2019年春季投稿大会 | カオスの坩堝 https://anqou.net/poc Chaos is not kaos. Fri, 12 Nov 2021 02:14:06 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.1.1 https://anqou.net/poc/wp-content/uploads/2018/02/9dc10fe231765649c0d3216056190a75-100x100.png 2019年春季投稿大会 | カオスの坩堝 https://anqou.net/poc 32 32 そういえば彼女ができた話 https://anqou.net/poc/2019/03/24/post-2831/ https://anqou.net/poc/2019/03/24/post-2831/#comments Sun, 24 Mar 2019 13:21:37 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2831  本当は彼女ができた話をしようと思ったんですが、時間がない(1日遅れちゃってごめそテヘペロ)ので、今年度自転車で行ったところのレビューをしようと思います。新歓期ですし、ついでに広報も兼ねて。おススメ度の星は5段階評価(当然ですが主観的な評価です)となっております。それではどうぞ。

1.六甲山(4月) おススメ度★★★☆☆

関西有数の人気夜景スポットの六甲山は、新歓期のツアーとして行きました。山頂の標高は931mですが、山頂のすぐ近くまで道が走っており、車でもチャリでも行けます。この日は天気も良く、ローディー(ロードバイク乗り)が多かったですね。しかしローディーが多いなりに、登り坂はキツいです。覚悟して行きましょう。景色は評判通りにいいので星3つ。

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2.小川路峠(6月) おススメ度★★☆☆☆

長野県は飯田市にある峠で、いわゆる「分断国道」です。分断国道とは、国道のルートにもかかわらず車道が供用されていない場所のことで、多くは登山道となっています。その1つである小川路峠を、自転車を担いで越えました。私の所属するサイクリング部ではこういうエクストリームな活動もするんですよー!正直キツかったです。楽しいのは間違いけどニッチなので低めに星2つ。

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3.能登半島(7月) おススメ度★★★★☆

金沢から高岡まで時計回りに能登半島を一周しました。1日半で320キロはまあまあキツい。が、距離以上にしんどいのが猛暑。2日で10Lくらい水飲んだんちゃうか(さすがに誇張ですが)。とは言え、能登はめちゃくちゃ景色がよかったですね。展望台あり、棚田あり、グルメあり、そしてもちろん海が綺麗!北陸ラバーの私も唸る星4です!次は車で行きたいなぁ。

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4.佐渡島(8月) おススメ度★★★★★

新潟県沖に浮かぶ離島はかつて流刑地とされていました。しかし行ってみるとめちゃくちゃ良い!海は透き通ってるし、山は眺めがいいし、メシはうまいし、トキはかわいいし。もうね、語彙力0になるレベルで良かったです。年1くらいで行きたい。自転車なら、島を一周するも良し、スカイラインからの景色に言葉を失うも良し。

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5.大台ケ原(11月) おススメ度★★★☆☆

三重奈良県境にそびえる100名山の1つです。三重県側から自転車を担いで登り、奈良県側に下りました。はっきり言って2018年でいちばんしんどかった。私の自転車重すぎ。あんなんただの鉄塊やで。しかも山頂着いたらもう周り真っ暗やし。でも空を見上げたら満点の星空が広がってて、流れ星もけっこう見れました。疲れた身体に絶景が染み込んだので星3つ。

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 上の5つだけではなくもっとたくさんの場所に行ったのですがここに書くには多すぎるので、尺の都合でここまで!他にどこ行ったの?自転車って何が楽しいの?彼女との馴れ初めは?などなど気になる人は、サイクリング部の新歓に是非来てくだされ。

 こんな場で個人的な宣伝をしちゃったことを若干申し訳なさを感じつつ、今回はこれでおさらば。

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写真で振り返る!留年の危機ベスト3! https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2834/ https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2834/#comments Sat, 23 Mar 2019 14:53:36 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2834 俺、進級おめでとう!!!!!!!!

血湧き肉躍る教授との闘いを乗り越え無事進級した私ミッフィーに腹パンされたい。今回はその名シーンを写真と共にランキング形式で振り返ろうと思います!

3位

試験の前に教授が仕掛けた罠、出席日数との闘いでの1シーンですね!先輩にお前出席大丈夫なん?って言われて「いや〜まだ4欠なんで余裕!w」って言ったら「4欠アウトじゃね……?」って言われて血の気がガチで引きました。

あとでシラバス見たら生化学ってA1A2に分かれてて、授業日数が6、10でA2は出席日数が2/3要るからA2だけだったら留年確定だったんですよね。マジで気が気じゃなかった。なんとかA1の方で欠席稼いでて良かったです。みんなも出席日数には気をつけよう!!!!糞が。授業日数管理する暇あったら授業の質を上げろよ。

2位

これは留年がかかった課題を提出日まで放置した挙句、そもそも教科書を買っていないので課題の範囲が分からず、先輩に泣きついた回の1シーンです。しかも24:00が締め切りだと思ってたら23:55だったんですよね。皆さんは締め切り17秒前に課題出したことあります?これ出した直後は「17秒……w」ってなってましたけど自分の有り得たかもしれない未来を想像したら一瞬で冷や汗がダッラダラ出てきて日本が富士山を残して水没しちゃいました。みんなも締め切りには気を付けよう!!!!!!!!!!!!!!糞。なんでこんなわけわからん締め切り時刻にすんの?舐めてると潰すぞ……課題も面倒やし、そもそも教科書買ってないんやから課題の範囲を教科書のページで指定すんなや。お金無い人間のことも考えろ。

1位

これは山梨大学でもトップレベルの落単率を誇る鬼教科解剖学Aの最終成績(修正前)ですね。左から順にレポートの評価、本試の点数、中間の点数、スケッチの評価、レポートスケッチによる加点、最終成績となっております。合格点は100点となっております。

???????!!??!!??!!???????????!!??!!?????????!??????!!????!?????????????!!???!?

本試から点が減ってる!!?!?!?!????!?!?!?!

なんで!!!?!!???!!???!?

みんな「教授の下駄のお陰で解剖耐えた〜!」

!!?!!!!???!!!!!!!?!?

漏れの下駄は!!!!?!!??!!??!?

下駄が下に生えた!!?!?!?!!?!?

最近の下駄って地面掘るん!!?!?!?!?!?ドリル付いてるん!!!?!!?

なぜ追試⁉本試験より点数減少あり得ない話し‼謝れ‼謝れ‼謝れ‼

ア。(解剖学と生化学の追試を同時期に受験して受かる自信が無いため死)

絶対採点おかしいやろふざけんな(不屈の闘志)

教授「計算式Twitterに置いとくぞ」

あぁ^〜〜〜〜〜お単位こわれる^〜〜〜

とメンタルが逝き、やけ食いした桔梗信玄パフェも味がせず、自殺も視野に入れていたところ、先輩からとりあえず教授室に殴り込めというLINEが来たため教授室に向かったのであった……

そして……

うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

おおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

‼‼大変お世話になりまさした‼やるな笑笑

受かりまくる季節が来た
2回生になれるのは誰・・・
俺!俺!俺!俺!Ole!Ole!
Ah ニートのJamboree
デレステ <ミリシタ<<シャニマス!!(短期的なモチベの話であって、特定のコンテンツへの否定的な感情を示すものではありません)
Ah 悪ノリの教授陣
めっちゃゴリゴリ
Welcome 春休み
Ah 宿泊の オタク
暴れまくってイイぜ!!
Ah 冷めないで
シャニ1st Dream
「目頭濡れたまんまでイッちゃって!!!」
春休みだぜ(Yeah!!)
春休み風(Fuu!!)
春休み晴れ(Yeah!!)
夏春休みバテ(Boo↓↓)

またコイツで決まりだ
Summer Again

新大学生のみんなは真似しないでね!!!春休みが2週間奪われたお兄さんとの約束だよ!!!!!!

最後に大学入ったら留年しそうな担当アイドル2名を貼って筆を置きたいと思います。ミッフィーに腹パンされたいでした。

望月杏奈ちゃん。

大崎甜花ちゃん。

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今年度の参加した大会を振り返ってみる https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2827/ https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2827/#comments Sat, 23 Mar 2019 13:48:02 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2827 0、はじめに

皆さんこんにちは、野球大好きokiyyです。

春期投稿大会を完全に忘れていて21時頃から慌てて書き始めました。いつものように野球でもいいんですが、時間が無いので趣味のオリエンテーリングで出た大会の振り返りをしていこうかと思います。

1、北大大会(5月下旬)

テレインは新千歳空港近くで上空を飛行機か飛び交う珍しいテレインでした。一年生は運営をせずにF(フレッシュマン)クラスを走りました。とはいいつつ全く技術的なものを学ばずに走っているので常に迷子状態。3時間以上彷徨いリタイア、軽くトラウマみたいなものになりました。沼地で靴が持って行かれかけたのも今はいい思い出。

2、札幌OLC大会(8月上旬)

テレインは苫小牧の苫東展望台、9月の地震で地滑りが起きたところが割と近くだったりする。起伏が少なく見通しが良いので直進が非常にしやすかった。初日のミドルでは藪のせいで岩が見えず足を負傷、出血しながらのゴールとなった。翌日のロングは体力と走力不足を痛感した。ミドルはこの一年間のベストレース。

3、北東学連セレクション(8月中旬)

世間がコミケの際に行われていた大会。栃木県矢板付近で行われた。凄く暑かったくらいしか記憶にない。初めてのスプリントは地図の縮尺に戸惑いポストを通り過ぎたり地図交換をよく理解していなかったりと経験不足を露呈した。また、前日の雨により道が一部冠水していた。翌日のロングはロングレックより30メートルの土崖を登らされたことの方が記憶に残った。

4、インカレスプリント、ロング(9月中旬)

高校の文化祭の翌週に行われた。高校同期2人と後輩1人、元学年主任もいたので実質文化祭とかいう極論が振りかざされた。テレインは駒ヶ根、駒ヶ根サービスエリアが地図に載っているなど非常に高速道路の近くであった。スプリントは大雨の中行われた。道路の斜面が川のようになっており、ポスト周りが非常に足場が悪かった。ゴールの芝生広場ではスプラッシュマウンテンみたいになりスリップによるクラッシュ、コースアウトが続出していた。20分ほどの競技だが非常にストレスの多いレースであった。また、翌日のロングでは道の表記の部分が川のようになっており非常に戸惑った。片斜で足場に石が多かったので走りづらく、直進も上手く行えなかった。また、ゴール付近が泥のプールのようになっており非常に辛い思いをした。このころから慢性的な膝痛に悩まされ始める。

5、京大京女大会(11月中旬)

友達に誘われ参加を決定。新規リメイクテレインということで非常に楽しみであった。テレインは滋賀県の高速道路付近。関西の微地形の初体験であった。現在地をロストするとリロケートがほぼ不可能なレースであった。時間切れということもあり、北大大会以来のリタイア。主要道に出たいがフェンスに阻まれ脱出できないというオチまでついてきた。なお翌日の授業は実家から飛行機で通学するエクストリーム通学を行った。(結果は30分遅刻)

6、ミドルセレクション(12月初頭)

日光愛宕でのレース、テレインの周りは激斜であったがテレイン内はそれほどだった。レースの内容よりスタート、ゴール誘導の時間の長さが記憶に残った。(3キロ以上)雪もちらついており非常に寒かった。なおレース後は成田空港で空港泊、翌日の朝に戻り、そのまま授業を受け、空きコマで帰宅、風呂に入りスーツに着替えて授業を受け、そのままアルバイトとかいう地獄の日程をこなした。(もうやりたくない)

7、新春大会(正月)

大阪の深北緑地でのレース、公園で難易度も低く、新年の顔合わせも兼ねた大会である。その代わり5キロ以上を全力で走り続けるとかいう脳筋な大会でもある。某学年主任も参加しており、卒業したにもかかわらず一番早く会うとかいう逃れられない運命。ちなみに某氏は50代後半にもかかわらず男性30代の部門で走っていました。元気だね。レース後のお楽しみレースは公園の四隅を全力疾走で回るとかいうさらに脳筋なレース。鈍った体にはちょうどいいかも。初心者には非常に簡単でおすすめの大会。

8、ウェスタンカップ(2月中旬)

大阪の山田池公園でのレース、3人のリレーであるが一人9キロ近く走らないといけないという非常に体力のいるレース。参考記録となるが一人で3人分走る通称「鉄人」を行う変人もいた(ハーフマラソン走るのと変わらないよ)ちなみに競技責任者が某学年主任であり、参加を非常に勧められていた。高校同期2人とTDJOLCなるものを結成し参加した。ちなみにリレーオーダーを提出した際に運営側に本当にTDJにオリエンクラブが出来たと誤解されかけた。(いつか作ると思われてたみたい)お祭り感もあり非常に楽しめた。

9、インカレミドル、リレー(3月中旬)

岐阜県の恵那で行われたレース。片斜の激斜で岩が多く足場が悪いという非常に難易度の高いテレインであった。ちなみにテレインでは珍しい北斜面。現在地をロストするとリロケートが難しく一度下って主要道に出ないといけないという慎重で丁寧なナビゲートが必要なレースであった。足の怪我や体力、技術不足もあり1日目のミドル、2日目のリレーとともに思うようなレースは行えなかった。

10、最後に

一年間を振り返ってみましたが色んな所に行っているなと感じました。時間が無い中書いたので誤字脱字は勘弁してください。あと権利がいろいろややこしいので地図を載せることが出来ないのも申し訳ありません。何か質問とかあれば答えるので気楽に質問してください。ちなみにこの一年でよくわかったことは校外学習のたびにポストの設置から撤収、運営をすべて一人で行ってた某学年主任はとても凄いってことだよ。普通一人でやれる作業量じゃないね。好きでやってるとはいえヤバいです(語彙力不足)

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https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2827/feed/ 2
影の男 https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2824/ https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2824/#comments Sat, 23 Mar 2019 13:25:24 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2824

 町内放送の夕焼けこやけが耳に届いたことで、初めて僕は今が夕方であることに気付いた。

一体どれほどの時間、僕はここで呆けていたのか。目の前の世界が赤く変わっていったことにすら意識が向いてなかったのだから相当のものだ。茫然自失、とは今の僕のことを言うのだろう。

 ここへ来た時は砂場で遊んでいた数人の子供たちも、いつの間にか居なくなっていた。彼らが夕焼けこやけよりも前にこの児童公園を去った理由の一つが、ベンチに座ったまま動かない不審な男子高校生の存在だったのだとすると、それは少し申し訳無いなと今更ながらに思う。砂場の上に取り残された簡素な造りの城が、夕陽に照らされて色濃く影を落としていた。赤と黒の二色で染め上げられているそれは、まるで戦火に燃え落ちる最中の城のようにも見える。まさに斜陽だ、と僕は頭の中で呟いた。

遮蔽物の無い公園を、風が容赦なく吹き抜けていく。昼間は暑さに灼かれていたというのに、今は七月とは思えない程に肌寒い。既に夏本番の気分だった僕は、羽織る上着も持たずに半袖のままでじっと座り込んでいる。そろそろ家へ帰らなければ、ここに居続けては体調を崩してしまいそうだ。

 ベンチから立ち上がろうとして、両膝に手を乗せる。自然と体が前に傾き、自分の股ぐらを覗き込むような姿勢になったところで、僕は「それ」の存在を思い出した。

 影だ。傾いた陽の光がほぼ正面から僕に当たって、背中側に細長い影を形作っている。それだけでは無論、何の注目にも値しないだろう。

ただ、この影が動いて喋るというのならば話は別だ。

「どうした。俺の方を見つめて。何か用か」

 声が聴こえる。しかし、周囲に僕以外の人影は無い。この声は間違いなく、地面に伸びる僕の影から聴こえてくるのだ。

影は僕と同じようにベンチに座って、しかし僕とは違って手を膝に置いていない。左手、いや右手だろうか、すぐには判りづらいがどちらか片方の手をひらひらと振って、自分の存在を主張してきている。その軽薄っぽい身振りを見ているのが嫌になったので、僕は視線を前へ戻すことで、影を視界の外に追いやった。

「何でもない。ただ、自分の頭のおかしさを再認識している」

「頭がおかしい? それは、公園のベンチに一時間五十分も座り込んでいることか」

 勿論そのことを言っているんじゃない。こいつは判っていて僕をからかっているんだろう。おかしいというのは、この影のことに他ならない。

 僕は別に霊能力者でも超能力者でもない。人ならざる者との邂逅を日常とするような、非日常を生きる人間ではなかった。それが今日のある時を境に、こうしておかしな影に取り憑かれてしまっている。

もしこいつが本当に、科学で説明の付かない未知なる存在なのであれば良いが、残念ながら僕はそこまで夢見がちでも楽観的でもない。この影はほぼ間違いなく、僕の無意識が生み出した存在しない虚構の怪物だ。目に見える形で現れた、僕の狂気そのものとでも言おうか。

「狂気そのものとは、なかなか言ってくれるじゃないか。少しは物を考えられるようになってきたらしい」

 影は平然と僕の思考を読んだ。こうして声が聴こえること自体僕の「気のせい」なのだから、考えを読まれるくらいでは驚きもしない。影が動くのは幻覚、声が聴こえるのは幻聴。イマジナリーフレンドという言葉を聞いたことがあるが、それとはやや異なるようにも思える。何にせよ、明日にもしかるべき病院へ行くべきだろう。

「明日の予定は決まったか」

「残念ながらね」

「よし、よし。じゃあ落ち着いたところでもう一度、この件を一から考え直してみようじゃないか」

「考え直す?」

 地面から聴こえてくる声は、図々しくも宿主である僕に何か提案をしたいようだ。思わず肩越しに振り返ると、影は足を広げてベンチに腰掛け、両腕を胸元へ潜り込ませていた。どうやら腕を組んでいるらしい。

「今更何を考えるっていうんだ。おかしくなってしまったこの僕が」

「自分で狂ったって思い込んでるのは狂った内に入らないんだよ。考えるのは、勿論今日の昼間の件についてさ。翔華(しょうか)がどうしてあんなことを言ってきたのか……合わせて、これまで翔華と何があったかもよく思い返してみると良い」

「そんなこと……」

 そんなことをわざわざ考える必要は無いし、考えたくもない。喉が一瞬で乾き切ったような感じがして、最後まで言葉が繋げなかった。

本当に、考えたくなかった。既に決まってしまった結末と、判り切ったその理由を反芻することが、一体何になると言うのか。彼女と過ごした日々を懐かしんだところで、虚しくなるだけだろう。質の悪い懐古でしかない。

「そうとは限らない。結末が決まったなんていうのは、お前の思い込みじゃないか。お前は翔華と別れたことを悲しむばかりで、考えることを止めちまっているんだよ。木偶の坊になって公園で黄昏れているのが、どうだ、そんなに楽しいか」

「……楽しい筈が無い。さっきから、当たり前のことばかり訊くなよ」

 弱音と非難が混ざったような僕の返答を聞いて、何が可笑しいのか、影は声を上げて笑った。手を叩く音まで聴こえてくるが、僕自身の両手は膝の上から動いていない。

「楽しくないのなら、別のことをしようじゃないか。なあ、悠人(ゆうと)。諦めるには早い。まだ日は沈んでいないんだ。夜が来るまでの間だけで良い。今までのことを思い出して整理してみてくれ」

 影の口調が、今までに無く柔らかなものへと変わった。僕をなだめすかして、自分の望む方向へ思考を誘い出そうとしていることが容易に推し測られる。詐欺師か悪魔か、でなければゲーテの詩に登場する魔王のような手口だ。

「考えるんだ、悠人。何なら、結論を出す必要すら無い。冷静になってじっくりこれまでのことを考えている内に、俺なんていつの間にか消えちまうかもしれない。悪くないだろ」

 この誘いに乗ってはいけない。そう思っているにも関わらず、僕は自分の口の端が上がるのを感じた。頭の片隅が、影の言うことにも一理あると納得してしまったのだ。

そもそも、このまま家に帰ったところでどうなる? 夕飯を食べて、寝て起きて、明日からまた生きていくだけだ。そしてその明日は、もはや暗闇へと変わってしまった。落ちてしまった太陽が、再び上ることは無い。これから先、長い長い夜が始まるのだ。それこそ、想像したくもない程に絶望的。

 そうだ。先の未来を考えるくらいならば、過去を振り返っていた方がまだましじゃないか。それでもしこの鬱陶しい影が消えるのだとしたら、損は無い話だ。

 そこまで思考が及んだところで、僕は苦笑とも冷笑とも付かぬ笑いを浮かべてしまったのだった。何ということは無い。影の言葉は僕の言葉でもある。自分で自分を丸め込むこと程、楽な説得は無いだろう。

「……日が沈みきったら、家に帰るからな」

 絞り出すような僕の言葉を聞いて、影が満足気に唸り声を上げる。僕は改めて木製のベンチに座り直した。古くなった材木が僅かに軋み声を上げる。

公園を吹く風が弱まってきた。もう少しの間なら、ここに居ても大丈夫そうだ。

日没まで残り幾ばくもない。それでは、情けない話だが考えてやろうじゃないか。翔華が僕を振った、その理由を。

 僕と翔華の出会いの瞬間まで、わざわざ遡る必要は無いだろう。というか、そんな昔のことは憶えていない。翔華の家は産まれた時から向かいにあって、僕らは殆ど必然的に幼馴染になった。

辛うじて記憶が残っているのは、幼稚園に入園してからのことだ。幼い僕が、幼稚園へ向かう道を誰かと手を繋ぎながら歩いている。繋ぐだけに留まらず、僕の手をブランコのように勢い良く振り回しているのは、同じく幼い頃の翔華だ。

「ゆうくん、今日はうちにとまってくの?」

「うん。おかあさんが、おしごとで帰れないから……」

他愛も無い会話が頭の中で再生される。実際、僕らはしょっちゅうお互いの家に遊びに行っていたし、僕の両親が仕事で家を空けた日は、翔華の家に泊めてもらうのがお決まりのパターンだった。だからきっとこんな会話も交わされたのだろうが、生憎声までは思い出せない。差し詰め、字幕付きの無声映画と言ったところだ。

何を悩むことも無く、ただ笑って過ごしていられた日々。ここに、破局の手がかりがあるようには思えない。自分の思い出を汚い足で踏み荒らしているような気分になってきたので、その頃のことを詮索するのは止めておこう。

 僕と翔華の間にはっきりと「ずれ」が生じ始めたのは、小学生になってからだ。学校という一つの社会に放り込まれたことで、僕らにはそれぞれ社会的な立場というものが形成された。

一言で表すと、翔華はクラスの人気者だった。外向的で、人当たりが良く、優しくて頼りがいがある女の子。それが翔華の性格そのものだったのか、何か別の内面を取り繕った結果だったのかは判らないが、どちらにせよ、翔華が選んだのはそういう生き方だった。

 一方の僕はどうか。自分で解説するのも切ないが、僕は存在感の薄い子供だった。休み時間の度に席で本を読んでいたので、クラスメイトと話す機会も、一緒に遊ぶ機会も無い。そもそも他人と交流することが苦手だったので、交友関係を広げようという意思すら持っていなかった。

結局、小学校六年間で友達と言える存在は翔華以外に殆ど出来なかったが、その翔華とは相変わらず仲が良かった。小学校も、ついでに中学校も家から徒歩圏内だったので、毎朝玄関前で待ち合わせて一緒に登校した。そうだ。中学校の頃まで、僕らは確かに親しい仲だった。それが変わってしまったのは、高校に入ってから、つまり去年の……。

 そこまで回想したところで、背中越しに鋭い声が飛んで来た。

「違うぞ悠人。関係が変わったのは高校入試からだろ」

 まるで正解を知っているかのような影の言葉が癇に障り、僕はつい鼻で笑ってしまった。

「何を言っているんだ。高校入試は僕も翔華も同じところを受けて、合格した。受験会場に行く時だって二人一緒だったよ」

「だがお前、志望校のレベルを下げただろ。翔華に合わせて……それを知ってからの翔華の態度を忘れたのか」

「志望校……?」

 確かに、僕は模試の判定を無視して翔華が受ける県立高校を第一志望にした。進学先に対して何の拘りも無かった僕にとって、「翔華と通える」ということが大きな魅力だったからだ。

 言われてみると、受験直前の頃の翔華は、態度が微妙によそよそしかったような気もする。少なくとも、僕の無意識に居座る影の男はその違和感を認識しているようだ。しかし。

「模試の判定について、僕が翔華に話したことは無い筈だ。志望校のレベルを下げたことなんて、翔華には判らないよ」

 僕の疑問を耳に入れた途端、影の男はこちらに聴こえるくらい大きく舌打ちをした。初めからそうだが、こいつは僕の心が生んだと思えない程に気が大きくて柄が悪い。

「自分の影に向かって謙虚ぶってるんじゃねえよ。お前の中学時代の成績は何番だ」

「……上から、十番目くらい」

「翔華は平均ちょい上くらいだった。県立高校は翔華が安定して合格できるくらいの高校だぞ。お前が志望校を下げたことなんざ、改めて口にする必要も無い」

 流石に僕の影、適当な誤魔化しは通用しない。確かに、僕が志望校を翔華に合わせたのは明らかで、翔華の様子がその時期に変になったのだとすると、その原因が僕にある可能性は高い。

「僕が翔華を追いかけて高校を選んだから、翔華に距離を置かれた……そう言いたいのか」

「俺は何も言ってない。ただ、お前の間違いを訂正しただけだ。……考えを邪魔して悪かったな。次は高校入学以降だ。日没は近いぞ」

 影男の言葉につられて西の空へ目を向けると、太陽は端の端、沈む間際の位置で踏ん張っているところだった。空の色が赤から紫へとグラデーションを作っている。日没までしかここに居ないと言った以上、早めに話を切り上げなくてはならない。

 高校に入って何が変わったかというと、まず翔華が以前に増して外向的になった。より明るく、より陽気に。高校に入ったばかりで何かと不安な新入生達にとって、気軽に話しかけてくれる翔華の存在は有難かったことだろう。僕は単に、新しい環境でテンションが上がっているのかな、なんて考えていたが、実際には、翔華の性格の変化は決して一過性のものでは無かった。

瞬く間にクラス内で人望を集めた翔華は、勢いそのままに今度は他クラスへと手を広げた。休み時間毎に他クラスへ遊びに行っていた翔華の背中を、よく憶えている。この頃からだ。学校内で翔華と話す機会が、みるみる減っていったのは。それでもまだ僕は暢気に構えていた。翔華が居なくなる未来なんて、想像したことも無かったからだ。

 高校入学から二ヶ月、翔華はなんと生徒会役員の選挙に立候補した。翔華と登下校を共にしているにも関わらず、僕がそのことを知ったのは立候補の後。寝耳に水とはこういうものかと思い知った。「どうして僕に黙って」と抗議しかけたが、どうして翔華が僕に自分の行動予定を逐一報告しなければいけないのかというと、そんな理由はどこにもなかった。僕は自分の身勝手な不満を喉の奥に仕舞い込んだ、

通常二年生以上が務める役員職を、翔華は一年票を独占することで見事に勝ち取った。多分、翔華は初めから生徒会に入りたかったのだろう。当然、僕は翔華の当選をお祝いした。正確には、当選確実をお祝いした。候補者である翔華は、正式な当選者が発表される前日の時点で、既に開票結果を知らされていたのだ。その日の帰り道、僕は翔華に出来たてほやほやの当選情報を聞かせられた。

「おめでとう。一年で生徒会役員に当選するの、相当珍しいことだって聞いたよ」

「有難う! たくさんの友達が応援してくれたから……結果が出たら、悠君に真っ先に伝えたかったんだ」

 そう言って、翔華は嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑った。そこまでははっきりと憶えている。その後……翔華の笑顔を見て、僕が何を感じたのだったか。そこだけ記憶に靄がかかったようになって、思い出せない。

「ぶはは!」

 影の男が笑った。

 生徒会に通うようになって、翔華は一気に多忙になった。朝は早くから登校して、放課後も遅くまで生徒会室で仕事をするので、僕と翔華が会えるのは休み時間の間だけ。どうせ予定があるわけでもなし、放課後くらい翔華の帰りを待とうかとも考えたのだが、「どうして待ってくれるの?」と訊かれた時の答えが思い浮かばなくて、結局一人で帰るのが習慣になってしまう。

 翔華と会う機会がさらに減ったことについて、寂しいのは間違いなかったが、それを口に出すことはしなかった。ちょっと驚く程多い生徒会の仕事を一手に引き受け毎日忙しそうな翔華の姿が、とても充実したものであるように見えたからだ。

 夏休みになったら、翔華と遊ぶ機会も出来るものと思っていた。一学期の終わる間際に、翔華に夏休みの予定を聞いた時になって、僕は生徒会の激務が夏休みにまで及んでいることを知った。秋の文化祭に向けて、実行委員や各団体の代表と会議の連続らしい。まるで会社勤めのサラリーマンのような話で、「忙しいけど楽しいよ」なんて言ってくる翔華に向かって、「そんなことよりどこかへ遊びに行かない?」とは言えなかった。つくづく僕は押しの弱い人間だと思う。

「結局、一人で寂しく夏休みってわけだ」

 影の男がまた笑った。宿主の不幸がそんなに面白いのだろうか。面白いのだろう、こいつは僕の「影」なのだから。

「実感させられたよ。僕に翔華以外の友達なんか居なかった。中学でも高校でも、僕は友達を作ろうと努力したことが無かったんだ」

 惨めだった。家から出る用事すら見つけられずに、僕は部屋に引き籠もって過ごした。僕がベッドに寝転んでゲームをしている間にも、翔華は生徒会でみんなのために働いている。その事実が常に僕を追い詰め、焦らせる。こんなざまは翔華には見せられない。

 結局僕は二学期になって、友達と呼べる人間を捕まえるべく重い腰を上げた。独りで居る僕の姿を、翔華に見せたくなかったから。この動機はかなり自意識過剰なものだったように思うが、尻に火をつけられたことで、僕は自分からクラスメイトに話しかけるようになった。

 その年が終わる頃には、休み時間に話すくらいの友人は出来た。相変わらず登下校や休日は独りだったが、それで良かったのだ。翔華の見ていないところでまでクラスメイトと会う必要は無いと思っていたし、実のところ会いたくなかった。二学期を通して改めて学んだのは、結局僕は人付き合いというものが致命的なまでに苦手なのだということ。新しく出来た友達と交わすくだらない雑談は、僕にとって苦行同然の行為だったのだ。それが友達と言えるのだろうか? 言えないだろうが、そんなことは些細な問題に過ぎない。

 冬休みに入ったが、僕が翔華を遊びに誘うことは無くなっていた。翔華には、僕が四六時中暇を持て余していると知られたくない。これは僕の見栄であり、意地だ。家にずっと居る僕を、向かいに住む翔華に見られているような気がして、毎日のように意味もなく外出した。まったく馬鹿な話だ、翔華は生徒会の仕事で学校に行っているというのに。

 三学期が過ぎ、二年生になっても、僕と翔華は離れ離れのままだった。周囲と築いた人間関係を保つために、僕は相変わらずクラスメイトとしたくもないお喋りをしている。翔華も翔華で、生徒会選挙の管理がどうこうで忙しそうだった。

 翔華とろくに会えない日々が続く中で、僕は自分の行動の目的を見失いかけていた。何のために友達を作ろうとしていたのだったっけ? それは惨めな自分を翔華に見せないことで、見栄を張るためで……でも、その翔華は僕の方を見向きもしていない。このままでは、翔華が僕の手の届かない遠くへ行ってしまう。嫌だ。独りになりたくない。

 うだうだと悩み続け、かといってそれを解決するために何か行動するでもなく、ただ惰性のように学校へ通っていたある日、職員室前の廊下を歩いていた僕の目に、壁に貼られた一枚のポスターが留まった。可愛らしいイラストが散りばめられたそれには、手書きの文字で「文化祭実行委員募集中!」と書かれてある。

 僕はそのポスターから目が離せなくなった。曰く、毎年六月になると、生徒会役員を含む各委員会の募集が行われる。生徒会役員は選挙で決まるが、文化祭実行委員を含む他の委員は手を挙げれば誰でもなれる職とのことだった。

翔華は一年の夏休み、文化祭準備のために実行委員と会議を重ねていた。ということは、実行委員になれば翔華と頻繁に会えるというわけだ。これぞ天啓。居ても経ってもいられなくなった僕は、そのまま職員室の扉をくぐり、即座に文化祭実行委員に名乗りを上げた。

実行委員になったことは、翔華には内緒にしていた。七月に第一回の会議があるので、そこで会って驚かせたかった、というのはあくまで理由の一つ。最も大きな理由は、この頃になると翔華と二人きりで話す機会が全く無かったということだ。既に僕は翔華の周りに居る友人Dくらいの立場にあったので、個人的な話をしようにも、机に手紙を入れでもしなければ不可能だった。

「だが、実行委員という大義名分があれば、もう一度翔華に近付ける。そう思ったんだろ」

 影の男が口を挟んだ。これも自分の独り言の内だと思うと、一々突っかかる気にもならない。

「勿論そう思ったよ。実際、最初の会議の場に翔華は来たんだ。二十人くらい居る実行委員の中から、すぐに僕を見つけてくれた。目が合った時の驚きようったら無かったな」

 口に出した言葉には、自然と笑いが混じった。思い出を懐かしんだわけではない。あの驚いた翔華の顔から、嬉しさが滲み出ているように見えてしまった自分の都合の良さや勝手さ、そして愚かさへ向けた嘲笑だ。

 会議が終わった後、僕らは久々に帰り道を二人並んで歩いた。僕の隣に翔華が居る、実に一年振りの光景。その日の気温は暑過ぎず寒過ぎず、散歩日和と言って差し支えない快適さで、もう少し時間が早ければ、僕は翔華にどこか寄り道をしていかないか誘っていたところだっただろう。

心地よい外気と隣を歩く翔華に浮かれた僕は、これまでの分を取り返すように何でも無いような雑談を持ちかけた。けれど翔華の返事は「へえ」とか「そうなんだ」といったもので、なかなか会話が続かない。

住宅地に差し掛かり、道が少し狭くなった。つられて歩道も狭くなったので、二人並んで歩くにはやや窮屈だ。自然と、僕は翔華の斜め後ろを歩くような形になった。こうなると、僕からはいよいよ翔華の表情が読めない。

上の空のような様子の翔華を流石に不審に感じ始めたところで、翔華が急に「ねえ」と声をかけてきた。ねえも何も、僕は初めから翔華の傍を歩いているのだけれど、それを今指摘して混ぜっ返す程、僕は空気の読めない人間ではない。

「一つ訊いても良いかな、悠君」

 振り返った翔華の表情が、深刻そのものだったのだ。

 翔華と僕はほぼ同時に足を止めた。二人の脇を、乗用車が排気音を立てて通り過ぎていく。

「何かな……何でも訊いてよ」

 平静を装ってそう言ってはみたものの、次にどんな恐ろしいことを問い質されるのか不安で仕方が無い。僕が、いや、僕らが今、何か重要な岐路に立たされているということは漠然と判った。

 翔華は一度深く呼吸をしてから、僕にこう問い掛けた。

「悠君は、なんで実行委員になろうと思ったの?」

 口調は真剣だが落ち着いていて、僕を責めるような感じはしない。この質問を聞いて、僕は内心で胸を撫で下ろしていた。実行委員になった理由を翔華に訊かれるのは勿論想定の範囲内で、委員になった時点で既に答えを用意していたからだ。翔華に訊かれずとも、いずれ説明しなければならないと思っていた。

「去年からずっと、翔華が頑張っていたのを見ていたから……僕も何か、手伝えないかと思ってさ。文化祭の間までだけでも、色々頼ってくれれば嬉しいかな」

 正直に、翔華とまた仲良くなりたかったからとは言えない。それでも、僕が翔華に言ったことは本心からそう遠いものでもなかっただろう。つまり僕はここでもまた、見栄を張ったことになる。

「そっか。そうなんだ……ふふっ、変わらないんだね、悠君は」

 翔華は……翔華は、笑った。僕の答えを聞いて、まさに華が咲くように。クラスメイトとお喋りする時とも、生徒会役員として皆の前に立つ時とも違う、中学以前の翔華そのままの笑顔だ。やっと僕の存在が翔華に認められたような気がして、思わず頬が緩む。翔華の問いに、正しく答えられたという実感があった。

 そうして、僕らはまた歩き出した。さっきの質問で何かつかえていたものが取れたのか、翔華は雑談に気軽に乗ってくれるようになった。ずっと教室以外では会えていなかったのだ、積もる話の無い筈が無い。家に着くまでに残された十分間、僕らは悩みなんて全て忘れてしまったかのように、ただ笑って過ごした。世界に僕ら二人だけ。かつて、そうであったように。

 別れ際、僕は久しぶりに翔華を遊びに誘った。夏休みに入ってからは、会議の無い日なら僕はいつでも空いている。そう伝えた。翔華の方は予定の有無がまだ決まらないとのことで、この件については決まったらまた話し合おうということになった。

「幸せだったか。あの日、翔華と歩いて」

 ぽつりと、独り言を零すように影の男が僕に問うた。その質問には勿論意味が無い。影の男は僕の心を識っている。僕はあの時確かに幸せ、だったのだ。

 第二回の会議は、一学期の期末試験が終わって何日も経たない内に開かれた。僕ら実行委員が先に教室で集合し、人数確認が終わった頃に、数名の生徒会役員が入室する。前回と同じ流れだ。ただ一点、やってきた生徒会役員の中に、翔華の姿が無かったことを除いては。

 別に、それ自体が大きな問題なわけではない。翔華が何かの事情で来られなくなったのかもしれないし、会議に出席する生徒会役員がそもそも固定でない可能性も十分にある。しかし、「翔華が居ない」という事実を認識した途端、扇風機しか回っていない夏の教室が、急に冷え込んだように感じられた。喉元をせり上がるように、つい先日翔華と交わした会話が思い出される。僕は、翔華の問いに本当に正しく答えられていたのだろうか。

 不安と焦りばかりが積もって、その日の話し合いの内容はよく耳に入ってこなかった。解散後すぐ、下駄箱で翔華の靴を探したが、とっくの昔に下校しているようだった。他の役員に翔華が帰った理由を訊くことも考えたが、翔華との関係性を探られるのは嫌だ。結局その日は何もせずに家に帰った。

 今になって思うと、最後に隣を歩いたあの帰り道、やはりどこかへ寄り道をしておくんだった。あの幸福な時間は、僕と翔華の新たな始まりだと思っていた。まさか、あれで終わりになるだなんて。

「続けてくれ、悠人」

「ああ」

 言われずとも、ここまでくればあと少しだ。何せ、第二回の会議があったのは、つい昨日のことなのだから。

会議の翌日、つまり今日の朝。僕はどうしても翔華に欠席の理由を聞きたくて、クラスの誰よりも早く登校した。昨日の内に書いてきた手紙を、便箋のままで翔華の机の中に押し込む。内容は、「昨日会議に来なかったけど、何かあったの?」というものだ。我ながら、ストーカーっぽい行動だと思う。

 翔華はいつも通り登校して来た。手紙を見たのかどうかは確認出来ていない。手紙を忍ばせたことに何となく後ろめたさを感じてしまい、僕は翔華の方を見ることが出来なかったのだ。

 昼休みになるまで、翔華が僕に話しかけてくることは無かった。もしやと思い一度教室を離れる。暫くして席に戻ると、机の中にノートの切れ端が入れられていた。翔華からの返信だ。

「放課後、第二視聴覚室に来てください。鍵は開けておきます」

 切れ端には、見間違いようのない翔華の文字でそう書かれてあった。手紙では話せない内容なのか、切れ端に収まらない程の長い話なのか。とりあえず、僕に出来ることは言う通りの場所に放課後向かうことだった。第二視聴覚室とは、昨日も実行委員の会議があった教室の名前だ。

 そして放課後。翔華はすぐに教室を出ていってしまったので、僕は少し待ってから席を立った。向かうは第二視聴覚室。

 手紙にあった通り、扉の鍵は閉まっていなかった。引き戸を開ける。中では、翔華が教室の真ん中に立って僕を待っていた。昨日の会議の際は机と椅子が並べられていたが、今は片付けられていて、第二視聴覚室はカーペットだけが敷かれた広い空間となっている。

「来てくれて有難う、悠君……あ、そこの鍵は締めてね」

「了解。……まあ、手紙を貰ったからね。何か用?」

 後ろ手に扉を閉め、鍵を掛けた。ゆっくりと翔華の前へと歩み寄る。ここへ来てまだ、僕は自分の動揺を押し殺して外へ出さないよう努めていた。

「ちょっと、お話したいことがあって」

 翔華が苦笑いを浮かべる。また少し嫌な予感が高まった。

 暫くの間、翔華は黙ったまま自分の手を見つめたり、右手で左手を握ったりしていた。僕はじっと待つ。どの道、僕に翔華の言葉を待つ以外の選択肢は無い。

 翔華の手が解かれる。開かれたその手のひらから、まるで何かが翔んでいってしまったかのように感じたのは、その時の翔華が悲痛な程に寂しげな顔をしていたからだろう。

「急にごめんね。私、文化祭担当から外れることになったの」

 それは……想像の範囲内だ。いや、折角翔華と一緒に居るために実行委員になったのに、当の翔華が居ないのではお笑いも良いところなのだが、僕はそれくらいの事実ならなんとか飲み込める状態にあった。それくらい、今日この状況と翔華の様子が異常であったということだ。

 ここで問題にするべきは、何故翔華が文化祭担当から外れたか、だ。どうも平和な理由とは考えにくい。

 身構える僕に対し、翔華が放ってきた次の一言はあまりにも真っ直ぐ、避けようもなく僕を突き刺してきた。

「ようやく解ったんだ。私やっぱり、悠君と一緒には居られない。私たち、別々に生きていかなきゃいけないの。だから、文化祭の会議でも、教室でも、通学路でも、悠君と仲良くするのはこれで終わりにしたい」

 翔華が告げたのは、唐突な別れの言葉だった。

 僕もまさか、ここで翔華に別れを切り出されるとは全く予想していなかった。別に自惚れていたわけじゃない。だってそうじゃないか。僕と翔華は付き合ってもいないんだぞ!

「何の……話?」

 だから、僕の口から出てきた言葉は随分と情けないものになってしまった。口許が引き攣っていたりなんかしていたことだろう。

「私、ずっと悠君のこと見てたんだよ。悠君が私と離れてからも……悠君、この前まではあんなに友達と仲良く遊んでいたじゃない。実行委員の会議はともかく、他の日は友達と遊びに行かなくて良いの? どうしてずっと予定が空いているの?」

 ここで僕は初めて自分の失態に気付いた。先日の帰り道、僕はうっかり翔華に「夏休み中、会議の日以外はずっと空いている」と言ってしまったのだ。

この一年で築いた友人関係が本当はからっぽで、休日に遊ぶ相手なんか誰も居ない、それを僕は自分から翔華に教えた。教室での僕の様子を見た時点から、その辺りは薄々勘付いていたのかもしれない。何にせよ、翔華の問いは答えるには痛過ぎる。結局、僕は何も言えぬままにとどめを刺される形となった。

「悠君が実行委員になったのって、私のためなんでしょ」

勝ち負けの話では無いけれど、これは明らかに僕の負けだ。翔華に、完全に見透かされてしまっていた。

僕はあの日、翔華の問いにどう答えたのだったか。実行委員になって、頑張る翔華の助けになりたい? 自分の言葉のおぞましさに反吐が出る。実際の僕は、翔華へ再び近付くチャンスに縋り付いた、まるで蜘蛛の糸を手繰るカンダタだったというのに。僕の欺瞞を知った翔華は、どう思っただろう。

どうもこうもない、その結果が今じゃないか。

「悠人君。これは私の我が儘です。私たち、お別れしましょう」

とどのつまり、絶交宣言だ。

僕は弁解も挽回も出来ぬままに敗走した。正確には、「そうだね、そうしよう、残念だけど」辺りのことを口の中でもごもごと唸った後、半分体を引き摺るようにして第二視聴覚室を後にした。這々の体とは、その時の僕のざまを言う。

お別れしましょう。お別れ。翔華と、お別れ。文化祭の担当を下りてまで僕と会う機会を避けたんだ、きっと教室でも話せなくなるに違いない。僕は出口の無い絶望的な思考を頭の中で巡らせながら、ふらふらと廊下を歩き出した。

視界が滲む。涙だけのせいではないだろう。こんなにも、世界が蕩け出してしまったかのように歪むのだから。壁が曲がる、窓がたわむ。そして僕の影も。

影? おかしいぞ、影だって。

いよいよこれは変なことになってきた。僕の影が、僕とは違うように動いている。僕はそんな風に肩を竦めていないし、歩きながら足を組むなんて真似出来る筈が無い。

僕は突然現れた異物の存在に慄然として、その場に立ち止まってしまった。影も、床と壁に張り付いたまま止まった。そして、そこから聴こえる声。

「よう、悠人。早速で悪いが、勢い余ってここで死ぬんじゃねえぞ。この階の窓はみんな開いてるんだからな」

「よし、これで全部だな。なかなかよく覚えているじゃねえか……後は、信じられないって面しながら学校を逃げ出て、通学路と真逆の公園でノックアウトってわけだ。回想、終了」

 影の男のそんな言葉を聞いて、僕の意識は現実に引き戻される。振り返って影へと目を向けるが、僕の分身がどんな姿勢で僕を嗤っているのか、はっきりとは判らなかった。過去を辿っている内に日が沈み切り、とっくに夜になってしまっていたからだ。辛うじて街灯の光が影を生んでいるが、輪郭がぼやけてしまっていて、もはや人型にも見えない。だが、声は未だ明瞭に聴こえてくる。

「さあ悠人。もう夜になっちまったが、そんなことどうでも良いよな。ここからが本題、もとい問題だ。さっきまでは考えようともしていなかったみたいだが、今ならきっと解る。さあ、答えを出してくれ。『どうして翔華は悠人にお別れを告げたのでしょう?』」

 その問いは概ね、影の男が初めにしたものと同じだった。振られて傷心の人間に掛ける言葉としては最低の類だ。僕はさっき、そんな問題の答えは判り切っていると切り捨てた。

「……それは、僕が翔華に頼り切っていると、翔華にばれてしまったから。人付き合いからは逃げ、翔華だけが居れば良いって高校にまで付いて行って、そのくせ惨めな自分を見せたくなくて見栄を張った。挙句の果てには、翔華と仲良くなりたいなんて不純な理由で実行委員に……そこでも、僕は嘘をついたんだ。ここまでやって、『どうして振られたんだ!』と本気で言う奴が居たとすれば、そいつは本物の馬鹿だよ」

 僕は、自分のしでかしたことをまるで他人事のように語ってみせた。昔から遡って考え直した効果なのか、すらすらと僕がいかに駄目な人間であるか説明出来てしまったのが切ない。

 僕の答えは出した。だというのに、影は黙ったままだ。ひょっとすると、僕が質問に答えたことで、影の男も消えてくれたのだろうか。

「そんなわけ、ねえだろ」

 吐き捨てるような、影の男の声。今の発言は、どちらを指して言ったものだったのだろう。どっちもか。

 また黙り込んでしまった影の男を背に、僕は頭を掻いた。ああ、まただ。また僕は本心に嘘をついて、それで相手の求めた答えを出したつもりになっていた。自分の過ちを自分の影に諌められるというのは、随分きまりが悪い。

「そうだな。そんなわけない。気が動転していたさっきまでならともかく、こうも丁寧に話を組み立て直されたんだ。僕が最初に出した結論が間違いだなんて、すぐに判るさ。他でも無い、僕なら」

「自意識過剰だ」

「かもね。でも、僕が一体何年翔華と一緒に過ごしてきたと思う? 翔華は優しい。でも今回の翔華はちょっと優し過ぎる。僕を気持ち悪いストーカーだと暴いたのなら、もっと感情を昂らせて良い筈じゃないか。罵ったり、泣いたり……。翔華の様子が変だったことに、僕はもっと早く気付くべきだった」

「怒らないのがおかしいのは、誰だろうと同じだろ。そういうところが自意識過剰だっていうんだよ」

 今日会った時、翔華はずっと寂しげな様子だった。僕との別れを惜しんでいるかのように、だ。翔華は、「悠君とは一緒に居られない」「別々に生きていかなきゃいけない」と言った。これは翔華に依存する僕を突き放す言葉に思えるが、一方で翔華が僕と一緒に居たいのを我慢するような表現とも取れる。勿論これだけでは、別れたくない男による都合の良い解釈に過ぎない。これだけなら。

「悠人は、冬休みに翔華を遊びに誘わなかったな。それまでずっと休みの度に予定を訊いていたのに、あの時に限って、見栄を張った。頻繁に外出する振りをしてまで、友人と遊びに行っているように見せかけた」

「でも、翔華は毎日のように生徒会へ行っていた筈だよ。外出する僕を見ることは出来ない」

「ああ、そうだな。もし翔華が本当に――」

 本当に、生徒会に行っていたのならば。

 影の男と思考が噛み合ってきた。こいつが元から全て知っていて僕の思考を誘導したのだとすると、僕自身この推理を頭のどこかで組み立てていたということになる。たださっきまでの僕は、惚けたままでろくに考えようともしていなかったのだ。

 翔華はこう言った。ずっと悠君のこと見てたんだよ、と。考えてみればこれは噴飯ものだ。生徒会の激務に追われていた翔華が僕を見ていられた時間は、せいぜい授業の合間の休み時間程度の筈なのだから。

 だが実際はどうだろう。文化祭実行委員になって判ったことだが、会議というのはそう毎日あるものではない。だからこそ僕は会議の無い日に翔華を遊びに誘ったし、翔華も予定の有無が決まらないとは言ったが、完全に予定が埋まっているとまでは言わなかったのだ。つまり、夏休みの時点で、翔華の話していた「毎日会議で働き詰め」というのは、少々無理のある話となる。

「順調、順調。じゃあ、もし翔華が夏休みや冬休みに、意外と家に居たんだとしたら?」

「……夏休みの僕は家に引き籠もりっぱなし。冬は対照的に、毎日のように外に出かけてた。夏から冬にかけて、急に友達が出来たと思うだろうね」

 まあ、本当はただの散歩だったのだけれど。

 ところで、この推測には非常に危うい点がある。僕の外出を知るためには、翔華が窓から向かいの僕の家を監視し続けなければならないということだ。通常これは有り得ない。だがしかし。

『私、ずっと悠君のことを見てたんだよ』

 翔華の声が頭の中でこだまする。

 本当に、「ずっと見ていた」のだとしたら。

 背筋に寒さを感じ、思わず周囲を見渡した。夜の公園に人の気配は無い。

「居ねえよ。翔華はここに居ない。なにせお別れしたんだからな」

 影の男がそう言うので、一先ず安心しておこう。

 翔華がずっと僕のことを見ていて、さらに僕が翔華に依存している駄目人間だと気付かなかった。なんと都合の良い話だろうか。しかし、この方が自然なのだ。翔華の寂しげな言動も、夏休みの予定を水増ししたことも、あの帰り道に浮かべた笑顔も、翔華が僕に依存していたと考えた方が、ずっとうまく説明出来る。

「悠人はいつも、自分の視点からしか物事を捉えられていなかった。悪い癖だ。高校受験のこと、翔華の目線で考えてみろよ。幼馴染が、志望校を成績の低い自分に合わせたんだぞ。普通そんなことをされたらどう思う。翔華ならどう思うか、考えてみろよ」

 かつての僕を憎むが故にか、影の男の語気が強くなっていく。

 どう思うかだって。そりゃ、「申し訳ない」って思うさ。自分のせいで相手の将来の可能性を狭めたのかもしれないって、僕だったら滅茶苦茶に自分を責めるだろう。翔華だって、きっとそう考えただろう。

「翔華は、自分の存在が僕の足枷になっていると思ったんだろうね。だから受験の時から少しずつ、僕と距離を取った。他クラスにまで友達を作って、生徒会に入って自分から忙しくなって、僕との繋がりを絶とうとした!」

 気付けば、僕も少しばかり声を荒げてしまっている。近隣住民にこんな独り言を聞かれでもしたら様々な意味でまずい。一度深呼吸をして、心を鎮めるように努めた。

「翔華が離れたことで、悠人は面白いくらい孤立した。だが悠人は、二学期になるとみるみる内に多数の友人を作った……それが苦行だったことは、翔華には伝わらなかったようだな」

 翔華が離れたことで、僕に友人が出来た。翔華はこのことで自分の仮説を立証した気になったことだろう。自分が居ない方が、この幼馴染の人生はうまくいくのだと。

「ところが、次の年の夏になって悠人は翔華のもとに戻ってきた。友人と遊びに行く予定を全部潰して、翔華と一緒に居ることを選んだ……ように見えた」

 ように見えた、まったくこれに尽きる。今進めている説において、翔華が見たとしている僕の姿はその殆どが虚構だ。

思えば、やはりあの帰り道での問答は決定的だった。翔華はこう訊いた、「なんで実行委員になろうと思ったの」と。僕はこう答えた、「翔華が頑張っていたのを見ていたから、僕も何か、手伝えないかと思って」と。あまりにも……あまりにも間の悪い、完璧な回答だ。翔華はこれで、僕が翔華を助けるためにやってきたと、完全に信じてしまったのだろう。

ここまで来れば、今日の翔華の言動にも説明が付く。要は僕との決別だ。私のために自分を犠牲にするのはやめて、お互い別々に生きましょうと、そういうお話だった。

そして僕と翔華は、無事に離れ離れとなった。

「もう良いだろう、悠人。十分にことの顛末が理解出来た筈だ。次に考えるべきなのは、明日翔華に何をどう話すかってことだぜ」

「……翔華に?」

 ここまで殆ど一致していた影との思考が、ここへ来て再び食い違い始めるのを感じた。僕は明日翔華に会って話そう等と、考えてもいなかったからだ。

「何を不思議そうにしていやがる。翔華の想像は完全なる勘違いだったんだぞ。訂正してやれよ。自分はそんなに偉い人間じゃなくて、ただ翔華と一緒に居たかったんだって、そう言えば良い。ああ、悠人に考えさせる筈が、俺が言っちまったじゃねえか」

 影の男はまた大きな舌打ちをした。僕は影の言葉に何も答えず、ベンチから腰を上げる。冷えた体を何度か揺さぶってから、ゆっくり公園を歩き始めた。

 これで、影の男が泡を食って慌てたのだから面白い。

「どうした、悠人! まだ話は終わっていないぞ。翔華に今まで嘘ついて見栄張ってたのをばらすのかばらさないのか、実行委員の仕事をどうするのか……問題は山積みだ!」

 僕は影に背を向けて歩きながら、首をゆっくりと横に振った。靴が砂場の砂を踏んで、足に柔らかな感触を伝えてくる。

「僕らが導き出したのは、単なる一つの仮説に過ぎない。僕が単に嫌われたって可能性も、勿論ある」

「そんな馬鹿な! 翔華が笑った理由はどうやって説明付けるんだ! 夏休みの、生徒会の仕事量を偽ったのは!」

「僕の嘘があからさま過ぎて失笑したのかもしれない。生徒会が激務だと嘘をついたのは……ただ単に、僕と会いたくなかったからだ」

「そんなに疑うんなら確かめりゃ良い。かまを掛けるでも何でもして、翔華の本心を引き摺り出せよ!」

 影の男の声から、どんどんと余裕が無くなっていく。影が僕の分身であるのならばある意味不思議なことだが、影が激昂すればするほど僕の頭が冷えていくのを感じる。或いは、自分の内側の焦りや怒りが、全て影の男という形で現れているのだろうか。

 だとすれば、今の僕は結局のところ、狂った「人でなし」なのではないだろうか?

 ……かまうものか。ここまで来たんじゃないか。太陽はとうに沈んだ。これから始まる長い夜に、僕はもう頭の先まで包み込まれてしまっている。

 だから、この優しい人型の暗がりには、そろそろご退場願わなくては。

「やっと解ったよ。今のお前の態度で」

「何がだ!」

「何がも何も……僕がずっと受け入れて、放っておいていると思ったのか。お前という、存在を」

 僕は肩越しに、影が伸びているであろう辺りを指差した。

 影、影の男。超常的な存在にして、僕の心の「ひずみ」。僕の内側から飛び出てきた怪物。こいつが一体何者であるのか、僕はずっと考えていた。「お前は誰だ」という問いに、影の男は答えない。これは、僕が回答を導き出す必要のある問題だ。結局、僕はここでも不安定な仮説を立てることしかできなかったが。

「最初に影が動くのを見た時、それを僕は自分の狂気だと思った。でも微妙に違う。確かに影が動くのは僕がおかしくなってしまったからだろうけれど、影の言葉に狂気は含まれていなかった。むしろ、憔悴しきった僕よりもずっと冷静で、理性的だったとすら言える」

 影の男が急に黙った。その無言の意味を推し量ることは出来ないので、僕はそのまま話し続ける。

「次に僕は、お前を僕の本音そのものだと仮定した。傍若無人な振る舞いで、歯に衣着せぬ物言いで、僕の本心を見抜くからだ。まさに僕の隠された『影』……でも、これもちょっと違った。本音にしては僕に対して挑戦的過ぎる。お前がさっき言ったことは、僕の本心からずれていたしね」

「それは……悠人がそう思い込んでいるだけだ。悠人は本音では翔華と一緒に――」

「『一緒に居たい』!」

 ようやく口を開いた影の男は、割り込んできた僕の言葉によって再びその口を閉ざした。

 もう影の言葉は僕に通じない。影の男という存在は、今やほとんど僕自身から切り離されつつある。

「 一緒に居たい……それなんじゃないか。それこそがお前の本質……つまり、お前は僕の、何かを『したい』という想いそのものなんじゃないか。だから僕に指図するし、僕に無いものをお前は持っている。僕がそうありたいと思っている存在……お前は、僕の理想なんだ。違うか 」

 僕は自意識過剰で、人と話すのが苦手。すぐに見栄を張るけれど、その実翔華に依存している。そこへ来て影の男はどうだ。自意識過剰な僕を諌め、自分から喋りたい放題に喋って、自分を飾らない。おまけに、翔華が僕に依存しているなんて説へ僕を誘導してきた。まさに僕に都合の良い存在にして、僕の理想じゃないか……大いに極端ではあるが。

 僕の推測を聞いて、影は再び口を開く。しかしその声音は弱々しく、掠れ、既に力を失っていた。

「違う。俺は……俺は影だ。何者でもない。悠人、お前にへばりつく幽霊みたいなものじゃないか。俺がお前の理想だって。笑わせるな」

 影は本当に笑っているようだった。温かな潤いをあらん限り絞り尽くした後の、萎れきった笑いだ。

「俺の惨めさがお前に判るか。俺はずっとお前の足元を離れられない。なあ悠人、お前は空を翔びたいとは思わないのか。俺には空を翔ぶどころか、何一つ自由に出来ることなんてない。それがお前の望みか。理想なのか」

 影がここまで自らの想いを吐露するのはこれが初めてだ。やはり、影には影の意識がある。僕の心が生み出した作り物であったとしても、母親の胎内で子が心臓を脈動させるように、影の男は自らの中に血を巡らせているのだ。

 それにしても、と、僕は余計なことを考えてしまう。何故影はここまで自分を貶めるのだろう。ひょっとして、それが自意識過剰な僕の裏返しだということなのだろうか。だとすると、我ながら理想像が極端過ぎる。つい、影の男に背を向けたまま笑みを浮かべてしまった。

「そうだな。僕は翔びたくなんかない。お前はやっぱり僕の理想だ。お前は立派な影だが、なんなら僕だってずっと影だったんだから。翔華の背中に隠れる影……ずっと、翔華にくっついて生きてきたんだ」

 もし僕がどこかの瞬間で、自分の羽で空を翔びたいと思ったとしたら、きっと翔華と別の高校に進学していたのだろう。翔華なんて関係なく友達を作ってみたり、或いは一人を選んだりして、それを自分の当たり前としていったことだろう。

「僕が翔ぶ……自分の力で何かしたいだなんて、思わなかったし、思う必要も無かった。だって、傍にいる翔華が代わりに翔んでくれる。翔華に付いていけば、友達なんて作らなくても、自分の将来を不安に思わなくても良い。だから僕は、影だ。翔ぶ鳥と形は同じでも……全然、翔べやしない」

 影に聞かせるつもりか、それとも独り言か、僕は砂場の上に立ったまま、そんな風に語ってしまっていた。

「本当は翔華も、僕に頼っていた部分があったんだろうね。それは少なくとも正しいと思う。お互いがお互いの影に隠れていたってわけだ。今日まではね」

「……これからは、違うって言いたいのか」

 影の声が、落ち着いたものに変わっていた。僕を誘惑する猫撫で声とも、苦痛と怒りに満ちた囁きとも違う。優しさは無いが、同時に悲嘆も意地の悪さも抜けきったその調子は、どこかため息にも似ている。

「さあ。これからどうなるかは解らない。ただ、これだけははっきりしている。一つに、僕と翔華がもしまた一緒になったら、今度こそ二人で潰れてしまうだろうってこと。翔華の判断は、多分正しいんだ」

 僕は両手を軽く上げると、自分の左手で右手を握った。強く、指先が白く変わる程に。そして離す。俯いた視線の先、足元の砂場の上には、子供たちが作っていった砂の城がまだ残っていた。夕陽に照らされて赤々と燃え上がっていた城壁や屋根は、夕方からの風に吹かれていたるところが崩れてしまっている。青黒い月光に曝され、まるで落城した要塞のようだ。

「そして、もう一つ。僕と翔華はね。もう、お別れしたんだよ」

 形を失いつつあるその城を、僕は力いっぱいに蹴り飛ばした。

 砂が大きく舞い上がったその瞬間、僕の背中から黒々とした何かが、大きく羽ばたいていった、ような気がした。

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ガチで「コナン」の犯人あてをしてみた https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2819/ https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2819/#comments Sat, 23 Mar 2019 11:16:17 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2819 こんにちは。wottoです。

さて、「名探偵コナン」といえば皆さまご存知のとおり今や国民的推理漫画、その数々の魅力的な事件や、「黒の組織」との対決、さらにそれを巡る複雑な人間関係で大人気を博しております。

そんな「コナン」ですが、皆さんはどのように楽しんでいますか?おそらくですがほとんどの人は、漫画にせよアニメにせよ、事件が起きて、コナンが解決して、真犯人が動機を述べて……というこの一連の流れをただボケーーっと見ているだけかと思います。実際私もそうです。むしろ黒の組織との対決とかのほうが好きです。ワンピースの世界情勢が好きみたいなアレです。

ですが、せっかくの推理漫画なんですから、一度くらいはガチで推理してみないともったいないと感じ、その推理の経過を今回の春季投稿大会の記事として投稿しようかと思います。

さて……真実はいつもひとつ!!!!!

【注意!!!】以下の文章は「名探偵コナン 10巻」収録、「西の名探偵、二人の推理、東の名探偵…?、東の名探偵現る!?」の完全なネタバレを含みます。ネタバレが嫌だという人、もしくは著作権法に厳しい方はブラウザバックをお願いします。

今回のおはなし

今回選んだのは「名探偵コナン 10巻」収録、「西の名探偵」~シリーズである。この話は工藤新一のライバル、服部平次が初登場する回だ。工藤新一を探しに毛利探偵事務所までやってきた服部平治と毛利小五郎、毛利蘭、そして江戸川コナンの4人は、依頼人である辻村公江の話を聞きに、彼女の家まで行くことになる。そこで夫の辻村勲のいる小さな書斎まで行ったところ、鍵がかかっている上返事がない。仕方なく辻村公江の持っていた合鍵で中に入ったところ、辻村勲は椅子に座って、机にほおずえをついていた。そこで寝ているものだと勘違いし近寄った辻村公江だが……彼の体を揺さぶった瞬間、彼は力なく床に倒れこんだ。彼はもう、死んでいたのだ。

被害者

被害者・・・辻村勲(54) 外交官

死体発見時刻:午後4時ごろ
発見された際、死体がまだ温かかったことや、死斑と死後硬直が全く見られなかったことを踏まえると、死亡推定時刻(犯行推定時刻)は午後3時半~4時。

死因:毒殺
髪の生え際に小さな赤い点が残っており、死体のそばに凶器らしき針が落ちていることから推定される。

死体の状況
書斎の椅子に座ったまま、ほおずえをついていた。さらに、本棚からゴソっと抜き出されたであろう本が机の上に高く(顔の近くまで)積み上げられていた。

特筆すべき点
書斎の鍵は2つあり、1つは妻の公江のもとに、1つは彼のズボンの2重ポケットの中に入っていた。さらに、書斎は内から鍵がかかっていた。
鍵のキーホルダーは2つに割れるタイプで、その間にセロハンテープと、その真ん中に細い一本の隙間があった。書斎のドアの下は隙間があいている。
さらに被害者はクラシック好きだが、なぜかオペラがかかっていた。

容疑者

①辻村公江 (50)
被害者の妻。書斎の鍵を開け、コナンたちとともに書斎に入った。死体に初めて触れた。
一時前から毛利探偵事務所に出かけており、事務所からはずっとコナンたちと共に行動していた。

②小池文雄 (48)
被害者宅の執事。3時から4時までの間、玄関先で近所の人とずっと話をしていた。後述する③と④が帰宅するタイミングで家に戻り、その際①が車で家に入ってくるのを確認した。

③辻村貴善 (27)
被害者の息子。④とともに行動する。帰宅したのち、被害者のいる書斎へ寄るが、鍵がかかっていたうえ返事もなかったので、すぐに降りて、その玄関で①とコナン達と出会う。

④ 桂木幸子 (24)
③の恋人。③と行動を共にする。

⑤ 辻村利光 (78)
被害者の父。2時過ぎに家を訪問。被害者がずっと書斎に引きこもっていたので隣の居間でTVを見ていた。①曰く、最近物忘れがひどい。

推理

まず③と④は犯人ではない。なぜなら「コナン」の時空における犯罪において複数犯の可能性は限りなく0だから(当社調べ)だからである。今回のケースにおいては何をどう頑張っても、お互いの眼を盗んで人を殺すことはできなさそうだ。

同様に②も犯人ではない。なぜなら死体の状況から3時半~4時までの間に被害者に毒針を刺さないといけないが、その間ずっと彼にはアリバイがある。

となると残るのは①か⑤である。①が犯人であると毒針を刺したタイミングはコナンたちと共に書斎に入っていったとき、つまりコナンたちの目の前で殺したことになる。非現実的と思われるかもしれないが、そもそも「コナン」時空においては眠りの小五郎が成立しているくらいなのだからそのくらい可能であろう。それまでは被害者はただ眠っていただけと推定される。つまり、出かける1時より前に夫に睡眠薬を飲ませ、ポーズを組ませ、ワイヤートラップでなんとかして密室の状況を作り出し、その後コナンたちとともに書斎に入り彼を本当に殺すのだ。可能性としては十分ありそうだ。オペラは被害者の死ぬ際の叫び声をかき消すためと考えられる。

⑤が犯人と考えることもできるが、方法としてはほとんど①と変わらない。ただ今度は本当に、3時半から4時の間に書斎に入り、毒針で殺し、その後ワイヤートラップで密室状況を作り出したと考えられる。

ところでこのワイヤートラップが何を示しているかというと、まあコナンの世界では我々の世界と違ってワイヤートラップが盛んなので、ワイヤーを使って書斎の外から書斎の扉の隙間を通して、被害者の二重ポケットの中に鍵を入れることくらい容易にできると想像される

ということでここまでしか推理が及ばなかったのだが、結論として犯人は①辻村公江と断定する。なぜ⑤辻村利光じゃないかって、ええと、それは、ううん。と、とにかく、辻村公江の動向について調べたら、毒薬、睡眠薬の入手ルートなどが確認されるはずである。なんならキッチンを調べれば出てくるんじゃあないか。むはは。完璧だ。真実はいつもひとつ!

結果

①でした。

結論

まあ詳しい話は買っていただけると分かるんですが、実は僕、途中からどこかで見たような気がしてきました。それもそのはずで、服部平次初登場回&工藤新一復活回なんてどこかで再収録、再放送されていて当然でした。

かといって犯人までは覚えていなくて、覚えていたのは「ワイヤートラップがなんか上手くいかなかったなあ」ってことくらいでした。上の推理では①⑤ともにワイヤートラップを使っているのでどっちが真犯人か分からなかったのですが、よくよく考えてみたら①は合鍵を持っているんだからワイヤートラップなんて使わなくても密室状況は作り出せるなあという感じです。勘違いって怖いね。

という訳でガチで「コナン」の犯人あてしてみた、個人的にはなかなか楽しかったです。次は完全に初見の謎に立ち向かっていけたらなあと思います。

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私的GPG逆引きリファレンス https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2793/ https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2793/#comments Sat, 23 Mar 2019 06:35:00 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2793 GPG鍵の作成・管理、GPG秘密鍵と紐付いたSSH公開鍵の作成、 gpg-agentの利用、GitでのGPG鍵の利用などを一覧する。

想定環境

$ uname -srvmo
Linux 5.0.0-arch1-1-ARCH #1 SMP PREEMPT Mon Mar 4 14:11:43 UTC 2019 x86_64 GNU/Linux

$ gpg --version
gpg (GnuPG) 2.2.13
libgcrypt 1.8.4
Copyright (C) 2019 Free Software Foundation, Inc.
License GPLv3+: GNU GPL version 3 or later <https://gnu.org/licenses/gpl.html>
This is free software: you are free to change and redistribute it.
There is NO WARRANTY, to the extent permitted by law.

Home: /home/anqou/.gnupg
Supported algorithms:
Pubkey: RSA, ELG, DSA, ECDH, ECDSA, EDDSA
Cipher: IDEA, 3DES, CAST5, BLOWFISH, AES, AES192, AES256, TWOFISH,
        CAMELLIA128, CAMELLIA192, CAMELLIA256
Hash: SHA1, RIPEMD160, SHA256, SHA384, SHA512, SHA224
Compression: Uncompressed, ZIP, ZLIB, BZIP2

master keyを作る

$ gpg --full-gen-keys

2048bitのRSA暗号で十分らしい[gnupg_faq-no_default_of_rsa4096]。 master keyの有効期限は無期限でいいらしい[hatsusato]gpg --gen-keys とすると無期限の設定ができない。作成中パスワードの入力を求められる画面でエントロピーがどうたらと書いてあるが、現環境では特に操作は必要なかった。 [joemphilips]には失効証明書を手動で作成する方法が書いてあるが、現環境では失効証明書は ~/.gnupg/openpgp-revocs.d/ 以下に保存されるので手動で作る必要はない。

実は暗号化用のsubkeyがここで勝手に作られるのだが、これには有効期限がついていない。仕方がないのでこれは後で削除して、別でsubkeyを作り直す。

以降 KEYID と書くとき、ここで生成したmaster keyや後で作成するsubkeyなどのkeyidを指定することを意味する。ハッシュ値(fingerprint)をそのまま書いても良いが、名前やメールの一部でも問題ない(場合がある)。 GPGはそのあたりに「寛容」らしい[archwiki-gpg]

公開鍵を一覧する

$ gpg --list-keys

ここで表示されるハッシュはfingerprint。

秘密鍵を一覧する

$ gpg --list-secret-keys

ここで表示されるハッシュはfingerprint。

subkeyを作る

暗号化・署名の片方のみができるsubkeyを作成する場合

$ gpg --edit-key KEYID
gpg> addkey
### RSA (暗号化のみ) を選択する。
### 2048bitを選択する。
### 鍵の有効期間として2yを選択する。
### パスワードを打ち込む。
### 諸々出力されてsubkeyができる。

gpg> save

その他のsubkeyを作成する場合

$ gpg --edit-key --expert KEYID
### 持たせたい機能を選択する。
### 以下同じ。

認証機能(Authenticate)はSSH鍵として使用する場合に必要らしい[archwiki-gpg]

subkeyには有効期間を定めておく。期限が近づいたら更新しなければならない。期限が切れたあとでも更新できるらしい[riseup_bestpractices_set-calendar]。勢い余ってsubkeyを消してしまうと、これで暗号化したファイルを復号化できなくなるらしい[archwiki-gpg]。どうせ忘れるのでスケジュールに追加しておくと良いらしい[riseup-bestpractices-set_calendar]

subkeyを削除する

$ gpg --edit-key KEYID
gpg> key 1  ### 何番目のキーを削除するのか指定する。ただし一番上のmaster keyは0番目と見なす。
### 削除したいキーに*印が付く。
### ちなみにすでに付いていた場合は*印が消える。すなわち非選択になる。

gpg> delkey
### 選択されていたキーが消えたリストが出る。

gpg> save

key KEYID とはできないので注意[stackexchange-how_to_delete_subkey]

master keyを取り除く

$ cp -r ~/.gnupg /where/you/wanna/save/keys ### バックアップを取る。
$ gpg --with-keygrip --list-key anqou ### master keyのkeygripを表示する。以下KEYGRIP。
$ rm ~/.gnupg/private-keys-v1.d/KEYGRIP.key ### master keyを削除。
$ gpg --with-keygrip --list-secret-key anqou   ### うまく消えていれば当該のmaster keyの部分に`sec#`と表示される。
$ rm ~/.gnupg/openpgp-revocs.d/KEYID.rev ### ついでに失効証明書も消しておく。

このやり方はGPG2.1以降らしい[joemphilips][hatsusato]でもこのやり方が紹介されている。失効証明書を削除しているサイトは見つからないが[archwiki-gpg]によれば「無効化証明書にアクセスできれば誰でも鍵を無効化して、利用できなくすることができてしまいます」とあるので、バックアップがあるなら消しておいたほうがよさそう[要出典]。

~/.gnupg 以外の場所にあるmaster keyを使用する

$ GNUPGHOME=/where/master/key/exists gpg ### 以下省略

要するに GNUPGHOME を指定すればよい。

fingerprintを表示する

gpg --fingerprint --fingerprint

オプションを2つ重ねることでsubkeyについてもfingerprintを表示する。

subkeyを失効させる

gpg --edit-key KEYID
gpg> key 失効させたいsubkeyの番号(1-origin)
gpg> revkey
gpg> save

動作未確認。重要なことはsubkeyには失効証明書などないということ。失効証明書はmaster keyのみに存在する。ただしsubkeyを失効させるときにはmaster keyが必要(多分)。

失効周りはテストしてないので詳細不明。一生使いたくない。

GPG鍵を他のマシンに移す

$ gpg --export KEYID > public.key
$ gpg --export-secret-key KEYID > private.key
### ここで他のマシンにpublic.keyとprivate.keyを移す
$ gpg --import public.key
$ gpg --import private.key
$ gpg --edit-key KEYID trust quit
### 「究極的に」信用する

[stackexchange-import_secret]より。最後のコマンドで鍵の状態を「不明」から「究極」にする。

gpg-agentにssh-agentの代わりをやらせる

.zshrc (乃至それに類するもの) に以下を追加。

export GPG_TTY=$(tty)
gpg-connect-agent updatestartuptty /bye >/dev/null
unset SSH_AGENT_PID
if [ "${gnupg_SSH_AUTH_SOCK_by:-0}" -ne $ ]; then
  export SSH_AUTH_SOCK="$(gpgconf --list-dirs agent-ssh-socket)"
fi

[archwiki-gpg]より。 ~/.gnupg/gpg-agent.conf を編集する必要は (これだけをやるためには)特に必要ない。

gpg-agent.conf のオプションである enable-ssh-support[man-gpg_agent]によると SSH_AUTH_SOCK 環境変数を設定するだけのようなので、このように手動で指定する場合は、おそらく必要ない。 また write-env-file は少なくとも2.2.13では意味を為さないオプションになっている。

これによって ssh-add を使用できるようになる。GPG鍵もSSH鍵として使用できる(後述)。鍵を確認する場合は ssh-add -l とすればよい。 ssh-agent とは異なり、一度追加してしまえば再度追加する必要はない。実際にSSH鍵を使用するときにパスワード入力を求められるのみである。

gpg-agentにSSH鍵として使用するGPG鍵を伝える

$ gpg --list-keys --with-keygrip ### 使用したいGPG鍵のkeygripを確認。以下KEYGRIP。
$ echo KEYGRIP >> ~/.gnupg/sshcontrol

~/.gnupg/sshcontrol にkeygripを書き込まなければGPG鍵をSSH鍵として使用することはできないらしい[qiita-macos_gnupg_ssh]

GPG鍵からSSH公開鍵を作成する

$ gpg --export-ssh-key KEYID! ### GPGを直接使用する場合

末尾の ! に注意。これを指定しない場合、指定したKEYIDのGPG鍵の内、認証機能を持つ最も最近に作成したsubkeyのSSH公開鍵を出力する[man-gpg]。すなわち認証機能を持つ特定のsubkeyのSSH公開鍵を作成したい場合は、まずそのsubkeyのfingerprintを取得した後、それをKEYIDとして指定し、最後にエクスクラメーションマークをつける必要がある。 subkeyのfingerprintは --fingerprint を二回重ねることで出力できるが、この表示では4桁ごとにスペースが入ってしまうため以下のようにして取り除く必要がある。

### subkeyの一部にXXXXを含むとする
$ gpg --fingerprint --fingerprint | grep XXXX | sed 's/ //g'
### 当該subkeyのfingerprintがスペース無しで出力される

なお gpg-agent にGPG鍵をSSH鍵として登録した後ならば ssh-add を使用しても確認可能:

$ ssh-add -L

ここで作成したSSH公開鍵を適当なサーバの ~/.ssh/authorized_keys に追加すればGPG鍵を用いてSSH認証を行うことができる。

ここで作成したSSH公開鍵はあくまでsubkeyに紐づくものであることに注意。 master keyとsubkeyを使い分けるメリットとして、subkeyが流失した際にsubkeyを失効させることで信頼を担保するというものがあるが、SSH認証では接続相手のSSH秘密鍵が失効しているかなどを検査しないため、失効手続きを行った後でも、流失したsubkeyでSSH認証が可能のはずである(未確認)。

gpg-agentをリロードする

$ gpg-connect-agent reloadagent /bye

[archwiki-gpg]より。

gpg-agentからSSH鍵を削除する

$ vim ~/.gnupg/sshcontrol ### 適当なエディタでsshcontrolを開く
### 削除したいSSH鍵のkeygripを削除する。あるいは行頭に!を追加する。

GPG鍵をSSH鍵として使用する場合のみならず、 ssh-add で追加したSSH鍵もこの方法で保存される。 ssh-add -dIdentity removed の表示が出るにも関わらず、 sshcontrol からは削除されないため、効果がないようである[stackexchange-gpg_delete_ssh_key]

gpg-agentへのパスワード入力方式を変更する(pinentry)

$ vim ~/.gnupg/gpg-agent.conf ### 適当なエディタでgpg-agent.confを開く
# PIN entry program
# pinentry-program /usr/bin/pinentry-curses
# pinentry-program /usr/bin/pinentry-qt
# pinentry-program /usr/bin/pinentry-kwallet
pinentry-program /usr/bin/pinentry-gtk-2

[archwiki-gpg]より。

GitにGPG鍵を追加する

$ git config --global user.signingkey KEYID

~/.gitconfig[user]signingkey の項が追加される。

Gitのcommit時に署名する

$ git commit -S

[git-gpg]より。常に署名したい場合は git config commit.gpgsign true とする。 これには普通 --global をつけないらしい[stackoverflow-autosign]

Gitのtag作成時に署名する

$ git tag -s v1.5

[git-gpg]より。

GitHubにGPG鍵を追加する

$ gpg --export --armor KEYID | pbcopy
### クリップボードにGPG公開鍵がコピーされる。
### GitHubの適当な位置に貼り付ける。

参考文献

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Someday in March https://anqou.net/poc/2019/03/23/someday-in-march/ https://anqou.net/poc/2019/03/23/someday-in-march/#comments Sat, 23 Mar 2019 01:04:02 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2815 はお~、どうもみなさんこんにちは。影響を受けやすいことに定評のあるイオです。

突然ですが私の春休み中の一日の過ごし方を紹介しましょう。

朝とは清々しいものです。早起きは三文の徳という言葉もある通り、早起きは一日のリズムを作りその日が充実した一日になることを約束してくれます。

13:00起床

起き抜けに食べるのが朝ごはんなのでたとえ時刻が午後になっていようとも、30秒で用意できるフルーツグラノーラは朝ごはんなのです。

朝ごはんにフルグラを食べる

40年来の日課のようなスムーズさでTwitter、LINE、Instagramの通知を消化していき、開けるはノートPC。流れるような手つきでabemaTVで今週配信されたアニメ、Mリーグをチェックし、amazon primeへ。溜まりにたまったウィッシュリストの映画を一本見ます。憲法にもある通り文化的な生活を営むのに映画鑑賞は最適です。

日課の映画鑑賞

この辺ですでに夕方。本日の予定をチェックし、予定があれば家を出る準備といいながらギリギリまでTwitterを見ます。大抵予定なんかないですし、あっても夜からしか入れないのでこの時間のチェックで問題ないのです。

スケジュールチェック

日が暮れ始め少し活発になったTLを眺めながらYoutubeに手を伸ばします。あとは21世紀の勝ち組企業Google先生が提供する無限のコンテンツを享受して一日は終わります。

(最近は某―たーさんのおすすめでとしたい、の垂れ流しになってますが)

ネットサーフィン

なんとも理想的な春休みですね。この生活をあと3年くらい続けたら真理の扉が開けそうで怖いので、4月からはがんばって社会に適合したいと思います

はたらきたくない

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https://anqou.net/poc/2019/03/23/someday-in-march/feed/ 1
ブージャム https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2760/ https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2760/#comments Fri, 22 Mar 2019 16:00:10 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2760 目の前のベンチには一人の女性が座っている。イギリスのストーンヘンジを模したモニュメントが中心にある広い公園で、普段は子供が大勢遊んでいるのだが、今日は天気も不安定であたりに人気はなかった。少し前まで、この女性のボーイフレンドらしき人物がベンチに一緒に座っていたが、今はここにはいない。

私は今、さっき目撃した驚くべき現象をこの女性に伝えたいと思っている。といっても私はもうかなりの回数それを見てきたのだが、何度見てもそれは視界に入った途端に命の危険や、理解しがたいことに対する恐怖を感じさせるものだった。すぐに逃げ出したいという焦燥感に駆られたとしても、その現象に遭遇した時は逃げ出さず、そこに近づいて耳を澄まさなければならない。

昨日の雨でぬかるんでいる地面の部分を避けながら、彼女に近づいてこう言った。

「こんにちは。驚かせてしまってすみません。怪しいものではないのです。どうか話を聞いてもらえませんか。」

彼女は警戒しているようだった。ボーイフレンドがなかなか戻ってこなくて不安に思っているところへ、いきなり知らない人間に話しかけられたのだから当然ではある。もともと私は他人とコミュニケーションを取ることが苦手なので、彼女の警戒心に怯み挫けそうになったが、勇気を出して言った。

「あなたは私の話を馬鹿馬鹿しい戯言、あるいは狂人の妄想として聞き流そうとするかもしれませんが、私はあなたにそれを話す義務があるし、あなたはそれを聞く義務があるのです。先ほどあなたと一緒にいた男性、彼はあなたのボーイフレンドでしょう?そう、彼に関するお話です。」

ベンチから立ち上がり、歩き去ろうとしていた彼女は、私の最後の一言で振り向いた。顔の横に持っていきかけていたスマートフォンを下ろして、私に向き合った。

「私たちを見ていたんですか?あなたが彼に何かしたの?どうして彼は戻ってこないんですか?」

「順番にお答えしましょう。一つ目の質問の答えはイエスです。私はあなたたちを見ていました。なぜならばこの公園は私の散歩コースにあって、この公園で一休みするのが私の習慣であり、ここで遊んでいる子供たちを見てくつろぐのが私の日課だからです。今日は子供たちはいないようですが、日課を変えることはしません。したがって必然的にあなたたちを観察することになります。二つ目の質問の答えはもちろんノーです。私が彼に何かしたわけではありません。傍観していたという意味では間接的にそうかもしれませんが、しかし状況は私が介入できるようなものではなく、また未然に防ぐことができるような性質のものでもありませんでした。三つ目の質問の答えは少し長いお話になるので、ベンチに座っていただけませんか。」

「ここで聞いてもいいですよね?ベンチに座って聞かなければいけませんか?」

彼女はいつでも通報できるように握りしめたスマートフォンを、それとなく強調するような仕草をした。

そんなに私は怪しい風体をしているだろうか?いや、口調が原因で私を怪しいと思っているのかもしれない。こうして知らない人に話しかけるのは私の性質上苦手で、しかも話の内容が内容だけに、緊張して早口で喋ってしまった。安心させるために論理的に話そうとしたのもあだになり、冗長な表現によってかえって言い訳じみた印象を与えたのではないだろうか。

私はストーンヘンジの外周から5メートルほど北に位置する時計台をちらりと見た。私は時間が分かるものを持ち歩かない。雲が太陽にかかり、にわかに暗くなる。暗くなったせいで時計の文字盤がよく見えなかった。

「いえ、すみませんでした。そこで結構ですから、どうぞ話を聞いてください。」

「三つ目の質問の答えは?」

私の言葉を聞き終わるより早く彼女は言った。そうとう不安らしい。この調子だと、私の話を聞いた後、彼女は怒り出すに違いない。

「彼が戻ってこないのは、ブージャムに食べられてしまったからなのです。」

「は?ブージャム?食べられた?」

「そうです。ブージャムに食べられたのです。おそらくブージャムについては何もご存じないでしょうから、初めから説明します。」

「知ってますよ。ルイス・キャロルの詩に出てくる怪物でしょう。スナークの一種でしたっけ。架空の生き物に食べられただなんて冗談はやめてください。」

いまや彼女は敵意さえ私に向けているようだ。敵意を向けるべきなのは私ではなくブージャムの方なのに。彼女の誤解を解くべく、私は笑顔を浮かべジェスチャーを交えて話し始めた。

「よくご存じですね。そう、確かにブージャムはルイス・キャロルの『スナーク狩り』に登場する架空の生物です。しかし私が言ったブージャムは『スナーク狩り』に由来する現実の生物の名称です。私はその生物の名前を知らないので、仮にそう名付けているのです。」

彼女は私に対する不信感をさらに募らせているようだ。ジェスチャーはまずかったか。顔をしかめ露骨に嫌悪感を示す彼女に、私はなおも続けた。

「私はこの町で育ち、この広い公園でよく遊びました。小さいころから、この公園で不可解なことが起こるのを、というより不可解な生物をよく目にしたのです。」

私は、あの生物を初めて見たときの恐怖を思い出していた。忘れようのないあの気味の悪い見た目、そしてなによりあの大きさが私を恐れさせた。移動する音はぶつぶつ呟いているようにも聞こえ、後ろ姿は姿勢の悪い禿頭の酔っぱらいにも見える。

「どこを調べても分からなかったので、その気味の悪い生物を私はスナークと名付けました。『スナーク狩り』の不可解さとその生物の不気味さがよくマッチしていたためです。」

彼女はスマートフォンを操作していた。私の話を聞く気がないのだろうか、と憮然としていると、彼女は言った。

「写真を撮らせてくれます?」

「なぜです?」

「警察に連絡するときに必要になるかもしれないから。」

「お断りします。警察への出頭が必要ならば自分で出向きます。それより私の話を聞いていただけますか。」

彼女は私のことを変質者、良くて害のない狂人と思っているらしい。まあ、こういう反応が返ってくることは分かっていた。今回こそうまく説明できると思ったのだが。

「あなたが私の話を信じられないのは分かりますが、あれを目撃し真相を唯一知る私としては、これをあなたに話さないわけにはいかないのです。」

彼女はなおもスマートフォンを操作し続け、器用にもぬかるみを避けながら1,2歩あとずさり、面倒そうにこう言った。

「もっと手短に話してくれます?あなたの妄想に付き合っている時間はないんです。彼がどこへ行ったか聞いても無駄でしょうから、こう訊きますが、彼はどこでブージャムに食べられたんですか?」

「ストーンヘンジの向かいのあの御手洗いの中です。私は子供がブージャムに食べられないようここへ毎日……ちょっと待ってください。話は最後まで聞いてください。危険なんですよ。通常ブージャムは人間を食べた後スナークになり人間を襲わなくなりますが、彼を食べたブージャムは『まだ』と言っていました。そういうブージャムは危険なんです。まだ人間を欲している可能性がありますから。」

「はいはい分かりました。近づかないでください。警察を呼びますよ。」

彼女はスマートフォンを脅すように掲げて言った。彼女が後ずさり日が少し落ちたことで、彼女の影がストーンヘンジ外縁の北西の石にかかっている。

「妄想じゃありません。私は何度もブージャムが人間を食べるのを目撃しているんです。危険だからあなたに忠告しているんです。ストーンヘンジに近づかないでください。早く離れて。ほらもうそこに…」

私が言い終わる前にブージャムは彼女の後ろに迫っていた。いや、スナークと言うべきか。私の懸念とは裏腹に、その怪物は彼女を捕食しなかった。そして、やはり彼女はその怪物のことをボーイフレンドだと思い込んでいた。そのスナークは捕食したボーイフレンドの顔をしていたのだ。

「…」

「雨降りそうだし早く帰ろう。」

私を睨みながら、彼女はスナークにそう言った。

ブージャムの頭部は目や口のくぼみだけのあるノッペラボウであり、人間を食べるときにのみ顔の中心を収縮させて大きな穴を作り、背後からそっと近づいて人間を音もなくその穴に吸い込む。その直後、ブージャムは顔を元に戻すが、徐々に食べられた人間の顔がそこに浮かび上がってくるのだ。彼女がそのスナークをボーイフレンドと勘違いするのも無理はない。だが、私には分かるのだ。それがスナークであることが!

彼女はスナークとともに歩き去った。私はその後ろ姿を見送ることしかできなかった。追いかけてさらなる忠告をするか、諦めて無力感に苛まれながら家路につくか逡巡しているまさにその最中に、日が陰り雨が降り出したまさにその最中に、彼女は突然静かに消えうせた。

そう、そのスナークはブージャムだった。

         

読んでくれてありがとう.この小説の舞台はかつて僕が旧融合不定期に投稿した『ブラボー』の最後の場面の広場です. 主人公の気持ち悪さがこの小説のかなめ. 例によって,僕が実際に見た夢に着想を得て書きました.人を食べる生物が登場するのは同じですが,元々の夢は小説とは違って食人生物はペットでした.そこから飼っているのか飼われているのかという話に発展させようとしたのですが,うちで飼っている猫について妹とそういう会話をしたことを思い出したのでやめました.夢ではブージャムはもっと見るも悍ましい外見ですが,うちの猫は非常に可愛いので,関連付けるようなことはしたくなかったのです.ちなみにジャバウォックやバンダースナッチはスナークの固有名詞として出てくる予定でした.

僕は小説が書けません.最初に書こうと頭でイメージしているものが,書いているうちにどうしたことかどんどん方向が逸れていってしまう.セリフはぎこちないし,情景描写はできないし,ストーリーもおよそ筋と言うものがなく行き当たりばったりになってしまうことが多いのです.それでも,見た夢を小説にすれば何とか形にならないこともない.僕のメモ帳に書かれている,小説にできそうな夢は以下の4つでした.

  • 内に広がり続ける虚無(穴)を抱える王国の城 (モデル:ユダヤ、ソロモン王)
  • 思索によってしか他者を見つけられない哲学者(モデル:ウィトゲンシュタイン)
  • 気持ち悪い食人生物のペット 相貌を持つ 飼われているのはどちらか
  • あまりにも速い話 空を飛ぶ車 速度に命を懸けた男の話

このうち3つ目がこの小説になりました.たいして面白くないって?そうですね,本当に面白い夢は起きたとたんに忘れてしまうものですから.さてどうでしょう,だれか残りの3つを小説にしてくれませんか?人に小説を書く労力を押し付けるなんて厚かましい話ですし特に期待はしていませんが,筒井康隆の『天狗の落し文』みたいな感じでアイデアだけここに投げておきます.このアイデアたちを面白くするのはあなたです!

それはさておき,小説とは何なのでしょう?この小説を書いているとき,僕は小説という文学の一形態のもつあまりの自由さに,小説が一体何なのか分からなくなりました.僕がストーリーのある文章を書くとき,初めに全体の構造と大まかなあらすじ,一部の印象付けのためのセリフを用意しますが,書いているうちに必ず体裁が保てなくなって想定していたものと別物になってしまいます.たった3000字あまりのこんな短いものでさえ!頭の中にある映像をそのまま絵にすることはできないように(できる人はできるのでしょうが),頭の中の世界を文章に落とし込むことは到底不可能です.それは私の感覚では何というか,かなりねじ曲がった行為なのです.小説では何でも書けます.どんな方向にねじ曲がってもそれは小説だと言い張ることができます.だから僕も,この文章を小説だと主張できるのですが,実際にできあがったものは偶然の産物以外の何物でもありません.着想からして夢から拝借したものですし.あえて言うならこの小説はダダイズム的な何かなのかもしれませんね.

僕は小説が書けないので,かつてタクシャカと約束した『入れ子』の小説は誰かに託したい,いやリレー形式にしてそういう企画にするのも悪くないかもなと思っています.そう,それはまさに連歌のような.連歌的ジレンマ再び.

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春休みにアマプラで見たアニメの感想(2019/4/7更新) https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2790/ https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2790/#comments Fri, 22 Mar 2019 15:20:20 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2790 春季投稿大会ということで特に書くこと思いつかないので春休みにアマプラで見たアニメを思い出して雑に感想を書いていきます。全部箇条書きなのはワードプレスとかいうのの使い方よくわかってないからなだけで特に意味は無いよ。あとオチも無いよ。

ちなみに自分が現世で見たことあるアニメのリストはここにあります。よかったら見てね

 

追記
春季投稿大会以降で春休みに見たアニメを追加しました。ワンパンマン以降のやね
しかし振り返ってみると、この春休みもっとゲームとかするつもりやったのに、結局アニメばっか見てたし、楽な方楽な方に流れて行ってしまってるなぁと悲しくなってくるね。治す気は無いんやけど

 

  • うちのメイドがウザすぎる!
    • 秋アニメで知り合いの涼風青葉さんにお勧めされて見たアニメ。金髪幼女が出てくるので金髪幼女が好きな人は見ると楽しいと思うよ
    • 個人的には割と好きなアニメやった。日常系ギャグって感じでいい感じのアニメかと
    • メイドさんがいい感じにウザくていいよね。最初から最後まで変態的面白さがあるしなんだかんだストーリー性もあるのが好き。まあメインは日常やからストーリー性は薄いけど、別にストーリー求めて見るアニメじゃないしね
  • となりの吸血鬼さん
    • これも秋アニメで多分タイトルで適当に見るの決めたやつ。 金髪幼女が出てくるので金髪幼女が好きな人は見ると楽しいと思うよ。
    • これも個人的には普通に良かったと思う。キャラもかわいいし、なによりキャラがかわいい、おまけにキャラもかわいい。まあ話はほのぼの7割日常系で頭空っぽじゃないとちょいキツいかも知らん
    • ロリコン女子出てくるあたりきんモザみあるよね。それはそれでいい
    • 吸血鬼と人間の価値観の違いとかあって面白かった(小並)。わざわざ勧めるほどではないけど、見て損は無かったよ、個人的にはね
  • ゼロの使い魔
    • 昔ルイズコピペ使ったけど実は見たことなかったです。はい
    • 見た感想はルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああ(ry
    • 実際ルイズかわいいしアニメ1クールにきれいにストーリー収まってるし大概次の話気になるような展開になってるからよかったと思う。久々にファンタジー系見たけど最初から最後まで楽しめた
    • ただなんだかんだ昔のアニメやから今とはやっぱ雰囲気が違うなぁとは思ったかなぁ。別に今は今の味があって昔のには昔の味があるんやからどっちのがいいとかは人によるけどね
    • まぁなにはともあれルイズたんかわいいね
  • 干物妹!うまるちゃんR(二期)
    • 一期はリアタイでニコ動で見た記憶があるけどそっからだいぶ時間経ってるから割と人間関係忘れてたよね。特にうまる仮の姿の友好関係とか
    • 海老名ちゃんかわいいね
    • でもそんな詳しい人間関係覚えて無くても緩く楽しめるのはいいよね。気楽に見れるってのはいいことだ
    • 海老名ちゃんかわいいね
    • 一期同様いい感じに面白い日常系ギャグアニメって感じでよかったと思う。割と万人向けする面白さって感じ
    • 海老名ちゃんかわいいね
  • みつどもえ
    • たまには古のアニメも見ないとねってことで酒飲みながら見たけどめっちゃ面白かったね
    • 序盤は下ネタばっかりやんけって思ってたけどキャラのことわかってきたらどんどん引き込まれていく感じの面白さもあった。でも下ネタ多ない?
    • 二期のOP好き。あんまり飛ばさず見てた
    • 大人でも子供でも楽しめるアニメって感じやけどなんで二期8話しかないんや。。。もっと見たかった。。。
    • 春休みに見たアニメの中では1,2を争うぐらいお勧めやけど酔いながら見た方が多分楽しいよ。素面で見たこと無いから知らんけど
  • 僕らはみんな河合荘
    • θとかいうオタクに散々勧められたししぶしぶ見たやつ。でもよかったね
    • 正直期待してたほどハマらんかったけどラブコメが好きならハマると思う。キャラも生き生きしてるし人によってはこういう青春送りたかったって思うんちゃう?知らんけど
    • ラブコメ以外の河合民の話も面白いから飽きないね。面白いから暇でアマゾンプライム会員の人は見ると楽しめると思うよ。まあ有名やし見てる人のが多いとは思うけど
  • 劇場版STEINS;GATE負荷領域のデジャヴ
    • シュタゲ自体は去年の夏と冬らへんに一期二期は見てて、劇場版とかどうせ総集編みたいなもんやろヘラヘラって放置してたけど、別物やったんやね
    • 内容としてはシュタインズ・ゲートに辿り着いた後の話で、クリスティーナが活躍するので見るといいと思うよ。普通にシュタゲ的面白さあるし
    • ただ、尺の都合でアニメほど細かい描写は無いし、途中は割と淡々と進んだりするから、そういった不安定な緊張感が続くみたいな楽しさは薄い気はした。でもおもしろから是非見てね
    • 何より一期とも二期とも話がほとんど被ってないから見るべきやとは思う。一期は先に見といた方がいいと思うけど。内容的に二期はどっちでもいいと思う
    • 一期でこの世界線のままやとこういうエンド迎えるんやなってのもほんのりわかるシーンがあるからそういうのも楽しめたよ。詳しいことは分からんからそういうの詳しく知りたい人はゲームやろうね
  • のんのんびより りぴーと(二期)
    • 世界一優しいおかえりが待ってるらしいね
    • 高校時代に一期を友人宅で見たと思ってたけど序盤は既視感あったし二期の最初の方も見たことある気がする。てるてる坊主とかあのへん覚えてるし
    • ただ見たのだいぶ昔やから詳しい人間関係が微妙に忘れてたりして完全には楽しめ無かった気はする。それでも面白かったけどね
    • ジャンルとしては究極の日常系って感じで、田舎ほのぼの日常を楽しめるよ。実際他のアニメと間の取り方が全然違うからほのぼのみが高いね。こういうのもたまにはよい

~~ここから追加箇所~~

  • ワンパンマン
    • 主人公最強やけど俺つえー系じゃないという感じのアニメ。主人公以外にスポット当たりがちやけど、まあ仕方ないよね
    • 何より作画が強い。書き込みがすごいからそれだけで見る価値あると思うよ多分
    • ストーリー的にはまだ続きがありそうな感じで終わったけど、まあ一応はひと段落した終わり方かなあという気持ち。二期とかあればいいんやけどね、まあ無さそう
    • でも多分漫画で読んだ方が面白そう
  • 上野さんは不器用
    • とてもよい。キャラがかわいいし面白い。15分アニメで気楽に見れるからみんな見てくれ
    • 内容としては中学の科学部の話なんやけど、ドラえもん並みの最新道具出してくるし、それの使い方が田中の気を引くために使うとかしょうもないしで、見ててほんと楽しい
    • 一方でその田中が朴念仁極めてるから何とも言えん空気感が錬成されてるよね。でもってその上野さんがとても見てて楽しい
    • まあ一部嫌いな人はいるらしいけど、基本的なオタクはみんなこういうの好きやと思うし積極的に勧めていきたいからみんな見て
  • 私に天使が舞い降りた!
    • 今期の覇権。これはマジ
    • 乃愛ちゃんかわいいね。めっちゃべた褒めしたい
    • 小学生が中心の日常系ってだけで癒されるんやけど、それなりにいい年した人も中心人物に入ってるから、そのへんとの絡みがいいよね。まあそのみゃーさんがだいぶ変わった人で、その時点でおもしろいんやけど
    • 乃愛ちゃん世界一かわいい!!!!!!!
    • このアニメ見る前に友人が「ウザメイドに似てる」って言ってたけど、まあ人物構成はそんな感じやった。でもロリキャラいっぱい出てくるし作画プルプルしててかわいいから、こっちのがなお癒されると思う
    • 流石にここ来るような人ほとんどみんな見てるとは思うけど、見てないオタクは是非とも見てくれ
  • 約束のネバーランド
    • 今期始まったらへんでよく耳にしてて、実際面白いらしいから見てみたけど、まあ面白いよね。こういうアニメをあんま見てこんかったからか知らんけど、新鮮な感じやった
    • どんなアニメかは一応ネタバレになるし伏せときます。まあ一話でわかるしそんな気にせんでいいと思うけど、とにかく終始ハラハラする感じのアニメだよ
    • 個人的には割と意外な展開が多かったから、そういうところも見てて楽しかった。割とおすすめではある
  • 苺ましまろ
    • 古日常アニメ見たくなることってあるよねって見始めたアニメ。作業半分で見てたし、内容そんなに正確に追ってなかった
    • 見た感想としては、日常系のなかでも濃度が薄いアニメやなぁって感じ。正直つまらんシーンも多々あったかなぁと思ってしまうし、笹塚は廊下に立ってろ
    • まあOVAも全部見れたしいいアニメではあると思うし、長期休暇とかいう現実がまったりしてる状態で見たからそこまでハマらんかっただけかも知らんので、日常系欲してる人は見てみると意外と楽しいかもしれんね
  • ヨルムンガンド
    • 名前だけは聞いたことあって、アマプラ見たらあったし見るかーっていう軽いノリで見たけど、すごい面白かったね
    • 多少上品でギャグが多いブラックラグーンって感じで、クール系というかガンアクション物というか、とにかくかっこいい感じのリアル志向なアニメ
    • 内容的には武器商人とその私兵が主人公で、その私兵にある少年兵(一応主人公ポジ)が入るとこから始まるんやけど、最初は1,2話完結の短い話で雰囲気づくりと伏線貼りをして、最後の方でその少年兵の考えがどうなるとか、伏線回収とか、大域的な話の終盤に近付いたりする感じ。要するにいいアニメ。タイトル回収もあるよ
    • 1クール×2期のなかで割といい感じに話収まってたと思う。二期の最後はまだもうちょっと続くんじゃみたいな雰囲気で終わるけど
    • あと連続してみてたから、二期で一期の振り返りみたいなシーンがさっき見たってなったのがちょい残念やったかなぁと
    • なにはともあれ面白かったからみんなも見てね。春休み中に見たアニメの中ではみつどもえの次くらいにお勧めしたい
  • 徒然チルドレン
    • 多重リア充アニメだよ~~~~~でもキャラの心の動きかわいいしギャグ要素面白いの知ってるから見た
    • 死にたくなったときに見たら背中押してくれるアニメって表現めっちゃ好きなんやけどあんまいいねこんし多分そこまで面白くないんやろな。悲しい
    • 基本的に男女のペアがあって、そこが付き合っていちゃいちゃしたり、付き合おうとがんばって微妙な感じで笑えたり、不器用な恋愛って感じで恋愛エアプ勢としてはなかなか楽しめた
    • 15分アニメで4,5個のストーリー詰め込む感じやから、一個くらい好きなカップル見つかると思うよ。ちなみに一番好きなのは坊主頭が出てくるやつ。次点で恋愛に疎い女の子のやつ。あの絶望的に好意伝わらん男の子がたまらんよね
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背景 https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2802/ https://anqou.net/poc/2019/03/23/post-2802/#comments Fri, 22 Mar 2019 15:00:12 +0000 https://anqou.net/poc/?p=2802 前略

さあ始まりましたカオスの坩堝2019年春季投稿大会。

中略

私もとても楽しみです。

後略

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