第一回御伽噺改変大会 | カオスの坩堝 https://anqou.net/poc Chaos is not kaos. Sun, 25 Mar 2018 12:47:19 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.1.1 https://anqou.net/poc/wp-content/uploads/2018/02/9dc10fe231765649c0d3216056190a75-100x100.png 第一回御伽噺改変大会 | カオスの坩堝 https://anqou.net/poc 32 32 【結果発表と閉会宣言】御伽噺改変大会 https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1199/ https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1199/#respond Sun, 25 Feb 2018 14:49:39 +0000 https://anqou.net/poc/?p=1199 STARTです。23時過ぎを持って投票受付を終了させていただきました。早速ですが集計結果を発表します。僕は情報弱者なので、スクショを貼り付けて終わり!これ以上の情報は要らんでしょう。

以上です。本当は回答もハンドルネーム付きでお願いしようかと思っていたのですが、まあいいでしょう(次回はそうします)。

今回は全問正解者が複数人いらっしゃいました。簡単すぎたかな?(ただし世界の終りは……)

それでは正解発表です。

 

『鶴の恩返し』 作:takshaka

『鶴の・・・』 作:すぺくた

『恩と仇』 作:START

『世界の終り』 作:wotto

 

4人も作者がいると、迷う部分も出てくるのではないでしょうか。次回開催時は、より多くの作者、そして読者の参加を期待しております。

色々と話したいこともありますが、あまり遅くなるといけないのでこのへんで。諸々の感想は私のTwitter(@start_citrus)で述べる予定です。

これにて第一回御伽噺改変大会は閉会となります。

多くの方々のご参加、本当にありがとうございました。またの開催をお待ち下さい!

 

平成30年 2月25日 START

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【作者当て開始】御伽噺改変大会 https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1183/ https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1183/#comments Sun, 25 Feb 2018 10:07:39 +0000 https://anqou.net/poc/?p=1183 STARTです。御伽噺改変大会、いよいよ読者による作者当てを開始します。

こちらで回答を受け付けています。受付時間ですが、開始が遅れたこともありますので、

23時までとさせていただきます。たっぷりだね!じっくり読んで回答していただければ幸いです。

 

そして、回答フォームではそれぞれの作品の感想も任意で受け付けています。少なくとも僕は感想や批判がもらえれば有難いと思う人間なので、一言でも感想を添えてくれると嬉しいです……が、あくまで任意です。

回答フォームでも表示されますが、参加者はこちらの四名です。

・START

・takshaka

・wotto

・すぺくた

(五十音順)

 

それでは、作者当てを開始致します!

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世界の終り https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1179/ https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1179/#respond Sun, 25 Feb 2018 09:18:31 +0000 https://anqou.net/poc/?p=1179  …息ができない。…苦しい。苦しい。苦しい!

 目を覚ますと、タミキはベッドの上で横たわっていた。ベッドとはいっても、もはやその原型を留めてはいない。あちこちが焼きただれ、辛うじて人が1人横たわることのできる程度のスペースがあるのみだ。
 ふと上を見ると、そこは空だった。どんよりとした灰色の雲に覆われた、ひろいひろい空。天井がない。崩れ落ちてしまっている。周りの壁も同様に、焼け落ちているか、原形をとどめていたとしてもぼろぼろだ。触ると、さらさらと音をたてて崩れ去った。
 立ち上がろうとすると、全身に貫くような痛みが走った。まるでフルマラソンを走った次の日みたいだ。なんとか這いつくばって部屋の外に出て、朽ち果てた階段を慎重に降りる。リビングには誰もいない。ぼんやりとした頭がようやく覚めてきて、いま自分のおかれている状況が把握できるようになってきた。声を出そうとするが、うまくいかない。ただむなしく、ひゅうひゅうという風の音が聞こえるだけだった。

(目が覚めたの?)
 突然、頭の中に声が響く。その声は男のような女のような、高いような低いような、野太いような繊細なような、そんな声だった。
(ずいぶんと長い間眠っていたみたいだけど、ちゃんと歩ける?)
 その声は頭のなかでまた問いかける。タミキは両手足に精一杯の力を込めて、数分間の格闘の末なんとか立ち上がる。まだ頭がふらふらする。
 (外に出てごらん)
 玄関だったものは全て吹き飛んでしまっていた。裸足でそのまま外に出る。こんなことをするのは初めてだった。アスファルトの感触がそのまま伝わってくる。
 外の世界もタミキの家と同じで、ぐちゃぐちゃに破壊されているか、原形をとどめていたとしてもぼろぼろだった。ほかの人は誰も居ない。昔本で読んだゴースト・タウンみたいだと思った。世界の人口が爆発的に増えていた時代、居住区として様々な山や森林を切り開きそこにニュー・タウンを建設し続けていた。だが人口が減った今、そこに住むものなど誰もいなくなり、残ったのは無数のビルディングだけであった。

 目的もなくぶらぶらと歩いていたところで、タミキは目を覚ましてから何も食べていないことに気が付いた。お腹もなんだか空いている気がする。
 (おなかがすいた)
 返事がないかと期待して、心の中でそう呟いてみる。
 (そこの角を右に曲がると、コンビニエンスストアがあるよ)
 言われたとおりに曲がると、確かにコンビニエンスストアがあった。もちろんライトはついていない。ほかの建物同様に崩れ果ててはいたが、どうやら店の中の商品は無事のようだった。タミキは適当に栄養補給剤を何個か手に取り、無心で食べた。はじめての万引きのような気がするが、この状況でそんなことも言ってられないし、第一取り締まる店員さんもお巡りさんもいない。
 (お腹はふくれた?)
 (うん。ありがとう)
 だが、お腹もふくれたところで、そろそろ現実に目を向けなければならない。この世界は何なのか?タミキ以外の人間は一体どこへ行ってしまったのか?そして、頭の中に響く謎の声は何なのか?疑問が次から次へとわいてくる。
 (タミキ、あそこに見える丘まで行こう)
 何から質問すればいいのか迷っているのを察知したのか、その声は優しくタミキに話しかけた。少し歩いたところに、小高くなっている場所がある。タミキはその声に従い、ふらふらとよろけながらなんとか足を進める。

 丘についた。思い出した。ここからの景色は絶景だったんだ。町が一望出来て、天気の良い日なんて遥か遠くのスカイ・タワーや宇宙エレベータなんかも見えた。夜になると無数のライトが一面に広がって、まるで天の川の上にいるようだった。僕はこの景色が好きで、いつも家族と一緒にこの場所を訪れていたんだ。
 でも、今日見える光景は幻想的でもなんでもなかった。全ての建物は灰色の残骸と化し、空はどこまでも灰色の雲が覆う。おおよそ色という色は何もない、灰色の世界。スカイ・タワーも、宇宙エレベータも、遊覧飛行船も、何も見えない。
 (ご覧)
声が響く。(これが世界の終りだよ)
ふと、遠く遠くに、黒い影が見える。雲に紛れて、その大きな大きな「何か」は、ゆっくりと蠢いている。怪物。化け物。タミキの頭では、それが果たして何なのか到底検討がつかない。ただ、無限の恐怖が襲い掛かるだけだった。

「…ここはどこなんだ! そして君は一体誰なんだ!?」
タミキは思わずそう叫ぶ。
(…563年前、私はこの星に不時着した。燃料も切れ、食料も底をつき、死にかけていたところを、ある一人の男の人に助けられた。そして私はその恩返しとして、その人と、その子孫全員の繁栄を願ったの。そしてあなたはその末代のひとり)
 急に、タミキの体が光始める。その光はだんだんと体を抜け空へと向かい、一筋の光の線となって澱んだ空を照らした。すると、別の場所からも同じような光が見えた。さらに別の場所からも、またまた別の場所からも。何十本もの光の線は空で一つに集まり、世界を照らした。
 (世界は終っても、あなたたちは終らない。どうか、あなたの希望でありますように)
 そう声が聞こえると、その光は雲を突き抜け、はるか宇宙へと飛び立った。

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恩と仇 https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1173/ https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1173/#respond Sun, 25 Feb 2018 09:00:25 +0000 https://anqou.net/poc/?p=1173 あの娘が来たのは寒い冬の夜でした。
「ごめんください。どなたか、食べ物を分けてはいただけませんか」

飢饉の口減らしのため、住んでいた村から殆ど追い出されるように旅に出たという娘を、あの人はすぐに家の中に通しました。あの人というのは、ええ、そうです。私の夫のことです。
心優しいあの人のことです。野垂れ死にそうな娘をそのまま放っておく筈もありませんでした。娘にご飯を食べさせている間に、あの人は私に相談をしてきたのです。彼女をこのまま家に住まわせてはくれないか、と。
私に断る理由なんてありませんでしたし、実際表向きは快くその提案を受け入れました。着のみ着のままで旅に出ている娘をそのまま放り出したりなどすれば、すぐに死んでしまうのは確かでしょうしね。ですが、私は彼女を家におくのは、本当は嫌でした。
「ありがとうございます。このご恩は、どのようにお返しすればよろしいのやら」
そう言って頭を下げた娘を見つめるあの人の横顔を、私はじっと見ていました。いつも通りの穏やかな表情からは、何かを読み取ることはできません。とはいえ、まさか気付いていない筈もないでしょう。娘が、この世のものと思えない程に美しいということには。

私の不満が、全て娘への嫉妬から来るものというわけではありません。最初から、私は娘に対して、ある疑惑を抱いていたのです。それは、彼女の美しさが、本当に「この世のものではない」のではないかということです。つまり、娘は雪女なのではないかと、そう思ったのです。おかしな妄想でしょうか。いいえ、いいえ。そうではないのです。まず、あの娘は着のみ着のままやって来たと先程お話しましたね。そこからしておかしいのです。少なくとも山一つは離れているであろう彼女の故郷からここまで辿り着いたにしては、何も持っていなさ過ぎるのです。食べ物や水を持ち歩いていた様子はありませんでしたし、服なんてぼろぼろでした。真冬にあれでは一日と持たないでしょう。あの娘が何であるにしろ、少なくとも村から追い出されて旅をしてきたという話は真っ赤な嘘です。そして、そんな嘘をつく必要がある人間がどこにいるというのでしょう。
私の考えはあながち間違っていない筈ですが、娘を助けようとしていたあの人の手前、あの娘は雪女ですだなんて、なかなか言えたものではありませんでしたね。ああ、でも、あの時ちゃんと反対しておけばよかっただなんて、何度後悔したか分かりません。

こうして雪女、仮にそう呼ぶとしますが、それとの生活が始まりました。元々雪が降るような寒い時期でしたから、居候に外に出てやってもらうような仕事はありません。当然、雪女には家の仕事を手伝ってもらうこととなりました。雪女はよく働きましたが、これも私にとってはあまり良いこととは言えませんでした。雪女の作るご飯は、私の作るものよりずっと美味しかったのです。これでは妻としての面目は丸潰れではありませんか。私はしばしば雪女に、炊事は私に任せるようにやんわりと告げていましたが、雪女は、
「いえ、居候として当然のお仕事ですから」
と言って、聞き入れませんでした。きっとわざと私の仕事を奪ったのでしょう。あの人に取り入るために。
ある日、雪女は私とあの人を呼んでこう言いました。
「私はこれから、奥の部屋で機織りを致します。その間、必ずや部屋の中を覗かないようにだけ、お願い致します」
確かに、奥の部屋には古い機織り機がありました。私がかつて使っていたものです。今はもう織るような体力もなく、長い間放っておいていたものですが、糸は残っていましたので、それを雪女に貸しました。しかし、部屋を覗かないようにとはどういうことでしょう。私としてはそのことに不安や恐ろしさを感じていたのですが、あの人は、
「集中したいのだろう」
と言うだけでした。雪女への信頼の表れなのかもしれません。
数日の後、雪女が持ってきた織物を見て、私は確信しました。やはりこの娘は人間ではないと。雪女の織った布は、滑らかで軽く、夢のように美しかったのです。そう、ちょうど、雪女自身のように。おおかた、見られていない間に正体を現し、妖術の類で美しい布を作ったのでしょう。あの人は布が大層お気に召したようで、是非自分の着物の布も作って欲しいと雪女に頼むのを、私は必死に止めたのです。きっと雪女の目的はまさにそれで、雪女の作る着物を来たら最後、あの人は雪女に今度こそ取り憑かれていたところだったのでしょう。恐ろしいことです。出来上がった布は高く売れましたが、私はあまりよく売れなかったと嘘をつきました。これ以上、雪女に機織りをさせないためでした。

そして今に至ります。雪女がこの家に棲み着いて、早一年が経ちました。ここのところ、あの人は咳と熱で寝込んでしまっています。あの人はただの風邪だと言いますが、私はそうでないことを知っています。雪女が、少しずつあの人の生気を吸っているのです。雪女はこの一年で、あの人の信頼を勝ち取りました。私はあの人と娘をなるべく遠ざけようと努力しましたが、妖しの力には勝てなかったのです。先日、私に黙って雪女に作らせた着物をあの人が来ていた時などは、目の前が真っ暗になるように感じました。敗北。絶望。私はあの人をついに守りきれないのかと、己の至らなさを恥じました。

でもね。でも、まだ終わってはいなかったのですよ。雪女は油断したのです。私がもう、雪女にとって何の邪魔にもならないと、思い込んでしまったのです。
あの人から遠ざけるだなんて、今まで回りくどいことをやってきたものですよね。それでは結果は、あの人を失うという結果は変えられなかったのでしょう。最初からこうするべきでした。
春、夏、秋、そしてまた冬。この一年、本当に色々なことがありましたね。あの人はずっと雪女を大切にしていて、私は雪女にしてやられ続けだったわけですが、最後にはこうして勝てたのですから、何を恨むこともありませんとも。

昔話、というほど昔のことでもなかったかもしれませんが、楽しんでいただけましたか。本当はもっとお話していたかったのですけれど。いいえ、いいえ。私は何も恨んでおりませんし、呪うこともありません。ただ、私はやるべきことをするだけなのです。夫が妖怪に捕まりそうだというのに、助けない妻がおりましょうか。これまであの人と共に歩んだ幾年もの御恩を、今こそ返す時なのです。そんな機会を与えてくれたこの一年に、私は感謝すらしているのですよ。

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鶴の・・・ https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1154/ https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1154/#respond Sun, 25 Feb 2018 08:34:12 +0000 https://anqou.net/poc/?p=1154 なぜ学校に行かなきゃいけないんだ。西日にさされながらひとり通学路を歩き呟く。嫌で嫌で仕方ない。授業もつまらない。あのバカ共を相手に2次方程式の解の公式を唱えさせて何になるというのだ。何より行った所で奴らの餌になるだけだ。周りの大人も誰も助けてくれない。教師は見てみぬふり、学校側もおそらく認めないだろう。父母は毎日のようにどこかへ旅行。ここ数ヶ月は顔を合わせていない。家にいるのは雇われた家事手伝いくらいなもので、それも僕が学校に行っている間に仕事を済ませてしまうから、顔を見たのは挨拶に来た時くらいだ。

下を向きながら歩いていると変なものが見えた。鳥が倒れている。そこまで鳥に詳しくない僕でもあれがツルであることくらいはわかった。そんな御伽噺じゃあるまいし、と思いながらも、その息絶えそうな目を見て見過ごすわけには行かない。近くに獣医がいた事を思い出しそこに連れて行った。看護師さんたちに甚く褒められたが、お世辞でも何でもなく当然のことをしたまでだと思った。あのツルを見過ごしたらきっと一生後悔してしまうかもしれない、一生罪悪感に苛まれるやもしれないと、そう感じたからだ。

家につき、ふと気づいた。自分も死ねば奴らを罪悪感で一生悩ませられるだろうかと。もとより大して面白いこともない生活なのだから死んでも変わらなかろうと。家は2階建ての屋上つきだった。ほとんど家を空けてるにも関わらずこんな豪華なものを建てる両親の気持ちは全然分からなかったが、このとき始めて感謝したかもしれない。屋上へ上がろうと思った時にチャイムが聞こえた。まさかと思いながらドアを開けるといかにもという感じの女性が立っていた。

「いやいやいやいや」驚きと笑いと怖さとが混じった声が出てしまう。「まさか今日の?」「はい」やはりか。家に機織りはないがどうするんだろうかなどと考え込んでいると、鶴はこういった。

「私のような未熟者はまだ恩返しもまともに出来ませんがどうかお礼だけでも言わせていただきたいと思い訪ねました。必ずやあなたは立派なお人になります。苦しいことも悲しいことも沢山あるとは思いますが、私めを助けてくださったという事実は一生忘れません。どうか沢山の人があなたの事を誇らしく思われるような、そんなお人になってくださることをお祈りしております。では。」

明日も学校に行こう。

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鶴の恩返し https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1156/ https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1156/#respond Sun, 25 Feb 2018 08:20:52 +0000 https://anqou.net/poc/?p=1156  おじいさんが野道を歩いていると、若い蛇口が一匹罠にかかっているのを見つけました。
「助けて〜助けて〜」
 蛇口は、とても苦しそうな声で助けを呼んでいます。
 親切なおじいさんはすぐに駆け寄ると、蛇口を捕らえているトラバサミの解除に取りかかりました。野生の蛇口は国の天然記念物です。それを罠にかけるなんて……。おじいさんは人間の残酷なまでに深い欲望に対して悲しみを覚えました。
「可哀想な蛇口や、すぐに助けてあげるからね」
 程なくして蛇口は助け出されました。蛇口は一言礼を言った後、こう付け加えました。
「我々を『蛇口』と呼ぶのはやめていただけませんか?」
「はて、それはどうしてだい?」
「蛇の口という、気味の悪い名前が嫌いなのです。これからは代わりに『カラン』と呼んでいただけませんか」
 「カラン」、オランダ語で「鶴」を意味する言葉です。なんとも優雅で、美しい呼び方ではありませんか。おじいさんはにっこり笑うと、蛇口、もといカランに対してこう言いました。
「もちろんだとも。ささ、カランや、もうお行き。今度は罠なんかに捕まるんじゃないよ」
 カランは体をグニャリと曲げて嬉しさを表現したあと、何処かへ飛んで行ってしまいました。

 次の日から、おじいさんの家の流し台の蛇口、もといカランからオレンジジュースが流れ出すようになりました。おそるおそる飲んでみると、なんと絶品です。それに、飲んだ後にみるみる力がこみ上げてきます。この素晴らしいオレンジジュースを一杯飲むと、おじいさんはこれの商業化に踏み切りました。

 おじいさんのカランから出たオレンジジュースは、飛ぶように売れました。勿論、一本の人工カランから生産されているオレンジジュースに過ぎないため、大量生産をすることはできません。しかしおじいさんは、持ち前のプロデュース能力を存分に発揮し、限りあるオレンジジュースを一部の上流階級の人間のみが口にできる「幻のみかんぢゅーす」として売り込み、安定した値段とシェアを確立していったのです。

 これを読んでいる皆さんはもうおわかりのこととは思いますが、このオレンジジュースを出しているカラン、これはかつておじいさんが罠から救ってあげたカランなのです。おじいさんに恩返しをするために、こうしてこっそりと流し台のカランにすり替わってオレンジジュースを出してあげているのでした。おじいさんを幸せにできて、カランもとても誇らしく思っていました。しかし、この幸せな日々も永くは続きませんでした……。

 おじいさんがいつものようにカランからオレンジジュースを汲んでいると、黒い背広を着た集団が家を訪ねてきました。
「滋賀県警の南雲です。少しお宅を拝見させていただいてよろしいでしょうか?」
「えぇ、まぁ、はい。しかし……」
 おじいさんが用件を訊ねる前に、警官たちはどっと家の中に押し寄せ、流し台のカランに目をやりました。
「これだ! 見つけたぞ!」
 警官たちは慣れた手つきでカランを外しにかかります。
 そうです、あまりにも素晴らしい効能を持つあのオレンジジュース、これに違和感を覚えた他の食品会社が独自に調査してしまった結果、野生のカランから流れ出たものであるということを突き止められてしまったのです。人工のカランを生活の中で使うのはなんの問題もありません。しかし、それが野生のカランとなると話は別です。天然記念物、それもカランを無許可で使っているとなると、おじいさんの厳罰は免れません。
 カランが見つかるや否や、警官たちはすぐさまおじいさんを取り押さえます。
「はなしてください! 私は自分の意思でここでオレンジジュースを出し続けていたのです! おじいさんはなんの関係もありません!」
 いくら言っても警官たちは聞く耳を持ちません。なんともいえない悲しそうな目でおじいさんはカランを一瞥すると、しぶしぶと連行されていきました。

 カランは涙を流しました。自分の恩返しが叶わなかった苦しみを、所詮生きたカランと人間が共に過ごすことなんてできないのだという絶望を、心から洗い流さんとばかりに泣きました。しかしなぜでしょう、泣いても泣いても心は晴れないのです。とめどなく体から流れる涙こそが、彼をカランたらしめているからです。泣けば泣くほど、自分は力のないカランでしかないということをまざまざと思い知らされるのです。

 カランの金属でできら体が朽ちて、もう涙も流せなくなった頃、彼の周りには流した涙によって大きな湖ができていました。彼は事切れるその瞬間まで自分の無力さを嘆いていたのでしょう。しかしその後何千年もの間、その湖は人々と水源として多くの命を育むことになるのでした。彼の涙は、無駄ではなかったのでます。

 その湖こそが、今の琵琶湖なのです。

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【期限延長のお知らせ】御伽噺改変大会 https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1157/ https://anqou.net/poc/2018/02/25/post-1157/#respond Sun, 25 Feb 2018 07:59:59 +0000 https://anqou.net/poc/?p=1157 STARTです。複数の延長願いが出たため、投稿期限を18:00までに延長させていただきます。

この後のスケジュールに関しては、適宜ここでお知らせしてまいりますので、今暫くお待ち頂ければ幸いです。

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御伽噺改変大会のお知らせ https://anqou.net/poc/2018/02/19/post-1127/ https://anqou.net/poc/2018/02/19/post-1127/#comments Sun, 18 Feb 2018 16:17:00 +0000 https://anqou.net/poc/?p=1127 2月25日締め切りで、御伽噺改変短編の投稿大会を開催するよ!!

 

 

あ、上の短文はツイッターで表示される見出し用です。それだけ。

しかし正直なところ一文だけで大体言いたいことは終わっています。先の投稿で少し存在をにおわせていましたが、この度、カオスの坩堝内において、御伽噺改変大会を開催することとなりました。詳細なルール等は以下の通り!STARTが適当かつ勝手に考えたものです。

 

第一回カオスの坩堝御伽噺改変大会 テーマ「鶴の恩返し」

一、「作者」として参加可能であるのは、「カオスの坩堝」に一度以上記事を投稿したことがある人間に限るとする(人間以外の参加は原則として認めない)。また、題材となる御伽噺の内容に直接関係した人間は作者としての参加が認められない(例・桃太郎における桃太郎や老夫婦)。

一、作者は2018年2月25日(日)17:00を期限として、「鶴の恩返し」を題材とした短編小説を匿名で投稿する(匿名での投稿方法は運営(@start_citrus)に確認すること)。文字数や内容に制限は設けないが、後述の審査期間が投稿期限後4時間であることを考慮して投稿を行うこと。

一、作者以外の文字を入力できる知的生命体は、「読者」として作品を審査することが可能となる。読者は投稿期限当日の18:00から21:00の間に、指定のGoogle Formを通じて、投稿された作品が「誰によって書かれたものか」を特定する。その際入力するハンドルネームは、運営が結果発表時に成績と共に開示することがある。

一、21:30を目安として、運営によって結果発表が行われる。各作品の作者のカオスの坩堝におけるペンネームを発表した上で、審査の集計結果についても一部開示される。

その他質問、参加希望等はSTART(@start_citrus)まで。参加希望は上記の条件を満たし、期限内に投稿可能であれば問題無いものとする。

 

 

という感じです。公式ルールっぽいけど今私が考えただけなんだよね。しかし内容としては問題ない筈です。重要そうな情報は太字にしています。投稿はこの記事が投稿された瞬間から受付開始です。とはいえ、まだ参加用のアカウントが用意できていないんですよね。これから参加したいという方は、絶対に自分のアカウントでは投稿しないように!それするともう誰が作ったのか分かっちゃうからね、参加できなくなっちゃうんだよね。

砕けたまとめ方をすると、期限までに専用アカウントを使って鶴の恩返しを題材にした短編小説を投稿してねということ。文字数制限は設けていないけれど、明らかに長編としか思えないような文量は……やめておこうね!(読者の負担)

参加条件は坩堝に投稿経験があることとしています。投稿経験があるということは、読者にとって作者を特定する材料があるということです。逆に言うと、既存の作品が無いんじゃあ特定しようがないよ!というお話。「小説を投稿したことがある」と絞っても良かったのだけれど、まあそこは間口を広く、ね。

 

ではそういうことで、投稿お待ちしています。作者になりたい人は、私までご連絡を。投稿用のアカウントを教えます(あるいは「まだできてないんだごめんねちょっと待ってね」と言います)。

そして読者は誰でもできます!作者じゃない限り、人間でなくたって構いません。そこの腕が6本ある君も、全身が鱗で覆われている貴方も、Google Formの入力ができさえすれば参加可能!是非読んで、特定を楽しんでみてね。好きでしょ、そういうの。

 

平成30年2月19日 START

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