雑文 | カオスの坩堝 https://anqou.net/poc Chaos is not kaos. Sat, 31 Dec 2022 08:55:08 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.1.1 https://anqou.net/poc/wp-content/uploads/2018/02/9dc10fe231765649c0d3216056190a75-100x100.png 雑文 | カオスの坩堝 https://anqou.net/poc 32 32 至高のアドベントカレンダー作ってみた https://anqou.net/poc/2022/12/01/post-3507/ https://anqou.net/poc/2022/12/01/post-3507/#respond Thu, 01 Dec 2022 11:00:00 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3507 この記事はAdvent Calendar 2017 day1827の記事です。
前の記事はこちら

導入

こんにちは。feeleです。

皆さんはAdvent Calendarをご存知ですか?
12/01-25日にweb記事をリレー形式で続けていくアレだと思う方もたくさんいると思いますが、元ネタはクリスマスまでの期間に日数を数えるためのカレンダーだそうです。
例えばこんな感じですね。

アドベントカレンダーで検索したら出てきた画像。
詳細情報曰く2017年12月20日とかにアップロードした画像らしい。エモエモ


本サイトではAdvent Calendar 2017Advent Calendar 2018などが過去に行われてきました。記事トップにふざけて書いている通り本サイト最初のアドカレは1827日前とからしく、まあまあ懐かしいですね。あの頃はまだ酒も飲めなかったんだなぁ……

ちなみに本サイトは来年1月に動的な機能が停止するそうなので過去の恥ずかしい記事を消したりしようかと思ったのですが、これはこれでいい思い出ですし、どうせInternet Archiveにあるから消しても消さなくても変わらんなとなりました。他の著者の皆さんもぜひ過去の記事を消さずに年を越して、黒歴史の生殺与奪権を鮟鱇に握らせましょう。

閑話休題

ところで皆さんは❝至高❞をご存知ですか?

[名・形動]この上なく高く、すぐれていること。また、そのさま。最高。「―な(の)精神」「―至善」

goo辞書

自分は今までアドカレの記事を何本か書いたことはありますが、物体としてのアドベントカレンダーを作ったことは実は一度もありません。

なので学生の内に一度くらいアドベントカレンダーを作ってみたいと思っていましたが、「せっかく作るなら❝至高❞のアドベントカレンダーだよなぁ」と語りかける自分と「ダルいし5分くらいで作れるやつがいいなぁ」と正論を投げかける自分、そして「大前提としてクリスマスまでの日々が楽しめるギミックがないと作っても意味がない」と考える自分、この全て納得させるアイディアがありませんでした。

閑話休題の対義語

ところで皆さんは今季放送されている大人気Japanese Traditional moe♡ moe♡ Animationであるところの「ぼっち・ざ・ろっく!」をご存知ですか?

ぼっち・ざ・ろっく!好評放送中!


アニメの内容と概要紹介は省きますが、このアニメの中で上記の自分を全て納得させる画期的なアイテムを見つけました。まずは下の画像を御覧ください。


こちらは廣井きくり呼ばれるベーシストです。自分もベースを多少嗜んでいるのでよく分かるのですが、異様にベースが上手で憧れますね。それでは次の画像を御覧ください。

 
 


!?

 
 

 
 


この、並べやすそうな直方体は…………?

 
 

 
 


この、クリスマスに相応しいカラフルな物体は…………?

 
 

 
 


この、種類が多く毎日飲んでも飽きが来ない日本酒の群れは…………?

 
 

 
 


この、毎日扉を開けるのと同様の操作を行えるストロー穴は…………?

 
 

つくってワクワク

■材料

  • 鬼ころし・・・25本
  • 粘着性の何かしら・・・適量

種類を集めるために様々な店へ東奔西走しました。せっかく無人レジを使ったのに年齢確認のために店員が来て、大量に鬼ころし買う人間だと思われて恥ずかしかったです。まあ事実なんですが……

元は両面テープで作成するつもりでしたが、鬼ころし同士の接触が悪かったのでゴツいテープを使いました。緑色の鬼ころしは近隣に売ってなかった(そもそもあるのか?)ので、テープでクリスマスカラーを補強します。

 
 

■手順1:ストローを取り外す

突起部分は組み立てる邪魔になるのでストローを取り外します。

適切な道具を使ってもいいですし、適切でない道具を使っても、あるいは道具を使わなくても問題ありません。困難は𝓟𝓞𝓦𝓔𝓡で解決しましょう。

■手順2:いい塩梅に鬼ころしを並べる

自分の美的センスを信じて並べましょう。クリスマスまで25日なので、5×5に並べるとそこそこ収まりが良くなります。

■手順3:接着

気合で鬼ころしを接続しカレンダーとしての体を為させます。

ストローは絶対失くすので、適当な袋に入れて側面にでも付けておきましょう。

■手順4:完成したものを自慢[要検証]する記事を書く

本記事になります。特に記事を書く名目が思いつかなかったのでAdvent Calendar 2017 day1827の記事という名目になりました。

自立可能


完成!

サムネ用

終わり

ということでアドベントカレンダー(物理)を作ってみました。作るの自体は簡単なので、購入する際の店員の視線に耐えられさえすればおすすめします。

問題はこのアドベントカレンダーを使うということは毎日鬼ころしを1本飲む必要があるということなので、まあそこは人を選びますね。

とりあえず作る段階は終わったので、これから毎日諸々の鬼ころしを飲んでいきます。多分この記事をちょくちょく追記していくので、良ければまた見に来てください。それでは。

 
 

 
 

 
 

2022.12.31追記

おまたせしました、追記です。

そういえば更新する度に坩堝のツイッターが一々動く仕様だったのでは……?と思い出して更新せずにいました。実際どうかは今回の追記でわかりますね。

day1

 
 

はい、こんな感じでカレンダーを開けていきました。

ただこれ問題があって、銀紙が全然めくれないんですよね。なぜか指を入れるだけの隙間がないため。なんでなんでしょうね。
対処法は簡単で、カッターとかを使って開ければ無事飲めます。

ちなみにこれ飲むときは全体を抱えてストローに口を付けるんですが、赤子をあやす姿勢で飲酒するハメになるため、脳がバグって楽しいです。来年は皆さんも如何ですか?

 
 

記念すべき1合目は日本盛の鬼ころしです。

この鬼ころしは最寄りのスーパーで1合100円未満で売っているため、1,2年前から愛飲しています。

なんと言うか、後味に若干の違和感があることにさえ目を瞑れば十分飲める味な気がしているんですよね。アルコール感というよりもエタノール感と言うべき、何か工業的な後味、あれってなんなんですかね。

飲み方としては、味の濃いものとの食中酒にして誤魔化す手法がおすすめです。

day2

1日1本だったのでは…………?

こちらは、清洲城信長の鬼ころしと、播州桃太郎の鬼ころしなるものです。
自分は両方とも存在だけ知っていてどこで売ってるのかまでは知りませんでしたが、生鮮館なかむらに売っていたので5本ずつ購入しました。京都6年住んでて、生鮮館なかむらでの最初の買い物がこれらしい。

清洲城信長の方は、確かに日本盛と異なり米の風味があるなと思いました。
ただ、雑味が多い気がして、あまり自分には合いませんでした。合いませんでしたとか平易に書いてますが5本買っているためあと4合飲む必要があります。地獄?

播州桃太郎の方は、よくわかりませんでした。
とにかく自分の体質と何か合わないらしく、結論としては一番不味かったですね。これ飲むとなぜかすぐに悪酔いしてしまいます。あと他の鬼ころしと比べて高さが低いため、アドカレが不格好になってしまいます。来年作るとしたら確実にレギュ落ちですね。
ちなみにあと4合あります。地獄?

day10

1日1本だったのでは…………?

はい、諦めました。本記事の上の方で

「大前提としてクリスマスまでの日々が楽しめるギミックがないと作っても意味がない」

とか書いてたんですが、本アドカレに日々が楽しめるギミックは一切ありません。助けてくれ。

 
 

12月は忘年シーズンということもあり、家の外でお酒を飲む機会がちょくちょくあったため、その度にアドカレ負債が貯まるんですよね。12月に飲酒アドカレは向かない。

あとこれ一回このアドカレ作るとわかるんですが、取り回しは悪いわ傾けると底に溜まった飲みきれない酒が零れるわ重いわで、全部の方面からこのアドカレの存在理由を否定できます。気になった方は是非一度やってみてください、応援はします。

day25

アドカレ、やはり間に合いませんでした。

敗因は播州桃太郎の鬼ころしと、単純に別に毎日飲酒習慣がなかったことですね。再走はしません。

 
 

さて、新顔が2パックありますね。青色のものが日本盛鬼ころししぼりたてで、黄色のものがゴールド鬼ころし・極上ノ辛口です。

日本盛は赤いものもありましたが、青いこちらは「しぼりたて」を強調しています。

赤との違いがあるのはわかるんですが、正直どう違うのかまではわかりませんでした。
公式では赤は「飲み飽きしないすっきりした味わいの淡麗なやや辛口」と書かれていて、青は「ぼりたての新鮮な風味をそのまま封じ込めた『フレッシュな味わいと香り』『爽やかな喉ごし』が特徴の淡麗辛口」と書かれているため、爽やかさが違うんですかね。

冷酒で飲んでも風味が強く残っているのが青の特徴なのかもしれません。が、自分はこのアドカレを冷蔵庫に入れたくないため、全て室温で飲んでいます。

こちらの人目を引く黄色のパッケージがゴールド鬼ころし・極上ノ辛口です。

こちらなんですが、なんと記憶がありません。少なくとも悪い記憶は無い、違和感は無かったということなので、鬼ころしとしては良質なのかもしれません。実際、商品案内にも「ワンランク上の晩酌酒」「テイスト感を上質化した新しい切り口とキレとコクある飲み応えのある」とか書いていますね。

 
 

とまあ色々飲みましたが、総評としてやはり日本盛の鬼ころしが一番美味しいなと思いました。

なので鬼ころしを買うなら日本盛(赤)を買う、そしてアドカレに鬼ころしは使わない方がいい。これが今回のアドカレの結論です。後者についてはやる前から気づくべきなんだよな。

 
 

それでは追記は以上です。このブログは(おそらく)明日にはもう動的操作が不可になるため、これが今生のお別れです。ではでは。

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

day31

タスケテ…………

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新規記事投稿停止のお知らせ(2023年1月〜) https://anqou.net/poc/2022/01/02/post-3494/ https://anqou.net/poc/2022/01/02/post-3494/#respond Sun, 02 Jan 2022 09:53:56 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3494 新年あけましておめでとうございます。艮鮟鱇です。皆様お元気でしょうか。私はかろうじて元気です。

さて突然ですが、お知らせです。カオスの坩堝は2023年1月(この記事投稿の約1年後)をもって新規の記事作成やその他の動的な機能を全て停止します。動的な機能というのは、新規記事の作成・既存記事の編集・既存記事の削除・記事への新規コメントなどで、これらが全て2023年1月をもって無効化されます。一方で既に投稿された記事を閲覧することは以前と変わらず行うことができます。URLも特に変わりません。技術が分かる人向けに言うと、WordPressで作られているページがcurlでスクレイピングした静的Webページに置き換わります。

というわけで、カオスの坩堝の著者の皆様には、2022年12月(この記事投稿の約1年後)までに次のようなことをしていただけると幸いです。

  • もし、手元にカオスの坩堝で公開したい記事がある場合には、2022年12月までにその記事を投稿してください。
  • もし、カオスの坩堝で公開した記事を修正・取り下げ・削除したい場合は、2022年12月までにそれを行ってください。

2017年からの長らくのご愛顧、ありがとうございました。

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https://anqou.net/poc/2022/01/02/post-3494/feed/ 0
夢、六月初旬の https://anqou.net/poc/2021/06/15/post-3461/ https://anqou.net/poc/2021/06/15/post-3461/#respond Mon, 14 Jun 2021 16:14:30 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3461  表題通り、十日ほど前に浅い眠りの中で見た夢の内容を、記憶を頼りに随所補完しながら書き起こしてみようと思う。早朝の短い二度寝で見た夢なので、寛大に表現してティザームービーくらいの尺と密度しかなく、当然導入もオチも無い。たまにオチを含んだ映画仕立て、小説仕立ての夢を見ることもあるが、大概は起きて思い返すだに支離滅裂な幕切れで、それに比べれば展開のない映像の断片の方がまだしも書き起こすに相応しいだろう。

 目が覚めても、彼女のことがしばらく僕の心に残留していた。それは、彼女の姿や声や匂いではない。彼女の存在そのものだ。だから、言葉にも信号にも還元することができない。したがって、急速に霧散し、消えていく。しかし、姿や声や匂いに印象を留めることの滑稽さに比べれば、それは素敵な消散だ。

森博嗣『スカイ・クロラ』

 実際、記憶からさっぱりとかき消えてくれるならばそれに越したことはない。不定形なエーテルになって何かに、たとえば新しい小説にでも活かされるのだとすればそれは僥倖だ。しかしこの夢の眺めは網膜にねばねばとこびり付いて離れないし、そう上等な代物にも思えない。なにせ登場するのは一人の女性ではなく、一匹の死んだイグアナだった。

 そのイグアナは、腹を見せた姿勢で数人の輪の中に横たわっている。ずんぐりとした体躯に長く鈍重な尾をぶら下げ、三角形に尖った顎はぐいと反らされていたので、目鼻がどうなっているのかまでは見て取れなかった。

 もっと近くで見ようと一歩踏み込んだ足首に、尾の先が当たった。弱々しい、じゃれつくような一撃で痛みも無かったが、それで危ないと思われたのか、隣に立つ帽子を被った男が身振りで私を下がらせようとした。

 これは生きているのか、と問うたかもしれない。そこは見るからに日本とは離れた異国の地だったので、恐らくは現地の言葉でそう言った。帽子の男は黙って首を横に振った。するとさっき振られた尾は、活け造りが反射で跳ねるのと似た現象だったのかもしれない。

 再びぴくりとも動かなくなった死体を覗き見る。ひっくり返った足裏までは見ていなかったが、爪は生えていただろうか。体長は、尾まで含めて目測一メートル半。顎の形といい体型といい、後から考えてみればイグアナというより中型のワニだ。しかし夢の中の自分というのは無根拠な確信に満ちていることが多く、その時も目の前の生物はイグアナだとしか思えなかった。

 帽子の男とは別の、しかし同じような砂色の服に身を包んだ男が、懐からナイフを取り出してきた。握ると柄がすっかり掌に包み込まれてしまうような短刀で、刃渡りも短いが、よく手入れされているように見える。その証拠を示すかのように、ナイフの男はイグアナの腹めがけて刃先を突き立て、素早く滑らせた。

 イグアナの黒い皮膚はいかにも分厚く硬そうで、表面は不規則な凹凸に覆われ、食べるにはまだ早いアボカドの表皮のような見た目だった。その皮膚が、ナイフの刃によって音もなくなめらかに両断されていく。人間でいうへその辺りから、真っ直ぐ上って喉元まで。内臓を掻き出すつもりかもしれないが、少なくともその時はまだ、外側の皮膚しか切れていなかった。

 着物を脱ぐようにして現れ出たイグアナの肉は、明るい緑色に黒い縞模様が走った奇妙な柄をしていた。表面はてらてらと濡れているが、血の一滴も噴き出してはこない。黒縞は体の正中線に沿って太く縦に伸びたのち、Y字に分かれて足の末端へと続いていた。そうした太い流れからも新たな縞が無数に枝分かれをして、あたかも原始的な血管系のようでもある。皮膚が青いアボカドなら、こちらは歪なスイカだ。もし強いて動物に喩えるならば、鮮やかすぎるウシガエルの体表……。

 そして、私の視野はふいにイグアナの胸元から逸らされた。声を掛けられたのだろう。帽子の男か、あるいはまた別の男なのか。首から上は覚えていないが、手元だけは嫌というほどはっきり覚えている。目玉だ。何かの、生っぽい眼球を二本の指でつまんでいる。何かと言われればそれはイグアナの眼球でしかあり得ない。元の体格にしてはあまりに小さなそれを、男はなぜかこちらに差し出してきていた。視神経は繋がっていないようで、理想的な球形をしている。黒目もまた豆粒のように小さい。

 男の空いた方の手が伸びてきて、あっという間に額を押さえられてしまった。男は無言のまま、片手の眼をさらにこちらへ近付けてくる。小さな潤んだ眼球が視界の右側を覆いつくすと共に、目頭が強く圧迫された。痛みは無い、夢だから。それでああ、イグアナの眼を無理に埋め込まれたのだなと思ったが、右の視界は潰れたまま戻ってこなかった。

 耳元でしきりに声がする。これは日本語で、「右眼に集中して、それから左上に集中」、そんなことを言われたような気がする。帽子の男の声かもしれない。

 言われた通り意識を順繰りに移していくと、確かに元右眼のあった左上の方、ややこしいがつまり鼻梁と右眉に接するぎりぎりの位置から、新しく小ぶりな視界が誕生していた。自由に視線を動かすこともできる。そんな乱暴な、第一こちらは元から盲目だったわけでもなし、とんだありがた迷惑だと目を回して、

 そこで目が覚める。時計は見ていないが、それは朝の十時頃だっただろう。すぐに三度目の眠りに就いたが、再び夢を見ることはなかった。

 

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https://anqou.net/poc/2021/06/15/post-3461/feed/ 0
学部4年間で読んでよかった短篇小説best3 https://anqou.net/poc/2021/02/28/post-3425/ https://anqou.net/poc/2021/02/28/post-3425/#respond Sat, 27 Feb 2021 20:12:07 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3425  STARTです。二日後に論文の締切があり、作業をしなければならないのですが、昨日それとは違う大きな締切を越えたところなので気持ちが今一つ切り替わりません。先日のwottoの投稿に端を発する「best3」については、読んだ時から流れに乗るかどうかかなり迷っていたのですが、暇つぶしと思って少し書いてみることとしました。選択肢が増えると選ぶのが大変なのであえて短篇に絞っています。

三位:米澤穂信「シャルロットだけはぼくのもの」(『夏期限定トロピカルパフェ事件』、創元推理文庫)

 米澤穂信から一つ、となるとこれかと思う。「柘榴」と少し迷ったけど。真夏のある昼下がり、甘いものに目が無い女の子である小山内さんの家を訪れた主人公が、彼女のためのケーキをこっそり食べてしまうといういわゆる倒叙形式で展開される日常の謎だ。さっきまでそこに存在していたケーキの痕跡をいかにして消失させられるか、という馬鹿馬鹿しくも綿密な計画と、それが突き崩される瞬間。緊張感ある「日常の中の非日常」が何より読んでいて震えるほどに楽しい。

 それと、短篇ランキングとしてはいきなり趣旨から外れた言及になるが、本書は連作”推理”短篇という形式が組み立てる物語の面白さを初めて教えてくれた小説だったと思う。

二位:津原泰水「天使解体」(『綺譚集』、創元推理文庫)

 本書を開いて初っ端がこれだったということもあり、読んだ瞬間なんだこれは、と驚愕させられた掌編。わずか十二ページで語られるその内容は常軌を逸しているというより他ないが、細かな叙述の積み上げによって、語り手の見る異様な世界を読み手の自分までもがレンズ越しに一時覗き込んだような気になる。絶対に見えないはずの景色、色彩を、瞬く間に眼前へ突き付けられてしまった。初読時にはおかしな笑いが漏れた。人は小説を通して異世界へ足を踏み入れられるとよく聞くが、この小説は言わば一文一文が世界を端から異形のものに塗り替えていっているのだと、読みながらに実感する。

 同短篇集では「ドービニィの庭で」も好きだ。「天使解体」と併せて、小説を通して描かれる色彩について以後考える切っ掛けになった。

一位:伴名練「美亜羽へ贈る拳銃」(『なめらかな世界と、その敵』、早川書房)

 化け物。先程幾度目かの再読を終えて、多分一年ぶりくらいに同じ呟きに至った。「オールタイムベスト一位に挙げて、これが好きだ好きだと言っているうちにいつしか神格化してしまっているのではないか? 自分の過去の感想に胡坐を掻いてはいまいか?」という不安からの再読だったが、同じ理由で去年も同作を再読していたことを今更思い出している。

 舞台は数十年後の未来、脳へインプラントを撃ち込むことによって感情の励起をコントロールできるようになった社会において、遂に科学的な実現を遂げた「永遠の愛情」と、永遠もなにもない恋の話。本文冒頭の言葉を借りるなら、「彼らが、いかに互いを愛し合わなかったかの物語」だ。書き換わり得る人間の感情の下に展開も思考も目まぐるしく変化していくため、読んでいるこちらまでだんだん脳が破裂しそうになってくるが、吹き飛ばされそうになりながら付いていったその果てには、美しく凪いだ海のような結末が待っている。伴名練の小説を読み終えた時に去来する、「果てにまで辿り着いた」という静かな感動がたまらなく好きだ。上では「天使解体」について「見えないはずの景色を突き付けられた」と述べたが、私にとってこの小説は、私を知らない場所へ連れて行ってくれる、一緒に旅をしてくれるパートナーのように思える。

 もう一つこの小説の好きな点がある。話がめちゃくちゃ面白いということだ。ともすれば思考実験的なテーマのはずが、一度読み始めるとこれが止まらない(例:現在時刻は午前四時五十分。今日は論文を書かなきゃいけないはずなのに……)。これも作中の言葉を借りるが、本作には至る所に「ただの劇的効果」なる炸薬が込められていて、そこを通りがかった人間へ雨あられと面白さの弾丸を浴びせかけてくるのだ。もちろんそれが刺さるかどうかは個人の好みによるが、読んでいると「こちらにこれが刺さると分かって深々と刺しに来ているな」としみじみ思う。伴名練に対して時折「ずるい、許すまじ」との感想が湧いてくるのはこういう次第だ。いつか私も、別に読み手の心情を意のままに操ることなど望みもしないが、この手で綴る文章は、物語は、一作くらい自分でも満足行くほどに操ることができればなどという、これは単なる野望である。

 以上best3でした。眠いので、寝ます。今後は少なくともここに書いた内容が恥ずかしくってたまらなくなるくらいには本を読んで、色んなものを知っていきたいと思います。いやまあ、既に大分恥ずかしいんですが。こんな記事誰も見ないでください。でも伴名練の小説は読んでください。

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https://anqou.net/poc/2021/02/28/post-3425/feed/ 0
学部4年間で読んで良かった歌詞ランキングbest3 https://anqou.net/poc/2021/02/11/post-3374/ https://anqou.net/poc/2021/02/11/post-3374/#respond Thu, 11 Feb 2021 09:57:15 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3374 feeleです。卒論の試問会も終わり暇なのでやれと言われた前から書きたかった記事を書きます。これを見た本年度卒業予定者の方も是非書いてみてくださいな。

ちなみに自分は学部4年間で本を読んだ記憶がほとんどないので読んで良かった本ランキングが付けられないんですが、 ぱっと思いつくのは響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそですね。高校の部活での熱血さと歪さ、そして女の重さが2巻で詰め込まれていて非常に面白かったです。

ということで3位から順に発表していきます。

 

3位 : カレンダーガール

何てコトない毎日が かけがえないの

オトナはそう言うけれど いまいちピンとこないよ

アイカツ無印の初期ED曲のカレンダーガールですが、この曲のいいところは物語が進むにつれて歌詞とアニメのシーンがリンクしてくるところです。特に50話のタイトルがそのまま歌詞から引用されているため、そこまで見ると一気に違った聞こえ方になると思います。曲名のカレンダーを過去の想い出や未来の予定、そして現在の忙しさを表現することに使っているところがとても洒落ていて、その性質からアイカツシリーズが続く限り永遠に伸び続ける曲だと思っています。

 

2位 : STORIA

明日はGLORIA 明けない夜は

星を追いかけよう きっとね

そこでしか見えない景色がPre cious

Re:ステージ!のトロワアンジュというユニットの曲です。この絵の清楚さからわかる通りトロワアンジュはお嬢様3人アイドルユニットで、この曲では特にセンターの白鳥天葉様に寄り添った歌詞となっています。ただし、彼女の背景について語られたストーリーがあまりないため、キャラクターとしての曲の解釈はまだまだ不十分です。

しかし、キャラクターについて詳しくなくてもこの曲の歌詞には素晴らしいものがあります。この曲は落ち込んでいる人や失敗した人に対し、素敵な言い回しと力強い歌声で励ましてきます。たとえばチグハグな日も シナリオには必要でしょうだったり壁が見えるのはきっとね その先を見ているからでしょう高く飛ぶためにはしゃがむ日もあるでしょ?などです。こういった肯定的な言葉を投げかけてくれるため、落ち込んだときや疲れた後などに聞いて雑に自己肯定感を高めることに重宝してきました。

 

それはそうと引用箇所の最初1行は天葉先輩が歌うのに対し後ろ2行は奏先輩が歌うのヤバくないか?なあ

 

1位 : 宣誓センセーション

一寸先は笑顔だよ だってボクがそばで笑うから

 

 

 

   

一寸先

読み方:いっすんさき・ちょっとさき

ほんのすぐ先。距離的な意味でも時間的な意味でも用いられる。「一寸」は「ちょっと」とも読むが、「一寸先は闇」の慣用句では一般的に「いっすんさきはやみ」と読まれる。

実用日本語表現辞典

 

 

……

 

 

 

???????????????

 

いっ‐すん【一寸】

1 尺貫法の長さの単位。→寸

2 わずかな時間・距離・量、また小さい物事のたとえ。「一寸のひまも惜しむ」「一寸のすきもない構え」

デジタル大辞泉

 

……………………?

 

すん【寸】

1 尺貫法の長さの単位。1寸は1尺の10分の1で、約3.03センチ。

2 長さ。寸法。「寸足らず」

3 ごく短いこと。また、ごく少ないこと。

デジタル大辞泉

 

……………………

 

 

…………………………………………

 

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

??

 

 

!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?

 

……

  

…………

 

 

 

……

 

 

……………………

 

……………………………………………………………………………………

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

 

あ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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https://anqou.net/poc/2021/02/11/post-3374/feed/ 0
学部4年間で読んで良かった本ランキングbest3 https://anqou.net/poc/2021/02/10/post-3370/ https://anqou.net/poc/2021/02/10/post-3370/#respond Tue, 09 Feb 2021 18:19:23 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3370 wottoです.明日(今日)は卒論の試問会があるので,それまでに研究室のセミナーでボコボコにされたスライドを修正しなければならないのですが,やる気が出ないので前から書きたかった記事を書きます.これを見た本年度卒業予定者の方も是非書いてみてくださいな.

3位:Effective Python 第2版

Python言語を書くにおいての様々なテクニックが載っています.なんというか,私のような「プログラミングは数値実験でしかほとんど使わないよう,きれいなコードを書くモチベーションがないよう」という人にとってぴったりのレベル感だと思います.でも半分くらいしか読んでない.はよ読め.

第2位:情報幾何学の基礎

情報幾何学の基礎と銘打っていますがちゃんと多様体の基礎(接ベクトル空間,ベクトル場,アファイン接続など)をやってくれます.情報幾何自体はまあ面白いなあ程度だったのですが,この本で勉強した多様体の諸概念を知っといてよかった!という場面がこの1年でしょっちゅうありました.逆に言うと,情報系の人はこの本に出てくる程度の多様体の知識があれば良いんじゃないでしょうか.知らんけど.

 第1位:量子情報科学入門

この本に出合って人生が狂いました(本当)
情報系の人で量子情報に興味ある人はとりあえずこれ読めばいいんじゃないでしょうか.非常に丁寧に説明の上に量子情報理論の面白さが濃縮されています.でも最後のほう読んでません.はよ読め.

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造語症 https://anqou.net/poc/2020/10/23/post-3347/ https://anqou.net/poc/2020/10/23/post-3347/#comments Fri, 23 Oct 2020 07:02:26 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3347

オリジナル単語を自然に創る症状。主に精神病疾患者が「一般的ではない、辞書に載っていない造語」を創作し、さも当たり前のように使う症状。統合失調症の典型的な症状であり、アスペルガー症候群にも多くみられる。自分と他人との境界線が薄い(あるいは無い)という事が原因として「自分が当たり前に使う言葉」は「他人も認識出来る」という思考が原因とされている。

http://takei.anonyment.com/wp/精神疾患用語集/サ行/造語症/

かつて,私は「連歌的ジレンマ」という語を作り出したことがありました.あれは今から思うと自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群)の一症状である造語症だったのかもしれません.

「連歌的ジレンマ」を生み出したとき,周囲の反応が過剰ではないかと私は思っていました.私にとってこのような語を使うことは特に不自然なことではなかったからです.今はもう「連歌的ジレンマ」しか思い出すことはできませんが,このような造語を私はいくつも作り出していたのでしょう.

「連歌的ジレンマ」の経緯から,私は造語を作り出し使うことを避けるようになりました.それは一つの成長だと思いますし,そのときに自分の造語癖に気付けてよかったと思っています.

しかし「連歌的ジレンマ」は造語症という言葉では片づけられない,私の大事な思い出でもあります.造語症という言葉は今知りましたが,そんなくだらない概念に思い出を壊されてたまるか,とも思います.

まあ何が言いたいかというと,クソ食らえ,ということです.造語症は社会的にはよろしくないのでしょうが,そんなことはどうでもいい.「連歌的ジレンマ」に関して色々考えるのは楽しかったし,それが「造語症」なんていう造語じみた言葉で説明されてしまうなんて悔しいです.

私は自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder: ASD)と呼ばれる障害を持った人間です.ASDについて調べれば調べるほど,自分の行動がASDの症状やその二次障害で説明がついてしまう.じゃあ私はいったい何なのか,私はASDが人間の皮を被って歩いている(誤解なきよう,ASDの人を差別する意図はありません)存在なのか,と憤りを覚えてしまう.

なんというか,空しい,とそういうわけでこの文章を書きました.読んでもらった人には申し訳ないです.

以上

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https://anqou.net/poc/2020/10/23/post-3347/feed/ 4
愛と悲しみのISUCON10決勝 https://anqou.net/poc/2020/10/03/post-3336/ https://anqou.net/poc/2020/10/03/post-3336/#respond Sat, 03 Oct 2020 14:51:56 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3336 TL:DR;

  • isucon10決勝でfailしました
  • 僕の注意不足です
  • つらい

なにがあったのさ

デーモンファイルにRestartSec=10sとかを入れないまま、問題が発覚しない形で再起動試験をしてしまったのでサービスが死んでた。具体的には、golangのサーバーがredisがロードし終わる前にconnection貼りに行ってて死んだ。

なにしてたの

  • 10:00 sshとかの環境整えてansibleでbootstrap
    • git configしたりいつものツールを突っ込む
  • 11:00 プロファイル取って様子を見る・デプロイ環境の若干の用意
    • 方針を決めてチームメンバーに改修をよろしくした
  • 12:00 query改善
    • generated columnとか使ってクエリをいい感じにしてた
    • 生の点と減点を引いたスコアをSTORED
    • indexも多少貼った
    • team_idとかにうまく貼られてなかったのを改善
    • あとは見つけ次第クエリの改善(? = TRUEとか。)
  • 14:00 redis導入
    • jobQueueを実装したかった
    • anqouに託した後断念している
  • 15:00 いろいろなパラメーターのチューニング
    • mysqlの設定値とか
    • interpolateParamsとか
    • envoyのLimitNOFILEとか(envoyなんもわからんかったけどファインプレーだった様子)
    • /etc/security/limit.confとか
  • 16:00 sessionを外(redis)に出す、envoyをいい感じに複数台構成
    • ぱっぱと出来たのはよかったけど…
    • ここのせいで再起動試験落ちの結果になってしまった
    • 本当に鬱
  • 17:00 indexを追う
    • チームメンバーがキャッシュを導入してくれてたおかげでmysqlの負荷がだいぶ減っていた
    • それでも変なクエリを書き換えたりindexきかせていた
    • 変なOR文にmergedIndexした
  • 17:30 再起動試験
    • 1台ずつ順番にやってしまった
    • 依存関係のあるサーバーは同時に起動すべきだった
    • つらい
    • つらい
    • つらい

おえて

チームメンバーには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。多分再起動試験通ってたら3位圏内だったので本当につらい。しばらくチームメンバーにはまともに顔向けできないです。ごめんなさい。なお、**daemonの定義ファイルは最初にちゃんと覗くようにしましょう。**

そして私が事前にメモ書きしていたことの中に、

再起動試験をする

– `sudo reboot`
— 最悪起動しないときのために、1台ずつ再起動する
可能なら3台同時再起動なども行うべき?

メモ書きより

とありました。3台同時再起動すべきでしたね。とんでもない鬱。すいませんでした。

辛い気持ちのまま書きなぐってるので書きなぐりです。具体的なことがなくてごめんなさい…

暗い話はさておき

それでも楽しい思いをさせてもらいました。運営のみなさまありがとうございました。

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https://anqou.net/poc/2020/10/03/post-3336/feed/ 0
ISUCON10生は2度目です https://anqou.net/poc/2020/09/13/post-3323/ https://anqou.net/poc/2020/09/13/post-3323/#respond Sat, 12 Sep 2020 19:20:44 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3323 TL;DR:

お前だれ

俺は梅の仁。特にとりえもない平凡な男子大学生だ。ある日大学への道を歩いていたら、トラックにはねられて異世界転生しちまった。転生した世界は魔法、剣、そして椅子が存在している世界で、美男美女の椅子に言い寄られる羽目になっちまったぜ。彼/彼女たちに、ちゃんとドアに入る家を案内するために、俺はisuumoを開発することになったんだ。こうなったら、現代エンジニア知識で無双してやる!

ちゃんと書け

こんにちは、皆さんにももう知っていただけていることと思います、梅の仁です。去年、ISUCON9でなんやかんやあって本戦に出ていました。しかし、スコアは振るわず15位。本当に悔しい気持ちを抱えながら今年の7月を迎えました。

「上限」が目に飛び込んできて、もうね、秒だよね、秒。絶対に参加したい思いを抱えていたので、1人でもいいからと申し込みをし、去年のメンバーであった@jumon_jp@ushitora_anqouを誘いました。すぐに快い返事を頂け、院試や研究といった勉強をしつつ、ISUCONへの気持ちを高めていました。2人のステータスはこちら。

  • @jumon_jp
    • ナウでヤングな音声処理の達人
    • すごい猫
    • アプリ(Golang)をお願いしてた
  • @ushitora_anqou
    • コンパイラと論理学の名人
    • GPAポケモンの開発者(それが紹介でいいのか?)
    • すごい深海魚
    • アプリ(Golang)をお願いしてた
    • チームビルドをした
    • インフラを眺める人
    • discordのサーバーでふざける人

前日まで

ISUCONの練習と称して、ISUCON8予選とISUCON9本戦のインスタンスを建て、チームメンバーと色んなツールを動かしたりする練習をしました。

ソースを読みながら頑張って建てたISUCON8の予選ポータルサイト。大変だった

前日までこれに参加していたので、予選前日は疲労困憊で早めに就寝。見事朝7時に起きたのでISUCON優勝です。そして1時間後にこのようなアナウンスが来ました。

もう2時間寝たくなりました。さすがに起きておこうと思い、コーヒーを体に流し込みました。

競技開始

12:30 競技開始

さて、Ansibleを使って、用意していた初期化や「いつものツール」を入れるやつをやりましょう!

…できんのだが?てかwslからはsshできるんだけど、え、なんでwinからだとssh出来ないの?は?

どうやら原因はここだったみたいなのですが、焦りに焦ってAnsibleの内容を手で実行する羽目になりました。それに、win上からVSCodeでsshもできなくなったため、自動的にssh上でrawなvimを使うことになりました。本当につらかったのですが、まあどうにかなるにはなるので、まずは各サーバーにswapを作りましょう。

sudo dd if=/dev/zero of=/swapfile bs=1M count=4096

所で、df -hの結果をご覧ください。

/dev/vda1       9.6G  8.7G  917M  91% /

なんと全体が10GBしかないんですね。4GBもスワップを作ることは不可能でした。disk fullを起こしてしまい、「やばいサーバー死んだらやばい」とすぐに rm -f /swapfile。めちゃくちゃ焦りました。良い子は空き容量を確認してからswapを作りましょう。その後いつものツールなどを投入しながら、マニュアル読みを2人にお願いしていました。アプリの仕様を知らないため、「なぞって検索がやばい」というメンバー2人の会話を、「『謎って検索』するってなんなんだ…?曖昧検索かfeeling lucky…?」と思いながら作業していました。

13:00- nginxないし開発環境整備

nginx.confのひな型を導入し、デプロイのための環境を用意していました。後ろで最初のベンチマークが走っているのを聞きながら、「MySQLのCPU負荷がすごそう」みたいな話を聞いていましたが、「CPUだったらappな気もするなあ」などと発言していました。この後すぐ、その見立ては外れます。ここでコーヒーブレイク。

13:30- mysql設定投入、stock

mysql.cnfのひな型を投入し、slowqueryを眺めることに。どう考えてもやばそうなクエリのオンパレードでめまいがします。これはいかんとMySQLWorkbenchをつなげ、ER図を取ることにしました。案の定初手はつながらなかったため、 bind-addressをコメントアウトし、権限が足りないと怒られたため、権限付与を行いました。そして現れるこれ。

クソでかテーブルが2つ、インデックスがない。ああ、神よ。

もうめまいですよね、めまい。コーヒーを飲みます。「どう考えてもMySQLのCPUやば~~~~!!!!!」となり、急いでslowQueryを考えることにしました。
クエリを眺めてるにあたって、あまりにも stock > 1のWHERE条件が多く、indexが効かせにくい、indexよくわからん問題に出会いました。@jumon_jpと一緒にstockをDBから外し、インデックスをそれに合わせた構成にしました。

14:30- ずっとMysqlと向き合う

マジで何にもわからん。テーブルが参照系が多いようなので、インデックス貼って貼って、貼りまくって、クエリが使われてる文脈を聞いて、貼って、貼って、消して…それを繰り返していました。
クエリを眺めている途中で、椅子がドアに入るように回転させ、6個もOR条件を発行するわけのわからんクエリを発見。@jumon_jpに競プロっぽい解決をいい感じにお願いしていました。また、なぞって検索を良しなによくするのを@ushitora_anqouにずっとお願いしていました。

16時も近づいてくると、どうしてインデックスを貼っても貼ってもうまく動かないのか、見当がつくようになってきました。大体、ユーザーの入力条件によってWHERE句の中身が変わり、DESCオーダーとASCオーターの組み合わせを行うのじゃ、WHERE句の条件が選択的だったり選択的じゃなかったりします。なぞって検索で、クソ小さい丸を書いたならindexが効くかもしれませんが、クソ広い丸を書いたならindexが効く理由がありません。optimizerが、インデックスを使うより、全件検索を行うが良い、と判断するようなユーザーの入力もあるでしょう。どうしようもありません。@ushitora_anqouと「検索はクソ!!!!!」と叫びながら、インデックスじゃどうにもならんケースも多そうだと感じていました。そう思いつつも、よく来るようなクエリの組み合わせで、かつ、「条件が絞り込めそうなクエリ」にindexを貼っておくことにしました。それでも全く減らないCPU負荷に焦りを抱えていました。

17:30- 複数台構成・mysql8導入

optimizerの改善と、desc indexの利用に期待し、mysql8にあげる決断をします。ですが、あらかじめ複数台構成を始めよう、と決めていた時間が迫ってきていました。私がインフラ担当なので、本来なら複数台構成は私がやるべきなのです。ですが手が足りず、@ushitora_anqouに依頼しました。(本当にごめんなさい)その傍らで、mysql8のアプデを行いました。アプデ後、すぐに設定をチューニングし、DESC indexを使うと点数が良く伸びました。

それでも劇的な伸びとは言えず、CPUは100%に張り付いたまま。ここらへんからつらくなってきました。去年はなんやかんやありつつ本戦出たんですよ。今年こそはと1年間、いろいろなことの合間合間にweb系に触れ続けてきたんです。誘った側としても、web系ちょっとは触ってて、インフラ担当って名乗ってる人間としても、ISUCON大好きな私としても。予選落ちしたらチームメンバーに申し訳立たねえよマジでどうしようかと思い始めます。

そんな思考はさておき、@ushitora_anqouとDBの根本的な相談をします。「インデックスを貼ったうえでもどうも無理なリクエストが出うる」「多角形の内側を判定する部分をどうにかできないか」「latitudeとlongtitudeの絞り込み問題で何とかインデックスが効くようクエリを分割できないか」などと会話をしました。MySQLのレプリケーションを行って、Read SlaveとMasterにわけ、負荷分散を行うといいのでは、という結論になりました。ですが、インフラ担当の癖にレプリケーション、やったことないんです。残り時間も少なくなり、見送ることにしました。

20:00- カーネルパラメーター調整

もう最後のダメ押しだと、mysqlサーバーのカーネルパラーメーターをチューニングし始めます。ですが全く意味はありません、なぜならCPU負荷は下がってないからです。iowaitだって出てないのです。ですが焦ってしまい、知ってる手法で早くなることを願ってしまいました。

「推測するな、計測せよ」

本当にこの一言に尽きると思います。案の定スコアは変わらず、再起動試験の時間を迎えました

20:30- 再起動試験、ガチャ

再起動試験をします。あらかじめチェックすることをチームメンバーが記述してくれていたので、滞りなく再起動を行えました。振り返ってみると、個人が検証用にfailしたことはあったものの、全員の成果を組み合わせたベンチは一度もfailすることなく進められていました。それもあって、再起動後に動きさえすれば、再起動failにはならないだろうとメンバーを信頼していました。

そしてISUCON名物ベンチガチャ。あまり振れ幅が変わらなかったものの、まあ最高点に近い点数で撤退。「DBの負荷どうやって下げたら良かったんだろうなあ」「わからんねえ」「わからん」と言いながら、ISUCON10予選を終えました。冷たかったコーヒーはすっかりぬるくなっていました。どうやら500mlぐらい飲み干していたようです。

21:00 – 0:08 そして

雑談をしたりしなかったり、寝たり寝なかったり、ご飯を食べたり食べなかったりして、運営の皆さんの動向を監視していました。discordのrandomにはいろいろな人の感想が流れてきたので、「うわーそれは賢い」「それも賢い」「すごい」「なんやねんその概念」とわいわいしていました。圧倒的なDB律速、そしてその対処のための知識の奔流に、まだまだ若輩者だと実感させられました。特に、「テーブルごとにDBを分割する」アイデアは本当に素晴らしいと感じました。なんで気づかんかったんやろう。@ushitora_anqouと私で悔しがっていました。

0:00を回り、運営の皆さんの終電が心配されるようになったころ、運命の時間がやってきます。最初少し聞き逃したため、一般枠の25位までをよく理解しないまま、941さんのひとこと「計算機科学実験及演習5」。ああ、学生枠2位です!!!本当にうれしかったです。

去年は本戦に出れて「ラッキー」でしたが、今年は正直安心しました。チームメンバー全員そろって本戦に出れるわけです。本当に、本当にうれしかったです。

悔いのない本戦を戦いたいですね。そして、できれば良い成績を。本戦をご一緒できるチームの皆さんと戦えることを待ち望んでいます。

そして、大変な思いをされ、終電を心配され、深夜の3時に起きてる運営の皆様。本当にお疲れ様です、そして、ありがとうございます。めいっぱい楽しい思いをさせていただきました。本戦でも楽しませていただきます。本稿が少しでも大会を盛り上げることを願って、締めとさせていただきます。

末筆ですが、読了ありがとうございました。

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https://anqou.net/poc/2020/09/13/post-3323/feed/ 0
壁に向かって喋ってろ(AA略) https://anqou.net/poc/2020/09/12/post-3319/ https://anqou.net/poc/2020/09/12/post-3319/#respond Fri, 11 Sep 2020 15:34:19 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3319  最近は、なにかに赦しを請うかのように本を読んでいる。

 修行のように大量の本を濫読しているという意味ではない。8月初旬には専門に関してひとつの峠があったが、そこを越えて以降はむしろ以前よりも読むペースは落ちた。書くのも遅々として進まないので実際スランプなわけだが、これは8月初旬がどうこうではなく、あるいは夏が悪いのでもなく、ただこの4月から続く低空飛行の日々が、ゆっくりと私からなにかフロギストン様の物質を削ぎ落としていった結果だと思っている。まだ結果ではなく、過程であろうが。

 冒頭に記した赦し云々というのは、ただ私の読書に対する姿勢にある。たとえば古典的名作と呼ばれる小説を、たとえば今年刊行されたばかりの話題の新作を、私はどうも卑屈と呼んで差し支えないような心境でもって読破し、積ん読の棚から既読の棚へと運ぶ作業を繰り返している。今年に入って買ったばかりの書棚だ。そこに並んだ積ん読を一冊消化する度、借金の利息を返したような気分になる。なにかを読むにせよ書くにせよ、当然その基盤にはこれまでの積み重ねがある。私はその土台がひどく弱い。故にもっと本を読まなければ。義務感と焦燥が今の私の主な燃料だ。読んでいた小説の奥付に指が触れた時、わたしは少しだけ安心して、また一段と怠惰になる。平均睡眠時間は十時間を超えている気がする。もっと起きて、もっと読まなければいけないのに。

 しかし。「読んでいない」という罪を埋めるための読書になんの楽しさがあろうか。読書は実利ではない、といった論は最近でもそこここで目にする。本は楽しんで読みなさいと。きっとそれは正しい。小説を読むことでなにかを汲み取ろうとしている私は、ただ事を急いているだけだ。あるいはそもそも向いていないのかもしれない。自分に鞭打たなければ本の一冊も読めないなんて。

 小説を読むのが楽しくないわけではない。小説を読むのはとても楽しい。これだけはまだ信じていたいことの一つだ。小説を書きたいという欲望のために、本の表層を啜って感動する自分を演じているだけ、そんな可能性を払拭できないことが憎い。自分の無知から逃げようとして本を読んでいるのか。自分の無知を自覚した気になるために、こんな文章を書き散らして、あまつさえ公開しようとしているのか。お願いだから美しい小説に鳥肌を立てることくらい赦してくれないか。

 面白い作品に出逢ったと感じた時、私は自室で興奮に身悶えする。素っ頓狂な叫び声を上げることで、自分はまだこんなに小説を味わえるんですとなにかに赦しを請うている。「畜生」と呻き声を上げる。あるいは、「殺してくれ」。こんな面白い小説を今まで読んでこなかった俺を殺してくれ。こんな面白い小説を書けない俺を殺してくれ。赤子のように無知であるがために、なにかを知る度安っぽい雷に打たれる俺を殺せ。

 そうして赦しを請う無様な自分を赦さずにいることで、今日も私は内心のバランスを保っている。なにに赦しを請うのかといえば、自分自身を除いて他にはいないのだ。私は私を絶対に赦さない。何遍でも復唱したい、これを座右の銘と呼ぶのだろうか。

 半年ほど前からは、ベランダに安物のキャンプチェアとローテーブルを置きっぱなしにして、時々外で本を読んだり原稿を書いたりしている。ひっきりなしに虫に刺されるのと、椅子が日焼けしてガサガサになっていること以外は快適な作業場兼休憩所だ。今も私はそこに座っている。自分の部屋のにおいには、もうほとほと飽きてしまった。今夜は月こそ見えないものの、雲が天の川のように天頂を走っていて悪くない眺めだ。

 という締めの言葉を少し前から用意していたのだが、改めて見上げてみると空は既にその全面が雲に覆われていたので、ここに再度正直な報告を記しておく。空には今、僅かに火星の光だけが見えている。

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