば。いや、そもそも今見えているもの以外に見ることのできるものがないのだから、裏表という概念をもっていることがおかしいのかもしれない。

それでも私は、自分に見えていない、裏が存在するのだと信じてやまない。私は裏を探したいのだ。まずは自分の力で無理やりに向こう側を見ようとしてみた。しかしそれはかなわないとすぐにわかった。次は人に「裏というものがあるのではないか」「裏を見せてはくれないか」と質問をしてみた。すると「そんなものはないよバカじゃないの」と軽くあしらわれたり、「あったとして見せられるわけがないだろう」と厳かに叱られたりするばかりであった。最終的には金や暴力で強請るようなことも考えたが、さすがに私の良心がそれを止めた。

かなりの時間をかけて裏を追い求めたが、私はついぞそれを見つけるに至らなかった。でも、このまま見つからないで終わっても良いのではないか?これまで生きてきて、裏を意識することはあれど、裏を知らなくても特段困ることなく生活することはできたではないか。

裏は、今まで通り、見えないままでも、いいのかも、しれない。

コメント

  1. nininga より:

    はてさて表と裏だけなのでしょうか、もう一面はないのでしょうかと
    気になっている次第です