Advent Calendar 2018 | カオスの坩堝 https://anqou.net/poc Chaos is not kaos. Mon, 24 Dec 2018 15:01:08 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.1.1 https://anqou.net/poc/wp-content/uploads/2018/02/9dc10fe231765649c0d3216056190a75-100x100.png Advent Calendar 2018 | カオスの坩堝 https://anqou.net/poc 32 32 2018年坩堝AdCの閉幕 あるいは最近鮟鱇が買ったもの https://anqou.net/poc/2018/12/25/post-2543/ https://anqou.net/poc/2018/12/25/post-2543/#comments Mon, 24 Dec 2018 15:01:08 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2543 この記事はカオスの坩堝アドベントカレンダー2018の25日目の記事です。

こんにちはこんばんはおはようございます。艮鮟鱇です。みなさまお元気でしょうか。私は結構キツめの風邪にかかってしまい、日々襲い来る鼻水・咳と格闘しています。1週間経っても治りません。つらい。

そんな話は置いておいて、無事にカオスの坩堝アドベントカレンダー2018も閉幕を迎えることが出来ました。最終的に12/1から本日12/25まで一日も欠かすこと無く、延べ19人の著者に執筆していただきました。この場を借りて感謝申し上げます。ほんまにありがとう。カオスの坩堝が1周年を迎えてもなお賑わいを見せていることは、疑いようもなく、彼らを含めた計32名のカオスの坩堝著者のおかげです。まだアドベントカレンダーを全記事読んでいない方は、ぜひここからご一読下さい

さて私事ですが、10月の頭にiPad Proを買いました。

ところでAppleは現地時間10/30にiPad Proの第三世代を発売しました。

つまり私が買ったのは「カミナリがおちるほうの」iPad Proです。グスン。

そんなカミナリiPadで、最近大学の授業ノートを取っています。(画像はクリックで拡大されます)

これはグラフ理論。

こっちは工業数学A.

結論からいいます。はちゃめちゃに便利です。カミナリiPadを買う前、私は「タブレットなんかで授業ノートまともに取れんでしょ」側の人間でした。たとえば線を描く時の遅延とか、画面がツルツル滑るとか、書く画面が狭いとか、いろいろと理由はありましたが、カミナリiPadはおおよそ全ての問題を解決していました。カミナリiPadはフレームレートが120Hzあるので遅延がほとんどありません。画面にペーパーライクの保護フィルムを貼れば、ペン先も滑りません。 Good Notesというアプリを入れれば、筆記時の拡大・縮小も比較的楽に行うことができます。

カミナリiPadでできることはもちろんノートを取ることだけではありません。その大きな画面を利用して、電子書籍などを読むことができます。残念ながら大手電子書籍アプリのKindleは使い勝手がよくないため、私はもっぱらDRMフリーのPDFなどを入れて読んでいます。そんなものがあるのか? あります。『Software Design 総集編』です。一冊1000円位するSoftware Designのバックナンバーを、 5年間分まとめて2000円位で読むことができます。貧乏学生にうってつけです。なんなら私はこれをセキュリティ・キャンプで頂きました。タダです。セキュキャンはいいぞ!

とまぁAppleと技術評論社とIPAの回し者をやりました。カオスの坩堝は広告なしでやっているため、この記事にもアフェリンクは貼られていません。安心して閲覧下さい。

そんなこんなでiPad Proがいいですよという話でした。カミナリが落ちないほう(第三世代)は確か10万円くらいだせばフルセット(Apple Pencilとかもろもろ)揃うはずです。カミナリが落ちてもいいなら(第二世代)8万円くらいでどうにかなります。皆さんも一台如何でしょうか。

 

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はっけよいクリスマスイブ https://anqou.net/poc/2018/12/24/post-2482/ https://anqou.net/poc/2018/12/24/post-2482/#comments Mon, 24 Dec 2018 09:58:11 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2482 登場人物紹介

ゴロリ:気持ちのやさしい、5歳のクマの男の子です。工作が得意で、ワクワクさんに教わりながら作ってあそぶのが大好きです。ただ、ゲームではいつもワクワクさんに勝ちますし、時にはワクワクさんの先を行く発想を生み出すこともあります。

萩原雪歩:誕生日おめでとう。雪歩に支えられている人はたくさんいるんだから、もうちょっと自分に自信を持ってもいいんだぞ?

久保田雅人

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

は??????????????

あたま

わっっっっっっっっっっっっっっっっる

メリークリスマスfrom山梨

PS:ゾンビランドサガと寄宿学校のジュリエットは見ろ

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僕とコンピュータ https://anqou.net/poc/2018/12/23/post-2477/ https://anqou.net/poc/2018/12/23/post-2477/#comments Sun, 23 Dec 2018 11:16:46 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2477 この投稿は「カオスの坩堝 Advent Calendar 2018」 の23日目の記事です.

こんにちは、PiBVTです。今回は僕とコンピュータのこれまでの付き合いについて語りたいと思います。

 

幼少期(幼稚園まで)

そもそも、僕自身は計算機・コンピュータよりも工作用紙や木材であれやこれやと作る、工作の方が好きでした。

コンピュータも僕の好奇心の対象にはなりましたが、操作をすると画面が変化することを楽しむだけで、それ自体の魅力を感じ取ったわけではありませんでした。

 

小中学校時代

コンピュータをまともに操作するようになったのは小学生低学年のころだったように思います。誰にもコンピュータ関連のことを相談できなかったので近所の図書館のPC関連書籍棚にある本を片っ端から読んで勉強していました。が、当時僕の家庭ではゲーム・PCは休日の昼間のみという制限があり、コンピュータを使ってプログラミングをしたりするのではなく、本にある内容を試してみる程度のことしかしていませんでした。

 

一方、工作系は何ら制限が無かったので紙・木細工から電子回路へと分野を切り替え、壊れた電化製品を分解して部品を集めて簡単な回路を作ったり、ラジオのキットを買って組み立てたり、改造して受信感度を良くしたりアンプを付けてスピーカーを鳴らしたりしてました。

ちなみに、僕は四国の田舎に住んでいたためまともな部品屋さんもなくお小遣い自体もなかったので、100均ショップの電気小物をベースにして改造することが多かったです。汎用部品で出来ている製品が多かったので、むしろありがたかったです。

 

高校時代

高校生になると状況は一変します。まず、お小遣い制度が導入されある程度の金額までならば自由に買い物が出来るようになりました。さらに、通学用の自転車を買ってもらえたので行動範囲が一気に拡大しました。

 

まずコンピュータ関連のことからですが、高校生になる直前にそれまで貯めていたお年玉で自分専用のノートPC(中古)を購入しました。が、もちろん前述の家庭ルールは適用されているので時間的には自由に使うことは出来ませんでしたが、自分専用のPCなだけあって自由にアプリケーションを入れたりOSを入れ替えたり出来るようになったことはとても嬉しかったです。

さらに、お小遣いのおかげで自由に使えるお金がある程度あったことと、行動範囲を広げれる自転車の登場で、PCパーツ目当てに週2,3のペースで部活終わりに高校近くのHARDOFFに通うようになります。(ちなみに、部活は中高共に柔道をしていました) 良さげなジャンクのパーツやら機器があれば自転車の荷台に積み、家までの12,3kmの道を帰るような日々を過ごしていました。

そんなことをしていると、高校2年生にもなるとジャンクの寄せ集めなPCが2台ほど確保できたので、これらのPCをベースにLinuxを入れてWebサーバーにしたり、KVMを利用して仮想化サーバーを立てるようになります。これといって立てたから何か運用するわけでもなく、ひたすら立てては壊し、また別の何かを立てることを繰り返していました。

 

一方工作系の分野に関しては、PICやAVRのマイコンを触るようにはなったものの、部活が忙しく休日すらまともにまとまった工作の時間を確保することが出来ず、下火になります。高校3年生になるまではPC中心で色々やっていたのですが、高校3年生の4月に本屋で運命的な本と出会いました。渡波 郁さん著の「CPUの創りかた」です。CPUをDIPのロジックICだけで作る内容はまさしく衝撃的でした。この本をきっかけに僕のコンピュータ系の流れと工作系の流れが合流することとなります。

さらに追い打ちをかけるように、ぬるぽへさんの「CPU実験で自作CPUにUNIXライクOS (xv6) を移植した話」の記事を見つけ、自作CPUの上で自作OSが走るのか!と感動し、自分でもやってみたいという思いを持つようになります。

 

大学生になってから

受験を終えて無事大学生となりましたが、想像以上に忙しい毎日でひらすらレポートやら勉強やらで1回生の間は趣味的な何かをすることはほとんどありませんでした。ちなみに、講義の1つでRaspberry Piを使って何か作るというゼミがあり、ここで初めてプログラミングをし始めます。言語はCでした。しかし2回生になる前の春休みに、前述の「CPUの創りかた」や「CPU実験で自作CPUにUNIXライクOS (xv6) を移植した話」を再び読み返し、やっぱりCPUとOS作りたい!という思いから春休みはひたすらnand2tetrisで有名な「コンピュータシステムの理論と実装」を読んで実装をしていました。さらに、この時期にセキュリティキャンプなるイベントがあることを知ります。

2回生になってから、「CPU,OS作りたい」という思いは高まる一方でした。4月の中頃にクラスメートの艮鮟鱇さんから「セキュリティキャンプなるイベントでCコンパイラやらOSが作れるらしい」という話を聞きます。僕は迷うことなくその話に飛びつき、GW中に組み込みOSを書いたりミニキャンプ兵庫に参加したりしてました。倍率は5倍以上という話を聞き、「ダメ元でもいいから出しとくか」と、調べた内容全てを応募用紙に書き送りました。その結果、見事選考を通過し8月14日〜8月18日にセキュリティキャンプ全国大会に参加しました。参戦記はココにあります。キャンプをきっかけにOS自作界隈の方々をTwitter上で知ることが出来、僕の世界がそれまでと大きく異なるものになりました。

これから

これから先の目標としては、まず自作CPU上で自作OSを動かすという計画があります。高校生からずっと夢に見てきた計画なので必ず実現します。他には、0から独自設計された自作OSやCコンパイラも作りたいなぁと考えています。また、外向きな目標としてはセキュキャンや自作OS等のコミュニティについても積極的に参加し、繋がりを広げていきたいと思っています。

大学生という身分を最大限活用して、自分がやりたいと思うことをとことん突き詰めて悔いのないようにしたい。この一言に尽きます。

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https://anqou.net/poc/2018/12/23/post-2477/feed/ 1
こうして日本のプロチームは消滅した https://anqou.net/poc/2018/12/22/post-2471/ https://anqou.net/poc/2018/12/22/post-2471/#comments Sat, 22 Dec 2018 07:43:30 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2471 この投稿は「カオスの坩堝 Advent Calendar 2018」 の22日目の記事です.

 

こんにちは。wottoです。先日のアドベントカレンダーは季節外れの5月病にかかってしまったため、私の代わりに唯一かつ最高の親友であるチョッキー君に書いてもらいました。ありがとうございます。今度ラーメンでも奢るよ。

 

さて、正直なところ、物を書きたい欲は台湾ツアーの記事で使い切ってしまった(僕ではなくチョッキー君が書いてくれたんですがね笑)ので、今回は軽い話をしようかと思います。

数理工学コースはクソだとか、数理工学実験はクソだとかいう話でもよかったんですが、それはあまりに読んでいる人がつまらないかと思うので、私が長年プレイしているゲーム、Overwatchについて書きます。

 

Overwatchとは、アメリカのブリザード社が提供する、個性豊かなヒーロー達を扱いチーム戦で戦うfpsアクションゲームです。いわゆるオンラインゲームですね。

 

さて、私とOverwatchとの出会いを語るとそれまた長い話になるので割愛しますが、ざっくり言うと好きなプロゲーマーの方がOverwatchのクローズドベータテスト(正式サービスが開始する前に、招待された人だけがプレイできる)をしていて、面白いなあと思ったからです。これが大体2016年の4月頃ですね。そこから製品版が2016年の5月頃に発売されたので、発売日に速攻買ってプレイしました。今までAVAという無料オンラインfpsゲームをプレイしていたのですが、それと比べてとても画面が綺麗だし、サクサク動くしですごく感動したのを覚えています。

ちょうど受験期だったのであんまりプレイは出来なかったのですが、毎日平均1時間くらいしてました。結構動画などを見て事前知識があったので、レート(ランキングみたいなもん)もかなり高かったです。

 

さて、そのころは日本においてOverwatchブームが到来しており、数々のプロチーム、セミプロチームが誕生していました。よく日本のメディアやニュースなどを見ると、「プロゲーマー!全く新しい職業!日本で初!」みたいなことを言われることもありますが、実はずっと昔からプロゲーマーという職業自体は存在していました。つまり、プロチームに所属して、スポンサーと契約を交わし、そこから新しいデバイス提供や賃金を得る、という感じですね。

だいたいプロチーム、セミプロチーム合わせて8チームくらいあったんじゃないですかね。このゲームは6人で1チームなので相当な人数です。そんな感じで日本のOverwatchシーンは盛り上がっていました。

 

ただ、その盛り上がりも長く続く訳ではありません。どことは言いませんが無理やりプロリーグを作ったせいで人が集まらず、結果としてめちゃくちゃレベルの低いプロチームが乱立したこともありました。その組織は今も名前を変え形を変え活動しています。潰れればいいのに。

さらに、これはなんというかOverwatchというゲーム自体の問題なのですが、ゲーム中に味方に暴言を吐いたり、試合を投げだしてしまう人が多すぎたのです。その結果多くのプレイヤーがOverwatchを去ることとなりました。実際私もその一人で、受験が終わりさてOverwatchやるか~と思ったらそれはもう酷い試合ばかりで、プレイをやめてしまいました。

 

結果どうなったのかというと、日本国内のOverwatchのプロチーム、セミプロチームはほとんど消滅しました。まあプレイヤーの人たちにも色々事情があったのでしょうが、この現象がOverwatchの人気衰退と関連して起こったのは事実だと思います。

最近(というか今年の春ごろから)復帰し、友人と一緒に細々とプレイを続けていますが、もう全盛期のような盛り上がりを見せることはないと思うと寂しくなります。今後日本において、これだけゲームのプロリーグが盛り上がることはあるのでしょうか。

 

巷ではeスポーツやらプロチームやら色々騒がれていますが、基本的にeスポーツは難しいということは覚えておいてください。なぜなら、そのゲームの人気がなくなったらそれはeスポーツとして成立しなくなるからです。サッカーや野球の人気がなくなることはあまりないですが、ゲームにおいてはそれがあり得るのです。

eスポーツにおいて大切なのは給料やリーグ制などの外向けの体裁ではなく、そのゲームをプレイするプレイヤーなのです。それを無視した結果どうなったのか、私はよく知っています。

 

この記事を読んでいる皆さんは、決してeスポーツだeスポーツだと騒いでいる連中の話を聞いてはいけません。応援すべきなのは、プレイヤー本人と、それを適切にサポートする方々なのです。

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https://anqou.net/poc/2018/12/22/post-2471/feed/ 1
aqcc のソースコードを読みたい: リンカ編 https://anqou.net/poc/2018/12/21/post-2448/ https://anqou.net/poc/2018/12/21/post-2448/#respond Thu, 20 Dec 2018 15:26:49 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2448

aqcc のリンカ部分を読もうと試みつつ苦しんでいます. その途中過程を書き残します.[1]

開発の際、 リンカ・ローダ実践開発テクニック という書籍を参考にされたようですので、そちらが手元にあると便利です. あと man elf や、 X86 psABI から x86-64-psABI-property.pdf として入手できる AMD64 のABI仕様、特にTable 4.9 のRelocation Types などは参考になるかと思います.

以下説明の際は、2018/11/10 コミット分である
2861f51735e0db9e5e7f988a2e51862dca14537a をもとにしています.

概要

このリンカは、リンカローダ本にあるような、簡易的なリンカとして作成されており、いくつか機能が限られています.

リンカの機能制限
  1. 動的リンクはできない

  2. GNU ld で生成したELF ファイルを読込めない

  3. 生成されたファイルを objdump にてうまく参照できない

  4. 再配置作業は最低限のみ行なわれる

  5. 普通のELF ファイルとは異なり、ファイルの先端末尾のみならず、中間部にもヘッダ分散[2]

gcc などと同様に、 ./aqcc そのものではコンパイルを行わず、その下にある cc as ld などに処理を渡し、
実際の処理は ld/main.c からはじまります.

    Vector *objs = new_vector();
    for (int i = 1; i < argc - 1; i++) vector_push_back(objs, argv[i]);

    ExeImage *exe = link_objs(objs);

    FILE *fh = fopen(argv[argc - 1], "wb");
    dump_exe_image(exe, fh);
    fclose(fh);

argv には system.o main.o などとリンク対象のファイル名が指定されるので、それから link_objs() 関数を呼び、リンクされた内容を表す ExeImage へのポインタが生成されます. この構造体も動的に確保されたものですが、malloc() は link_objs() 内部で呼び出され、最後までfree() は呼び出しません. [3]
そうして、 dump_exe_image() 関数を呼び出して、書き込んでやっています.

リンク処理の概要

ソースコードを読むと、数値定数が多く埋め込まれていることに気づきます.

一般に、多くのELF を扱うソフトウエアでは、 /usr/include/elf.h に、ELF フォーマットを 構造体を用い表したものがあるのを利用し、それに読込ませ、読み書きが分かりやすくできるようです.
一方、aqcc においては、C言語の全ての機能が実装されているわけではありません.[4]
直接 /usr/include/elf.h を解析するわけにいかず、現状では読み込もうとしても失敗します. そこで、直接ELF ファイルをバイナリとして扱っているようです.

まずは読込みから.
ld/link.c: L55 in new_object_data() などにて、
read_entire_binary() にてchar型の配列として読込まれたデータから、それぞれのセクションごとに切り出しています.

ただ、この部分において定数が頻出します. man elf や実際のバイナリを眺めがなら行うのがよいかと思います.

例えば ld/link.c: L60 in new_object_data() 以降のセクションヘッダを読込む部分など.

    for (int i = 1; i < obj->nshdr; i++) {
        char *entry = obj->shdr + 0x40 * i;
        char *offset = data + read_dword(entry + 24);
        int size = read_dword(entry + 32);

まず、EFI のセクションヘッダが0x40 の大きさをもつことより、セクションヘッダ開始位置を entry に代入しています.
そこから、 man elf にあるように、uint32_t の個数を数えて、offset の位置を同定します. 今回は4 * 6 = 24 となるので、24先から 32bit分を読み込んでいます. [5]

メモリ再配置部分を見てみます.
ld/link.c: L130 in link_objs_detail() のあたりでしょうか. 読み込んだそれぞれのELF ファイルの再配置テーブルから、再配置すべきものを抜き出し、検索し書き換えを行なっています.

そののち、再配置情報が特定なものになっている場合 (aqcc のアセンブラではこれしか出てきません) AMD64 の仕様にある R_X86_64_PC32 の再配置方式に従い、オフセットの差を検索して代入しています. しかしながら、筆者の能力ではいまいち、理解できずじまいです.
仕様読めない.

ここにある & 0xff の意味については後述します.

次に、書き込みを見てみます.
ld/link.c: L207 in dump_exe_image() などにて、 emit_byte() なり emit_dword() 関数なりで、奇妙な数値を書き込んでいます.

これらの関数は ld/object.c にて定義されるように、 set_buffer_to_emit() によって定義された Vector に、順番に値を流し込んでいます.

    // ELF magic number
    emit_dword(0x7f, 0x45, 0x4c, 0x46);
    // 64bit
    emit_byte(0x02);
    // little endian
    emit_byte(0x01);
    // original version of ELF
    emit_byte(0x01);
    // System V
    emit_byte(0x00);  // 0x03 GNU
    // padding
    emit_qword(0x00, 0x00, 0x00, 0x00, 0x00, 0x00, 0x00, 0x00);

    // (中略)
    for (int i = 0; i < vector_size(exeimg->objs); i++) {
        ObjectData *obj = (ObjectData *)vector_get(exeimg->objs, i);
        for (int j = 0; j < obj->data_size; j++) emit_byte(obj->data[j]);
        for (int j = 0; j < obj->entire_size - obj->data_size; j++)
            emit_byte(0);
    }

例えばこの部分. man elf のELF ヘッダー、最初の部分 e_ident を表しています.

また、中略以降、body の部分では、生成した本体部分の内容をバイトごとに書き込み、このようなフォーマットで時たま見かける、中途半端なバイトを0 で埋める作業も、うまく行われています.
ld/link.c: L51 in new_object_data() にて、16 の倍数になるようにして、そこからの不足分を0 にて埋めています.

    obj->entire_size = roundup(data_size, 16);

ここからは、いくつか読解に苦労している点を順不同にならべていきます.

Vector なり Map なり

眺めていると、Vector やMap などといったデータ構造が存在しますが、これは ld/vector.c などを参照すればよいかと思いますが、鮟鱇さんにより実装されたものです.
細かな点は ld/ 以下に記されていますが、関数名などから自然と内容は把握できるかと思います.

シンボルの探索

ld/link.c にあるsearch_symbol_maybe() にて、それぞれのELF オブジェクトごとに線型探索が行なわれています.

従って、時間がとてもかかり、一般的なライブラリ ( 例えば /usr/lib/libc.a の内容など) を読込めるようにするためには、ここの計算量を下げる必要があります. [6]

& 0xff

例えば link.c: L297 など、至るところに & 0xff と記されています.

わざわざこのような処理が加えられたのは、aqcc に unsigned char が実装されておらず、char と記すと signed char を意味するためのようです.
[7]

aqlibc

aqlibc というのは勝手に名付けました. 前述の通り、一般的なC言語標準ライブラリのサブセットが ld/stdlib.c にて実装されています.

malloc() 関数の実装などは、次のように、ただ広い領域を確保してやるのみです. 形式的に free() 関数は実装されていますが、一切処理が行なわれず、確保したメモリが尽きることは想定しないものとなっています. [8]

void *malloc(int size)
{
    static char *malloc_pointer_head = 0;
    static int malloc_remaining_size = 0;

    if (malloc_pointer_head == 0) {
        char *p = brk(0);
        int size = 0x32000000;
        char *q = brk(p + size);
        // printf("init %d\n", p);
        // printf("init %d\n", q);
        malloc_pointer_head = p;
        malloc_remaining_size = size;
    }

    // 中略: バグの検出

    char *ret = malloc_pointer_head + 4;
    malloc_pointer_head += size + 4;
    malloc_remaining_size -= size + 4;

    // 中略: デバッグ用コメント
    return ret;
}

また、現状 printf() 関数が標準エラー出力に出されず、標準出力に出されるという制限があります.

以上、aqcc リンカ部分のソースコードについて述べてきました.
aqcc の特にリンカ部分は、350行程度しかなく、付加的な機能が少ないために、リンカの概要を掴むのによいと感じさせられました. 筆者は理解できていませんが、プログラミングにある程度慣れている方なら読み易いのではと思いますし、そこまではしなくとも、実際に試したり、fork してみるなどはいかがでしょうか.

以上、 カオスの坩堝 Advent Calendar 21日目の記事でした[9].


1. 人のソースコードでPVを稼ぐ悪い戦略です.
2. それでも生成した実行ファイルが動くのは、ひとえにELF というフォーマットの柔軟さゆえでしょうか.
3. malloc() にて確保したものをあえて free() しないという考え、筆者には常識外れに感じて受け入れられずにいるが、話を簡単にできるので賢い.
4. unsigned char や (細かな) #if などが実装されていません.
5. このようなソースコードをよく混乱せずに書かれたな、という気持ちになります. すごい.
6. しかしながら、静的リンクであっても実装するのは困難だと思われます. /usr/lib/libc.so はリンカスクリプトを用いた他のファイルへの参照に過ぎず、ELF 形式ではありません.
7. 短期間で自己完結 (self-hosting)を実現するためにはやむをえない回避方法だと思います.
8. この制約も、いきなり難しいものを実装しようとせず、簡単なところから始めるという良い習慣の結果だと感じます.
9. 鮟鱇さんすごいな、と改めて感じさせられました.
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https://anqou.net/poc/2018/12/21/post-2448/feed/ 0
焚べる https://anqou.net/poc/2018/12/20/post-2447/ https://anqou.net/poc/2018/12/20/post-2447/#comments Thu, 20 Dec 2018 14:59:33 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2447  

(2018年12月22日0時改稿)

 

 

焚き火に投げ込まれた枯れ枝は、炎に当てられた途端に呆気なく燃えた。乾き切っていない枝があったのか、火は視界をぼやけさせる程の白煙を吐き続けている。顔を焦がす熱を感じて、わたしは椅子を少しだけ引いた。

「薪、もう無くなっちゃったけど」

「良いんだよ。これ以上燃やしたら、寝る前に消えなくなるから」

軍手を外してテーブルの上に置いた。アルミの小さなテーブルの上には、カップが二つ並んでいる。一つがわたしので、もう一つが香織の。さっき入れたばかりのココアが、十月の夜風に当てられて柔らかに湯気を上げている。

森の奥の方で音がしたような気がして、カップに口を付けながら目だけで辺りを見回す。勿論人間が出した音じゃない。風の音でなければ、きっと狸か狐の足音だ。ここらにはよく獣が下りてくる。

火がますます勢いを増してきた。煙が目に染みる。それだけに、鼻の奥を満たす湯気とココアの香りを心地良く感じた。わたしはもう何センチかだけ椅子を焚き火から遠ざけて、再びカップをテーブルに置く。ふと見ると、反対側のカップのココアが全然減っていない。

「香織も早くココア飲んじゃいなよ。冷める前に」

わたしは顔を右に、わたしと暖を取る妹の方へ向ける。

そこで、目が合った。

 

 

日本に住む人間の約十人に一人が東京に居るというのは、統計上の事実だ。けれど、産まれた時からこの街に居るわたしにとっては、世の中の人間の十人に九人くらいが東京人だった。

都会に住むことを息苦しいと感じたことは無い。東京にだって緑が無いわけじゃないし、たまには家族で旅行にだって行く。都会の人間が冷たいだなんて、誰が言いふらしたことなのか知らないが、少なくともわたしの周りの人は温かかった。わたしの話を聞いてくれる。わたしと一緒に話してくれる。私のことを好きでいてくれている。だから友達と遊ぶのは好きだし、家族のことも好きだ。特に、お姉ちゃんお姉ちゃんとわたしを慕う香織の存在は、わたしの中でとても大きい。みんなと過ごす毎日が好きだ。特に変わり映えは無いけれど、だからこそ変わらない日常の楽しさを私は知っているんだ。

とは言え、それはそれ。高校二年生には、たまに一人になりたい時もある。そんな時私は、一人でキャンプに行く。あまり人気の無いキャンプ場の奥の奥、誰も寄り付かないような場所で一晩を過ごすのだ。焚き火をして、簡単な夕飯を作って、そのまま静かにテントで眠る。友達にはあまり話さないが、わたしの密かな趣味だ。

だから、香織に「わたしもキャンプに連れて行って」とせがまれた時に、咄嗟に嫌な顔をしてしまったのも仕方の無いことだと思う。

確かにわたしの持ってるテントは大きめだから、香織が入っても余裕がある。けれど、寝袋は一つしかない。秋の夜は冷えるからと何度も止めたが、それでも香織はキャンプに付いていきたがった。可愛い妹の頼みを断りきれなかったわたしは結局、寝る時になったら寝袋は香織に譲ることを内心で決めて、香織と一緒にキャンプ場に出かけることにした。

 

いつものキャンプ場までは電車で移動する。原付くらいしか免許の取れない高校二年生にとって、キャンプの最大の障害は移動だ。原付の免許は、危ないからと言ってお母さんが取らせてくれなかった。

急行に揺られること二十分、乗り換えのためにわたし達は一旦駅のホームに下りた。ここからは各駅停車でキャンプ場の最寄り駅へと向かう。

「この辺になると、結構田舎なんだね」

「そういうこと、あんまり言わない方が良いよ」

都会人は冷たい、という話ではないが、都心に住むわたし達が「田舎」と口に出して言うのは、やはり何となく躊躇われた。

初めて下りた駅で興味深げにきょろきょろしている香織につられて、わたしもホームを見渡した。塗装が剥げ錆びた鉄骨の柱、ホームの中頃にぽつんと置かれた売店、エスカレータの無い歩道橋じみた階段なんてのは、確かに都会とは違う空気を形作っている。ただの乗り換え駅でしかない場所の風景についてなんて、考えたこともなかった。

「田舎は駄目なんだ。じゃあ、自然が豊かだね。森とか畑とか」

「畑は自然じゃないでしょ」

「自然だよ。だって植物じゃん」

香織は手を口に当てて笑った。この、喉の奥から鳴るような香織の笑い声がわたしは好きだ。わたしにはどうだって良いようなことでも、香織が笑うと、わたしまで笑えてくるのだから不思議だ。

 

各駅停車に乗る人はいよいよ少なく、わたし達の向かいの座席に至っては、誰も座っていなかった。二人で家に居る時みたいな気分になって、わたし達はまたどうでも良いことを喋った。

「お姉ちゃん、今回の期末どうだった」

「まあまあかな」

「クラスで何番だったの。お姉ちゃんのとこ、順位貼り出されるんだよね」

「そんなでもないよ。四番」

「何人中の」

「四十一人」

「凄いじゃん!」

香織は自分のことのように喜んでくれた。車両の隅の方に座るサラリーマンがちらりとこちらに目線をよこした。少し恥ずかしい。

「お姉ちゃんは凄いなあ。凄いよ。私なんかよりも、ずっと」

「駄目だよ、私なんか、なんて言っちゃ」

香織はいつもわたしを凄いと言ってくれる。でも、時々彼女は同時に自分を卑下するのだ。それには不満だった。

ソファに座るわたし達の裏側、窓の外から日差しが差し込んでいる。温かな光が私の背中を温める。わたしは香織のことを、わたしより下だなんて思ったことは一度も無い。

でもきっと、それを口に出して言ったところで、香織の慰めにはならない。そう思って、私は話題を変えた。キャンプの話をしよう。今日の夕飯のことを。焚き火を起こす楽しさのことを。あの冷たく静かな暗闇のことを。

各駅停車は間もなく目的の駅に到着した。

 

 

 

森の木々の間を縫って、夜の帳が広がっていった。光を奪われた空気は瞬く間に冷え込んでいく。わたし達が外でこうして話していられるのは、焚き火の熱を浴びているからだ。

香織の短めに揃えた髪の毛が、風に吹かれて揺れている。

香織は、いつからわたしを見つめていたのだろう。わたしの振る舞いの、何が妹の気に留まったのだろうか。

違う。そんなことじゃないのは判っている。

香織の表情は、今まで見たことが無いくらい真剣で、切実だった。香織の顔の右半分は焚き火に照らされて橙色に光っている。それだけに、影になった左半分が、無性に怖く思えた。

また風が吹く。剥き出しの頬が刺すように冷たい。でも香織は動かない。わたしをじっと見ている。わたしも動けなかった。

「どうしたの、香織」

わたしは努めて明るくそう言った。香織の目を真っ直ぐ見られなくて、焚き火の方に顔を向けながら。我ながら不誠実な対応だと思う。

「わたしね、お姉ちゃんと、二人きりで話したいと思ってたんだ」

「そんなの、家でもよく二人になってるじゃん。お父さんもお母さんも、帰ってくるの遅いから」

「そうじゃなくって」

香織が焦れたように首を振る。わかってる。香織は「ここ」でわたしと話したかったんだよね。

「まあ、落ち着きなよ。ココア飲んで」

それでも私はまたその場凌ぎに言葉を紡ぐ。視界の端で、香織が素直にココアに口を付けた。

時間を稼いでいる内に、次第に動揺は収まってきた。焚き火が心をリラックスさせると、どこかで聞いたことがある。目の前で爆ぜる赤い炎の存在は、確かにわたしを安心させてくれる。焚き火はまだ燃えている。

香織がカップをテーブルに戻す。私もそこでやっと、彼女の方を向くことができた。

カップに指をかけながら、香織はゆっくりと話し始めた。

「わたしはね。お姉ちゃんが好きなんだ。勉強が出来て、友達が多くて、優しくて。いつもわたしの手を引いてくれて、一緒に歩いてくれる。わたしの悩みを聞いてくれる。……わたしの、自慢のお姉ちゃんだよ」

「……ありがとう」

わたしはどう言って良いか分からなくなって、ただそう返した。香織の言葉は、静かなこの世界で、どこまでも真っ直ぐだ。焚き火の爆ぜる音すら、今は息を潜めているようだった。

「お姉ちゃんが一人でキャンプに行くって言った時は、ちょっと驚いたけど、良いことだって思った。お姉ちゃん、昔から一人で遊ぶってこと、殆ど無かったから」

そうだったかな、なんてとぼけた言葉は、口に出す前に舌の上で擦れて溶けた。

「でもね。キャンプに行く時のお姉ちゃん、全然嬉しそうじゃない。行ってきますってわたしに言う時、笑ってるんだけど、笑ってるように見えないんだよ。ねえ、お姉ちゃん。お姉ちゃんは、なんでここに来るの。何か、理由があるんじゃないの。わたしに教えてよ」

 

わたしは、純粋に驚いていた。キャンプに行く時の顔なんて、意識したことも無い。産まれた時からずっとわたしを見てきた香織だから、わたしの笑顔の中の違和感なんてものに気付けたのだろう。

香織は、さっきと同じ真剣な顔でわたしの答えを待っている。

でも、わたしはそんな問いへの答えを持ってなんかいない。

「わたしは……ただ、たまには一人で遊ぶのも良いかなって、キャンプを始めただけで……。ごめん、でも本当に、それだけ。心配しないで。わたしは大丈夫だから」

本心からのわたしの言葉が、なんでこんなにも空っぽに響くのだろう。無性に香織に対して申し訳なく感じた。

わたしは手持ち無沙汰に感じて、テーブルの上のカップに手を伸ばした。金属の取っ手に触れた瞬間、冷たさが指に伝わった。焚き火からの熱が届いていないのだ。焚き火は先程までに比べ、火の勢いが目に見えて衰えてきている。

「そろそろ焚き火が消えるよ。テントに入らなきゃ」

いたたまれなくなって、わたしは強引に話題を変えようとした。

「お姉ちゃん!」

香織が滅多に出さないような大声を上げる。違う。逃げているんじゃない。わたしには、香織の考えているような隠し事なんて無い。それだけ。

「何か悩みがあるなら、わたしに話してよ。わたし、お姉ちゃんにもらってばっかりで……お姉ちゃんから相談されたことなんて一度も無いよ。ねえお姉ちゃん、」

一体、何を怖がってるの。香織はそう言った。

わたしに悩みなんて無いんだ。本当に何も無いのに。じゃあ、香織の目に映ったのは誰だ。怖がっているのは誰なんだ。そんなのわたしじゃない。

頭痛がする。煙を吸い込みすぎてしまったみたいだ。

わたしはまた香織の顔が見られなくなって、ただずっと焚き火を見ていた。薪は殆ど燃え尽き、火はいよいよ弱まってきている。カップのココアもとっくに冷め切ってしまった。

わたしはなんでキャンプに行きたいと思ったんだっけ。それは、一人で遊ぶため。じゃあ、どうして一人になりたいんだっけ。わからない。香織の方が、よっぽどわたしのことを知っているのかもしれない。

このまま火が消えることが怖いだなんて、思ったのはこの時が初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(以下は改稿前の文章です。一度公開したもののため、一応載せておきます)

 

 

焚き火に投げ込まれた枯れ枝は、炎に当てられた途端に呆気なく燃えた。薪が入ったことで、火はこれまで以上に高く躍り上がる。顔を焦がす熱を感じて、わたしは椅子を少しだけ引いた。

「薪、もう無くなっちゃったけど」

「良いんだよ。これ以上燃やしたら、寝る前に消えなくなるから」

軍手を外してテーブルの上に置いた。アルミの小さなテーブルの上には、カップが二つ並んでいる。一つがわたしので、もう一つが香織の。さっき入れたばかりのココアが、十月の夜風に当てられて柔らかな湯気を出していた。

森の奥の方で音がしたような気がして、カップに口を付けながら目だけで辺りを見回す。勿論人間が出した音じゃない。風の音でなければ、きっと狸か狐の足音だ。ここらにはよく獣が下りてくる。

火がますます勢いを増してきた。わたしはもう何センチかだけ椅子を焚き火から遠ざけて、再びカップをテーブルに置いた。ふと見ると、反対側のカップのココアが全然減っていない。

「香織も早くココア飲んじゃいなよ。冷める前に」

わたしは顔を右に向ける。

そこで、香織と目が合った。

 

 

日本に住む人間の約十人に一人が東京に居るというのは、統計上の事実だ。しかし、生まれた時からこの街に居るわたしにとっては、世の中の人間の十人に九人くらいが東京人だった。

都会に住むことを息苦しいと感じたことは無い。都会の人間が冷たいだなんて、誰が言いふらしたことなのか知らないが、少なくともわたしの周りの人は温かかった。わたしの話を聞いてくれる。わたしと一緒に話してくれる。私のことを好きでいてくれている。だから友達と遊ぶのは好きだ。何でもない日常というのを、わたしはきっと、人並み以上には楽しめている。

でも、それはそれ。高校二年生には、たまに一人になりたい時もある。そんな時私は、一人でキャンプに行く。あまり人気の無いキャンプ場の奥の奥、誰も寄り付かないような場所で一晩を過ごすのは、私の密かな趣味だった。

だから、妹の香織に「わたしもキャンプに連れて行って」とせがまれた時に、咄嗟に嫌な顔をしてしまったのも仕方の無いことだと思う。

確かにわたしの持ってるテントは大きめだから、香織が入っても余裕がある。けれど、寝袋は一つしかないのだ。秋の夜は冷えるからと止めたが、それでも香織はキャンプに付いていきたがった。可愛い妹の頼みを断りきれなかったわたしは結局、寝る時になったら寝袋は香織に譲ることをひそかに決めて、香織と一緒にキャンプ場に出かけることにした。

いつものキャンプ場までは電車で移動する。原付くらいしか免許の取れない高校二年生にとって、キャンプの最大の障害は移動だ。原付の免許は、危ないからと言ってお母さんが取らせてくれなかった。

急行に揺られること二十分、乗り換えのためにわたし達は一旦駅のホームに下りた。ここからは各駅停車で最寄り駅へ向かう。

「この辺になると、結構田舎なんだね」

「そういうこと、あんまり言わない方が良いよ」

都会人は冷たい、という話ではないが、都心に住むわたし達が「田舎」と口に出して言うのは、やはり何となく躊躇われた。

とはいえ、塗装が剥げ錆びた鉄骨の柱、ホームの中頃にぽつんと置かれた売店、エスカレータの無い歩道橋じみた階段などは、確かに都会とは違う空気を形作っている。

「田舎は駄目なの。じゃあ、自然が豊かだね。森とか畑とか」

「畑は自然じゃないでしょ」

「自然だよ。だって植物じゃん」

香織は手を口に当てて笑った。この、喉の奥から鳴るような香織の笑い声がわたしは好きだ。わたしにはどうだって良いようなことでも、香織が笑うと、わたしまで笑えてくるのだから不思議だ。

 

各駅停車に乗る人はいよいよ少なく、わたし達の向かいの座席に至っては、誰も座っていなかった。二人で家に居る時みたいな気分になって、わたし達はまたどうでも良いことを喋って、笑った。

「お姉ちゃん、今回の期末どうだった」

「まあまあかな」

「クラスで何番だったの。お姉ちゃんのとこ、順位貼り出されるんだよね」

「そんなでもないよ。四番」

「何人中の」

「四十一人」

「凄いじゃん!」

香織は自分のことのように喜んでくれた。香織の成績だって、平均よりずっと良いだろうに。香織はいつもわたしを凄いと言う。わたしを自慢の姉だと言う。わたしを憧れてくれるんだ。それがいつもくすぐったくて、いつも嬉しい。

 

 

秋の森の奥へ、夜は突然に訪れる。光を失った空気は瞬く間に冷え込み、風が木々の間を抜けて吹く。わたし達が外でこうして話していられるのは、焚き火が燃えているからだ。

香織は、いつからわたしを見つめていたのだろう。わたしの動きに、何か面白いところでもあったのか。

いや、違う。そういうことじゃないのは判っている。香織の表情は、今まで見たことが無いくらい真剣で、切実だった。香織の顔の右半分は焚き火に照らされて橙色に光っている。それだけに、影になった左半分が、無性に怖く思えた。

「どうしたの、香織」

わたしは努めて明るくそう言う。香織の目を真っ直ぐ見られなくて、焚き火の方に顔を向けながら。我ながら不誠実な対応だと思った。

「わたしね、お姉ちゃんと、二人きりで話したいと思ってたんだ」

「そんなの、家でもよく二人になってるじゃん。お父さんもお母さんも、帰ってくるの遅いから」

「そうじゃなくって」

香織が焦れたように首を振る。わかってる。香織は「ここ」でわたしと話したかったのだ。

「まあ、落ち着きなよ。ココア飲んで」

それでも私はまたその場凌ぎに言葉を紡ぐ。香織は素直にココアに口を付けた。

時間を稼いでいる内に、次第にわたしは落ち着きを取り戻していた。香織が強引にキャンプに付いて行きたがった意味も、今なら何となく判る。

香織がカップを置く。ここにきて私も彼女の方を向いた。

香織はカップに指をかけながら、ゆっくりと話し始める。

「わたしはね。お姉ちゃんが好きなんだ。勉強が出来て、友達が多くて、優しくて。いつもわたしの手を引いてくれて、一緒に歩いてくれる。わたしの悩みを聞いてくれる。……わたしの、自慢のお姉ちゃんだよ」

「……ありがとう」

わたしはどう言って良いか分からなくなって、ただそう返した。香織の言葉は、静かなこの世界で、どこまでも真っ直ぐだ。焚き火の爆ぜる音すら、今は息を潜めているようだった。

「お姉ちゃんが一人でキャンプに行くって言った時は、ちょっと驚いたけど、良いことだって思った。お姉ちゃん、昔から一人で遊ぶってこと、殆ど無かったから」

そうだったかな、なんて誤魔化しの言葉は、口に出す前に舌の上で擦れて溶けた。

「でもね。キャンプに行く時のお姉ちゃん、全然嬉しそうじゃない。行ってきますってわたしに言う時、笑ってるんだけど、笑ってなくて、何か、怖がってるみたいな……そんな顔してる。ねえ、お姉ちゃん。お姉ちゃんは、なんでここに来るの。何か、理由があるんじゃないの」

 

わたしは、純粋に驚いていた。キャンプに行く時の顔なんて、意識したことも無い。香織は、産まれてからずっとわたしのことを見てきたんだろう。そんな香織だから、わたしの笑顔の中の違和感なんてものに気付けたに違いない。

香織は、さっきと同じ真剣な顔でわたしの答えを待っている。

でも、わたしはそんな問いへの答えを持ってなんかいない。

「わたしは……ただ、たまには一人で遊ぶのも良いかなって、キャンプを始めただけで……。ごめん、でも本当に、それだけ。心配しないで。わたしは大丈夫だから」

本心からのわたしの言葉は、なんでこんなにも空っぽに響くのだろう。無性に香織に対して申し訳なく感じた。

わたしは手持ちぶさたになって、テーブルの上のカップに手を伸ばした。金属の取っ手に触れた瞬間、冷たさが指に伝わった。焚き火を見ると、先程に比べ、火の勢いが目に見えて衰えている。

「そろそろ焚き火が消えるよ。テントに入らなきゃ」

「お姉ちゃん!」

香織が滅多に出さないような大声を上げた。違う。逃げているんじゃない。わたしには、香織の考えているような隠し事なんて無い。それだけ。

「何か悩みがあるなら、わたしに話してよ。わたし、お姉ちゃんから相談されたことないよ。わたしは……」

わたしに悩みなんて無い。本当に何も無いのに。香織の目に映ったのは誰なんだ。誰が怖がっている。そんなのわたしじゃない。

わたしはまた香織の顔が見られなくなって、ただずっと焚き火を見ていた。薪は殆ど燃え尽き、火はいよいよ弱まってきている。

きっとわたしは、香織が変なことを言ったせいで気が動転してしまったのだろう。そうに違いない。

だって、このまま火が消えるのが怖いだなんて、今まで思ったことが無いのだから。

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伝説 https://anqou.net/poc/2018/12/20/post-2442/ https://anqou.net/poc/2018/12/20/post-2442/#comments Wed, 19 Dec 2018 17:18:03 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2442 その馬は、確かに飛んでいた。

2002年3月25日、ノーザンファームで1頭の馬が生まれた。父は現代日本競馬における大種牡馬サンデーサイレンス、母はイギリスのG1馬ウインドインハーヘア。その年のサンデーサイレンス産駒としては低価格であった7000万円で落札され、「ディープインパクト 」と名付けられた。

ディープは初めから期待されていたわけではなかった。牝馬と勘違いするほど小柄で可愛らしく、それなりに走ってくれればいいか、といった馬であった。

しかし、2歳の秋にその速さが現れる。調教で予定よりはるかに速いペースで走り、しかも汗すらかいていなかったのだ。この辺りから最強馬ディープの片鱗が見え始める。

12月、武豊を鞍上にデビューする。デビュー戦は当たり前のように圧勝する。しかも最後の直線のタイムは大人の馬と比べても速すぎるほどであった。ちなみにこのときの2着はその後G1で2着に入るなど十分すごい成績を残した馬である。

デビュー戦だけ強い馬は沢山いる。しかし、ディープの2戦目である1月の若駒ステークス、このレースではさらに衝撃を残した。なんと直線最後方からムチを入れず圧勝したのだ。このレースでディープの名は一気に有名になる。

競馬のレースには階級がある。下から新馬戦、未勝利戦、条件戦、オープン戦、G3、G2。そして1番上の階級は、年間24レース行われるG1レースである。その中でも、「3歳馬しか出られないレース」が4つ存在し、そのうちの3つ、4月の「皐月賞」5月の「東京優駿(日本ダービー)」10月の「菊花賞」はまとめて「クラシック3冠」と呼ばれ、どれか一つでも勝てば強い馬とされる。そして、3つとも勝った馬は「3冠馬」と呼ばれる。3冠馬はディープインパクト の世代までに「セントライト」「シンザン」「ミスターシービー」「シンボリルドルフ」「ナリタブライアン」の5頭おり、例外なく強い馬である。

前述した2戦の圧勝劇より、ディープインパクト は早くも3冠馬の呼び声が上がっていた。続く3戦目の皐月賞前哨戦G2弥生賞でも、辛勝ではあったがムチを入れないままであり、不安要素にはならなかった。

本番皐月賞では、単勝支持率63%と日本競馬史上2番目に高い支持率を受け、スタート出遅れも全く気にせず2馬身半差の圧勝。さらに日本ダービーでは、史上最高の73%を記録。レースでも5馬身差、レコードタイの速さで駆け抜けた。このレースによりディープインパクトは無敗でクラシック2冠を達成。これは13年ぶりの記録であった。

秋初戦のG2神戸新聞杯をレースレコードで圧勝したディープは、そのまま3冠目の菊花賞へ駒を進める。このときの支持率は79%を記録、単勝元返し(100円買ったら100円返ってくる)となった。レースでもいつも通り最後の直線で逃げる馬を一気に差し、11年ぶり史上6頭目の3冠馬、21年ぶり史上2頭目の無敗3冠馬となった。ゴール時、アナウンサーは「世界のホースマンよ見てくれ!これが、日本近代競馬の結晶だ!」と叫んだ。

そして年末、1年を締めくくるG1有馬記念。しかしここで事件が起きる。直線に入って、いつもの伸びがない。最後の600メートルは全馬中最速だったものの、前を捉えきれない。結局、4番人気だった1歳年上のハーツクライに破れてしまう。ディープの不敗神話が崩れた瞬間だった。

春。初めての敗北を味わったディープは、何事もなかったかのようにG2阪神大賞典を完勝する。そしてG1天皇賞・春。このレースで、ディープはなんとスタート大出遅れ、さらに直線より2つ前のコーナーで早くも先頭に立つと、そのまま2つのコーナーと直線で後続馬を突き放す圧倒的な強さを見せた。レコードを1秒更新し、その存在を再び世界に知らしめた。

6月の宝塚記念でも全く問題なく他馬を突き放し、満を持して凱旋門賞に挑む。

凱旋門賞とは、フランスのロンシャン競馬場で行われる世界最高峰のレースの1つと言われるレースである。そしてこのレースでは、日本馬は未だ勝ったことがない。そのため、今回のディープインパクトには大きな期待がかかっていた。

現地でもディープの評価は高く、日本馬初の凱旋門賞に向けて流れは良かった。しかし、レースでは直線で伸びず、3着に終わってしまう。しかもその後、レース前に疾患を治療するために与えられた薬が現地では禁止薬物となっていたことが発覚し、凱旋門賞失格となってしまう。禁止薬物による失格は、凱旋門賞では初めての出来事であった。

疾患により調子が悪かったとはいえ、ディープですら凱旋門賞には届かなかった。その事実により日本競馬は少し暗い雰囲気になっていた。そのせいか、帰国後初レースとなる、海外の強豪も多数参加するG1ジャパンカップでも、ディープの支持率も61%にとどまった(普通こんなに高くないので別にとどまってはいない)。さらにレースもディープに向かない展開となった。しかし、そんなことは全く気にせずディープインパクトは優勝。そして引退レースとなる2回目のG1有馬記念。アナウンサーは、「間違いなく飛んだ」と2度叫んだ。ここで引退するのが惜しいほどの圧勝で、ディープインパクトは有終の美を飾った。

生涯成績は14戦12勝2着1回。日本でディープを負かしたのはハーツクライただ1頭だけというものすごい成績を残して引退した。G1レース7勝は歴代トップタイ(この時点で3頭目、現在6頭)。こうしてディープインパクトは伝説となり現役生活を終え種牡馬入りした。

そして、第2の伝説が始まる。

なんと初年度の子供たちが2つもG1を勝利したのだ。種牡馬は1年で何百頭と増えるため、G1を2勝するだけでもすごい。ところが、これ以降ディープの子供たちが日本競馬を蹂躙する。2年目産駒(子供のこと)のジェンティルドンナは牝馬の3冠(もちろん全てG1)を達成、そのまま父も勝ったジャパンカップで史上初の連覇を達成する。その他の産駒も非常に強く、6年目には産駒でのクラシック3冠レースを全て制覇。わずか8年間で海外や障害レース含めG1を57勝と、大種牡馬である父の12年78勝に届きそうな勢いである。その他にも初年度産駒勝利数や初年度産駒獲得賞金、史上初の2戦目でG1制覇、最速年間100勝、最速1000勝、最速1500勝、産駒2歳勝利数、年間G1勝利数など多数の記録を塗り替え、父サンデーサイレンスをも超える大種牡馬となっている。2017年には孫の代の馬も菊花賞に勝利している。このように、現在の日本競馬ではディープインパクトの子供たちが暴れまわっているのだ。

まだディープインパクトは元気に過ごしている。彼の夢に終わりはない。伝説の馬ディープインパクト、その衝撃はこの先も引き継がれていく。そして、次の世代へ──

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twitterでチケットを転売した話 https://anqou.net/poc/2018/12/19/post-2429/ https://anqou.net/poc/2018/12/19/post-2429/#comments Tue, 18 Dec 2018 15:07:37 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2429 この記事は、カオスの坩堝アドベントカレンダー2018の18日目の記事です

どうもどうも。あまみるきーと申します。随分久しぶりの投稿になりましたね。今年もAdvent Calenderの季節やんけ、何か書こっかなって思ったのはいいんですけど、いやいや何を書けばええんや…という壁にぶち当たりまして。記憶の中からネタになりそうなものを捻り出した結果、タイトルの通りになりました(笑)。

最近ライブ等のチケットの転売について議論になってますよね。行きたくもない(?)イベントのチケットを取っては、本当に行きたい人に高額で売りつけるのが問題とされています。それを防ぐために、チケット転売用のアプリやサイトも出てたりします。ただし、最初に、今回の私の場合は「チケットがたまたま余り、それを本当に行きたい人に適切な価格で売った」ということを強調しておきます。私は今回に関しては問題にならないと考えた上で転売をしています。長くなりましたが、それでは本編をどうぞ。

ーーーーーー

ことの発端は先月の上旬。12月のあたまにある某女性歌手のライブに家族4人で行こうと、母親と私がチケットを2枚ずつ応募しました。ちなみにその歌手は最近メディアにも注目されだした方で、家族4人とも彼女の曲を気に入っています。数日後、無事にチケット4枚を取ることができました。ところが、父親が仕事の都合にライブに行けないことに。そこで、私が余ってしまった1枚を誰かに転売しようと考えたのでした。

私は、一緒にライブに行かないかと友人たちに聞いて回りました。しかし、「バイトがあるから」とか「知らない歌手だからなぁ」と断られるばかり。10人ほどに断られて、諦めようとしていたその時、私は思い出しました。あの”青い鳥”の存在を。

なんと私は、この件の少し前に、twitterで趣味アカウントなるものを作っていたのです(どうでもいいことですが、現在私はtwitterのアカウントを3つ持っています。気になる人は探してみてね)。趣味アカウントとは、音楽やゲームなどの趣味でつながり合うためのアカウントのこと。だったら、そのアカウントでチケット欲しい人を募ればいいじゃん!フォロワー数が少ないですが、twitterの拡散力に頼れば余裕のよっちゃんイカで見つかるはず!おのれ、天才か私!てなわけで、さっそく欲しい人を募るツイートをtwitterに流してみました。すると翌日…

いや、見つかるの早すぎん!?リプライ送ってきたのフォロワーでもない人だよ!?twitterの拡散力すげえわ。てことで、その方(以降Aさんとします)にチケットを譲ることに。渡すまでのやり取りは割愛しますが、とても丁寧な人だなぁという印象でした。ちなみにチケットはアプリ内での電子チケットでしたので、アプリを通して簡単に渡すことができました。時代も進歩したもんですな。

〜〜〜〜〜〜

日は飛んでライブ当日。大学の授業が終わった私は電車で会場へ移動し、入場前に母親&妹と合流。夕食を済ませて自分の座席に向かいます。座席に着くや否や、転売した相手であるAさんとエンカウント。実は私とAさんは座席が連番になっており、簡単に会うことが出来たのです。会ってみての印象を申し上げますと…あの、まさか社会人だとは思ってませんでした。しかも10歳も年上の。聞けば、その女性歌手のライブに来るのは今回が初めてとのこと。「なかなか行きたくても行けなかったけど、あまみるきーさんのおかげでやっと来れました!」と、譲ってあげて良かったと思える言葉をいただきました。ちょうど余ったんだし、受け取ってもらえて嬉しいのはこちらですよ。

さて、ライブは2時間ほどで終了し(感想?生歌はええなぁ(小並感))、Aさんからチケット代金をいただくことに。ライブ当日に受け取ると打ち合わせていたので、何の問題もなく受け取ります。ちなみに封筒が某企業のものだったんですが、もしかしたらAさんはそこにお勤めなのでしょうかね。最後に「良いライブでしたね」とお互い話して、Aさんとは別れました。

で、ここからが重要。家に帰って封筒を開けてみると、何ということでしょう、1,000円多く入っているではありませんか!!…ってまあ、予想はしてましたけどね。感謝の意だの何だので余分に入れてくれてるかもなぁって。よこしまだけども。「どうせ多く入ってるんだろ」って思って、Aさんの前では封筒を開けなかったしね。一応「1,000円多く入ってましたけど…?」とAさんに連絡すると、「手数料とかいろいろかかってると思ったので、気持ちだけですが。」という返事が。あんた、良い人すぎるぜAさん!!私の小遣いが1,000円増えたじゃねぇか!!

ーーーーーー

てことで、以上がtwitterでチケットを転売した話でした。いや、本当にこれだけしか書くことないんです。許してください何でもしますから(何でもするとは言ってない)。

なんとなくまとめ的なことも書いておきましょうか。今まで私はtwitterを呟きの場とか人間関係が広がる場としか認識してなかったんですが、こんな使い方があるんだなって気付きました。それも、ただ自分を100%投影したアカウントじゃなくて、趣味という面だけを写したアカウントによってアピールしたことが良かったんだと思います。SNSの有益な使い方を身につけたことが今回の収穫と言えるでしょう。それと、余分にもらった1,000円も。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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https://anqou.net/poc/2018/12/19/post-2429/feed/ 1
GMC-4 https://anqou.net/poc/2018/12/17/2421/ https://anqou.net/poc/2018/12/17/2421/#comments Mon, 17 Dec 2018 14:26:47 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2421 この記事は、カオスの坩堝アドベントカレンダー2018の17日目の記事です。

 

まわりに情報系の学生が多いと、初対面での会話に初めて書いたプログラミング言語についての話題はつきものです。僕はどちらかというと組み込み系からプログラミングの入ったのもあって、初めて書いたのはいわゆる機械語です。情報学科の界隈では珍しいらしく、このことを話すと受けがいいので個人的には気に入っています。

 

機械語といってもx86とかそういうたいそうなやつではなくて、学研の大人の科学という雑誌のふろくに付いてきたGMC-4というおもちゃみたいなマイコンの命令セットです。いや、「マイコンみたいなおもちゃ」の方が正しいかもしれないです。なんせ4bit長のデータしか扱えません。当然扱えるデータメモリも50 から 5Fまでの16番地分だけです。基本スペックはこんな感じです。

入出力

out : 7個のLED, 7セグLED1つ(0 ~ Fまで表示できるやつ), スピーカー1つ

in : 0 ~ Fまでの16個のキー入力

メモリ

パソコンとかと違ってマイコンのメモリは実行中のプログラムを保持しておく専用のメモリ領域があります。

プログラム領域 : 0 ~ 4F

データ領域 : 50 ~ 5F

レジスタ : A(演算用), B, Y(アドレス指定用), Z, A’, B’, Y’, Z’

実行フラグ、プログラムカウンタ

命令セット

XレジスタをXrと書く。Mem(X)はメモリの(X + 50)番地を表す。Eから始まる命令はCAL命令といい、実行フラグが1の時のみ実行される。

命令コード ニーモニック 説明 実行フラグ
0 KA 押されているキー番号→Ar キーが押されていたら0
1 AO Ar→7セグLED 1
2 CH ArとBr、YrとZrをそれぞれ入れ替え 1
3 CY ArとYrを入れ替え 1
4 AM Ar→Mem(Yr) 1
5 MA Mem(Yr)→Ar 1
6 M+ Mem(Yr)+Ar→Ar 桁上がり時は1
7 M- Mem(Yr)-Ar→Ar 負数になった時は1
8□ TIA□ □→Ar 1
9□ AIA□ Ar+□→Ar 桁上がり時は1
A□ TIY□ □→Yr 1
B□ AIY□ Yr+□→Yr 桁上がり時は1
C□ CIA□ Arと□を比較 不一致→1
D□ CIY□ Yrと□を比較 不一致→1
F□□ JUMP□□ もし実行フラグが1なら□□番地へジャンプ 1
E0 CAL RSTO 7セグLEDを消灯 1
E1 CAL SETR Yr番目のLEDを点灯 1
E2 CAL RSTR Yr番目のLEDを消灯 1
E4 CAL CMPL Arをビット反転する 1
E5 CAL CHNG Ar, Br, Yr, Zr を A’r, B’r, Y’r, Z’r と入れ替える 1
E6 CAL SIFT Arを1ビット右シフト ビットがあふれた場合は1
E7 CAL ENDS エンド音 1
E8 CAL ERRS エラー音 1
E9 CAL SHTS ぴっ 1
EA CAL LONS ぴー 1
EB CAL SUND Arに指定した音階の音を鳴らす 1
EC CAL TIMR (Ar + 1) * 0.1 sec 処理を止める 1
ED CAL DSPR 5F番地を上位3ビット、5E番地を下位4ビットとし7つのLEDに2進表示する 1
EE CAL DEM- (Mem(Yr)-Ar + 10) % 10 →Mem(Yr), Yr-1→Yr, 実行前にMem(Yr) – Arが負であった場合は、Mem(Yr – 1)から1引いていく 1
EF CAL DEM+ (Mem(Yr)+Ar) % 10 →Mem(Yr), Yr-1→Yr, 実行前にMem(Yr) + Arが10以上だった場合は、Mem(Yr – 1)に1足していく 1

 

例えば、7つのLEDを使ってダイナミック点灯を行うプログラムは次のようになります。

 

アセンブリ :

L2:
TIA 0
L1:
TIY C
AM
CY
MA
TIY E
AM
TIY C
MA
AIA 1
TIY C
AM
CY
MA
TIY F
AM
TIY C
MA
AIA 1
CAL DSPR
CIA C
JUMP L1
JUMP L2

命令コード

80AC435AE4AC591AC435AF4AC591EDCCF02F00

 

今ならばこのような貧弱な計算機は1度触って飽きるところですが、中学1年の自分には新鮮そのもので、当時は授業そっちのけで狂ったようにプログラムを書いていました。卓球ゲームやルーレットを書いたり、入出力周りを改造して2色の4×7ディスプレイを点灯させたりと、飽きるまで遊び尽くしました。当時はフローチャートもアセンブラも知らなかったので、ノートに命令列を直接書いてプログラムを書いました。たぶんクラスメイトからは変なやつだと思われていたでしょう。

 

こんなGMC-4の何が面白かったのかと考えると、プログラムメモリが40バイトしかなかったからではないかと思います。どうやったら40バイトに収まるか?得点の記録機能は追加できるか?そうやって試行錯誤を繰り返しながらプログラムを完成させるのは、C言語のプログラミングとはまた違った楽しさがありました。それはおそらく、近年の一般的なプログラミングにはない楽しさだったと思います。

 

GMC-4はシミュレータが無料で公開されています。よかったら遊んでみてください。もしもプログラムを作ってみた人がいたら、僕にも見せてくれると嬉しいです。

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https://anqou.net/poc/2018/12/17/2421/feed/ 1
NHKにようこそ (絶望) https://anqou.net/poc/2018/12/16/post-2415/ https://anqou.net/poc/2018/12/16/post-2415/#comments Sun, 16 Dec 2018 12:26:34 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2415 私事ではありますが、先日遂にテレビを購入しました。SHARPのAQUOSにしたのですが、最近世界の亀山モデルが生産終了したとのことで、私の兼ねてからの憧れであったあのラベルはありません。 私の知らないところで日本のブランドが消滅していくのはいささか寂しい限りではありますが、それを気にさせないほどのクオリティ。美しい映像…。良い買い物をしました。

まあ、お金を出してくれたのは父なのですがね。感謝。

さて、日本の放送社といえばNHKです。今年は受信料問題で何かと話題になりました。ワンセグに関する判決も今までとは異なる形となり、「スマホを買っただけなのに」受信料をせびられるようになりました。iPhone主義の私にはワンセグ機能など無縁であったので、我関せずで通してきたのですが、今回は本丸のテレビ購入。これは流石に言い逃れできない…。

いや、まだ手があるはずだ!

NHKを見なければいい!

これを閃いたときの私は、さぞ素晴らしいドヤ顔をしていたことでしょう。マックで深いことを言って拍手喝采されたJKのような気分でした。これなら勝つる! 意気揚々とテレビにアンテナ線を繋ぎ、スイッチオン!

 

 

 

初めて映った番組はNHKスペシャルでした。

 

 

 

そりゃそうです。彼らは最強の1チャンネル保持者、番組選択権のない我々人間には、NHKを避け続けることは不可能だったのです。というか、そもそもあれは視聴料ではなく受信料なので、受信拒否でもしない限り払わざるを得ないといえばそれまでなのですが。

こうなってしまえば、無料の民放など見ていられません。NHKを骨の髄まで見尽くして元を取る策に出ました。

 

 —数時間後—

 実際面白い(小並感)。

 イッテQで金持ち軍団と呼ばれるだけのことはあります。自然科学のドキュメンタリーにあっさりはまりました。これはお金を払う価値があるのでは? なかなか、いや、かなりいいぞNHK。そのまま連続でドキュメンタリーをやるようなので連続視聴。2時間以上溶かしました。

 こうなると、なぜ皆がNHKにお金を払いたがらないのかが分からなくなってきました。もしかしたら、無料であるコンテンツが2チャンネルほど先にあるのならば、それと同列に扱ってしまおうとするのかもしれません。

こんなことを考えていたらふと、漫画村やMusic FMのことが頭を掠めました。漫画村の流行によって苦しんできた漫画家のコメントを見ていると、自分の愛したコンテンツが犯罪者に潰されるのを見ているのはひどく苦しいものでした。金を払わなくていいコンテンツなどないのです。

ただNHKの場合は、テレビがあったら問答無用であることが問題であるわけですが。現在、NHKがテレビの付属品であるとの理解がまだ十分に得られていないというのは、私の知らない根深い問題があるようです。事実、受信料が制作費に宛がわれないといった問題は、既に報道されている通りです。

少なくとも私は今回のドキュメンタリーを通じてNHKのことをちょっと好きになったので、受信料を払ってもいいかも、と思っています。皆さんは、どうでしょう?

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