カオスの坩堝 https://anqou.net/poc Chaos is not kaos. Sat, 31 Dec 2022 08:55:08 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.1.1 https://anqou.net/poc/wp-content/uploads/2018/02/9dc10fe231765649c0d3216056190a75-100x100.png カオスの坩堝 https://anqou.net/poc 32 32 至高のアドベントカレンダー作ってみた https://anqou.net/poc/2022/12/01/post-3507/ https://anqou.net/poc/2022/12/01/post-3507/#respond Thu, 01 Dec 2022 11:00:00 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3507 この記事はAdvent Calendar 2017 day1827の記事です。
前の記事はこちら

導入

こんにちは。feeleです。

皆さんはAdvent Calendarをご存知ですか?
12/01-25日にweb記事をリレー形式で続けていくアレだと思う方もたくさんいると思いますが、元ネタはクリスマスまでの期間に日数を数えるためのカレンダーだそうです。
例えばこんな感じですね。

アドベントカレンダーで検索したら出てきた画像。
詳細情報曰く2017年12月20日とかにアップロードした画像らしい。エモエモ


本サイトではAdvent Calendar 2017Advent Calendar 2018などが過去に行われてきました。記事トップにふざけて書いている通り本サイト最初のアドカレは1827日前とからしく、まあまあ懐かしいですね。あの頃はまだ酒も飲めなかったんだなぁ……

ちなみに本サイトは来年1月に動的な機能が停止するそうなので過去の恥ずかしい記事を消したりしようかと思ったのですが、これはこれでいい思い出ですし、どうせInternet Archiveにあるから消しても消さなくても変わらんなとなりました。他の著者の皆さんもぜひ過去の記事を消さずに年を越して、黒歴史の生殺与奪権を鮟鱇に握らせましょう。

閑話休題

ところで皆さんは❝至高❞をご存知ですか?

[名・形動]この上なく高く、すぐれていること。また、そのさま。最高。「―な(の)精神」「―至善」

goo辞書

自分は今までアドカレの記事を何本か書いたことはありますが、物体としてのアドベントカレンダーを作ったことは実は一度もありません。

なので学生の内に一度くらいアドベントカレンダーを作ってみたいと思っていましたが、「せっかく作るなら❝至高❞のアドベントカレンダーだよなぁ」と語りかける自分と「ダルいし5分くらいで作れるやつがいいなぁ」と正論を投げかける自分、そして「大前提としてクリスマスまでの日々が楽しめるギミックがないと作っても意味がない」と考える自分、この全て納得させるアイディアがありませんでした。

閑話休題の対義語

ところで皆さんは今季放送されている大人気Japanese Traditional moe♡ moe♡ Animationであるところの「ぼっち・ざ・ろっく!」をご存知ですか?

ぼっち・ざ・ろっく!好評放送中!


アニメの内容と概要紹介は省きますが、このアニメの中で上記の自分を全て納得させる画期的なアイテムを見つけました。まずは下の画像を御覧ください。


こちらは廣井きくり呼ばれるベーシストです。自分もベースを多少嗜んでいるのでよく分かるのですが、異様にベースが上手で憧れますね。それでは次の画像を御覧ください。

 
 


!?

 
 

 
 


この、並べやすそうな直方体は…………?

 
 

 
 


この、クリスマスに相応しいカラフルな物体は…………?

 
 

 
 


この、種類が多く毎日飲んでも飽きが来ない日本酒の群れは…………?

 
 

 
 


この、毎日扉を開けるのと同様の操作を行えるストロー穴は…………?

 
 

つくってワクワク

■材料

  • 鬼ころし・・・25本
  • 粘着性の何かしら・・・適量

種類を集めるために様々な店へ東奔西走しました。せっかく無人レジを使ったのに年齢確認のために店員が来て、大量に鬼ころし買う人間だと思われて恥ずかしかったです。まあ事実なんですが……

元は両面テープで作成するつもりでしたが、鬼ころし同士の接触が悪かったのでゴツいテープを使いました。緑色の鬼ころしは近隣に売ってなかった(そもそもあるのか?)ので、テープでクリスマスカラーを補強します。

 
 

■手順1:ストローを取り外す

突起部分は組み立てる邪魔になるのでストローを取り外します。

適切な道具を使ってもいいですし、適切でない道具を使っても、あるいは道具を使わなくても問題ありません。困難は𝓟𝓞𝓦𝓔𝓡で解決しましょう。

■手順2:いい塩梅に鬼ころしを並べる

自分の美的センスを信じて並べましょう。クリスマスまで25日なので、5×5に並べるとそこそこ収まりが良くなります。

■手順3:接着

気合で鬼ころしを接続しカレンダーとしての体を為させます。

ストローは絶対失くすので、適当な袋に入れて側面にでも付けておきましょう。

■手順4:完成したものを自慢[要検証]する記事を書く

本記事になります。特に記事を書く名目が思いつかなかったのでAdvent Calendar 2017 day1827の記事という名目になりました。

自立可能


完成!

サムネ用

終わり

ということでアドベントカレンダー(物理)を作ってみました。作るの自体は簡単なので、購入する際の店員の視線に耐えられさえすればおすすめします。

問題はこのアドベントカレンダーを使うということは毎日鬼ころしを1本飲む必要があるということなので、まあそこは人を選びますね。

とりあえず作る段階は終わったので、これから毎日諸々の鬼ころしを飲んでいきます。多分この記事をちょくちょく追記していくので、良ければまた見に来てください。それでは。

 
 

 
 

 
 

2022.12.31追記

おまたせしました、追記です。

そういえば更新する度に坩堝のツイッターが一々動く仕様だったのでは……?と思い出して更新せずにいました。実際どうかは今回の追記でわかりますね。

day1

 
 

はい、こんな感じでカレンダーを開けていきました。

ただこれ問題があって、銀紙が全然めくれないんですよね。なぜか指を入れるだけの隙間がないため。なんでなんでしょうね。
対処法は簡単で、カッターとかを使って開ければ無事飲めます。

ちなみにこれ飲むときは全体を抱えてストローに口を付けるんですが、赤子をあやす姿勢で飲酒するハメになるため、脳がバグって楽しいです。来年は皆さんも如何ですか?

 
 

記念すべき1合目は日本盛の鬼ころしです。

この鬼ころしは最寄りのスーパーで1合100円未満で売っているため、1,2年前から愛飲しています。

なんと言うか、後味に若干の違和感があることにさえ目を瞑れば十分飲める味な気がしているんですよね。アルコール感というよりもエタノール感と言うべき、何か工業的な後味、あれってなんなんですかね。

飲み方としては、味の濃いものとの食中酒にして誤魔化す手法がおすすめです。

day2

1日1本だったのでは…………?

こちらは、清洲城信長の鬼ころしと、播州桃太郎の鬼ころしなるものです。
自分は両方とも存在だけ知っていてどこで売ってるのかまでは知りませんでしたが、生鮮館なかむらに売っていたので5本ずつ購入しました。京都6年住んでて、生鮮館なかむらでの最初の買い物がこれらしい。

清洲城信長の方は、確かに日本盛と異なり米の風味があるなと思いました。
ただ、雑味が多い気がして、あまり自分には合いませんでした。合いませんでしたとか平易に書いてますが5本買っているためあと4合飲む必要があります。地獄?

播州桃太郎の方は、よくわかりませんでした。
とにかく自分の体質と何か合わないらしく、結論としては一番不味かったですね。これ飲むとなぜかすぐに悪酔いしてしまいます。あと他の鬼ころしと比べて高さが低いため、アドカレが不格好になってしまいます。来年作るとしたら確実にレギュ落ちですね。
ちなみにあと4合あります。地獄?

day10

1日1本だったのでは…………?

はい、諦めました。本記事の上の方で

「大前提としてクリスマスまでの日々が楽しめるギミックがないと作っても意味がない」

とか書いてたんですが、本アドカレに日々が楽しめるギミックは一切ありません。助けてくれ。

 
 

12月は忘年シーズンということもあり、家の外でお酒を飲む機会がちょくちょくあったため、その度にアドカレ負債が貯まるんですよね。12月に飲酒アドカレは向かない。

あとこれ一回このアドカレ作るとわかるんですが、取り回しは悪いわ傾けると底に溜まった飲みきれない酒が零れるわ重いわで、全部の方面からこのアドカレの存在理由を否定できます。気になった方は是非一度やってみてください、応援はします。

day25

アドカレ、やはり間に合いませんでした。

敗因は播州桃太郎の鬼ころしと、単純に別に毎日飲酒習慣がなかったことですね。再走はしません。

 
 

さて、新顔が2パックありますね。青色のものが日本盛鬼ころししぼりたてで、黄色のものがゴールド鬼ころし・極上ノ辛口です。

日本盛は赤いものもありましたが、青いこちらは「しぼりたて」を強調しています。

赤との違いがあるのはわかるんですが、正直どう違うのかまではわかりませんでした。
公式では赤は「飲み飽きしないすっきりした味わいの淡麗なやや辛口」と書かれていて、青は「ぼりたての新鮮な風味をそのまま封じ込めた『フレッシュな味わいと香り』『爽やかな喉ごし』が特徴の淡麗辛口」と書かれているため、爽やかさが違うんですかね。

冷酒で飲んでも風味が強く残っているのが青の特徴なのかもしれません。が、自分はこのアドカレを冷蔵庫に入れたくないため、全て室温で飲んでいます。

こちらの人目を引く黄色のパッケージがゴールド鬼ころし・極上ノ辛口です。

こちらなんですが、なんと記憶がありません。少なくとも悪い記憶は無い、違和感は無かったということなので、鬼ころしとしては良質なのかもしれません。実際、商品案内にも「ワンランク上の晩酌酒」「テイスト感を上質化した新しい切り口とキレとコクある飲み応えのある」とか書いていますね。

 
 

とまあ色々飲みましたが、総評としてやはり日本盛の鬼ころしが一番美味しいなと思いました。

なので鬼ころしを買うなら日本盛(赤)を買う、そしてアドカレに鬼ころしは使わない方がいい。これが今回のアドカレの結論です。後者についてはやる前から気づくべきなんだよな。

 
 

それでは追記は以上です。このブログは(おそらく)明日にはもう動的操作が不可になるため、これが今生のお別れです。ではでは。

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

day31

タスケテ…………

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https://anqou.net/poc/2022/12/01/post-3507/feed/ 0
新規記事投稿停止のお知らせ(2023年1月〜) https://anqou.net/poc/2022/01/02/post-3494/ https://anqou.net/poc/2022/01/02/post-3494/#respond Sun, 02 Jan 2022 09:53:56 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3494 新年あけましておめでとうございます。艮鮟鱇です。皆様お元気でしょうか。私はかろうじて元気です。

さて突然ですが、お知らせです。カオスの坩堝は2023年1月(この記事投稿の約1年後)をもって新規の記事作成やその他の動的な機能を全て停止します。動的な機能というのは、新規記事の作成・既存記事の編集・既存記事の削除・記事への新規コメントなどで、これらが全て2023年1月をもって無効化されます。一方で既に投稿された記事を閲覧することは以前と変わらず行うことができます。URLも特に変わりません。技術が分かる人向けに言うと、WordPressで作られているページがcurlでスクレイピングした静的Webページに置き換わります。

というわけで、カオスの坩堝の著者の皆様には、2022年12月(この記事投稿の約1年後)までに次のようなことをしていただけると幸いです。

  • もし、手元にカオスの坩堝で公開したい記事がある場合には、2022年12月までにその記事を投稿してください。
  • もし、カオスの坩堝で公開した記事を修正・取り下げ・削除したい場合は、2022年12月までにそれを行ってください。

2017年からの長らくのご愛顧、ありがとうございました。

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https://anqou.net/poc/2022/01/02/post-3494/feed/ 0
夢、六月初旬の https://anqou.net/poc/2021/06/15/post-3461/ https://anqou.net/poc/2021/06/15/post-3461/#respond Mon, 14 Jun 2021 16:14:30 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3461  表題通り、十日ほど前に浅い眠りの中で見た夢の内容を、記憶を頼りに随所補完しながら書き起こしてみようと思う。早朝の短い二度寝で見た夢なので、寛大に表現してティザームービーくらいの尺と密度しかなく、当然導入もオチも無い。たまにオチを含んだ映画仕立て、小説仕立ての夢を見ることもあるが、大概は起きて思い返すだに支離滅裂な幕切れで、それに比べれば展開のない映像の断片の方がまだしも書き起こすに相応しいだろう。

 目が覚めても、彼女のことがしばらく僕の心に残留していた。それは、彼女の姿や声や匂いではない。彼女の存在そのものだ。だから、言葉にも信号にも還元することができない。したがって、急速に霧散し、消えていく。しかし、姿や声や匂いに印象を留めることの滑稽さに比べれば、それは素敵な消散だ。

森博嗣『スカイ・クロラ』

 実際、記憶からさっぱりとかき消えてくれるならばそれに越したことはない。不定形なエーテルになって何かに、たとえば新しい小説にでも活かされるのだとすればそれは僥倖だ。しかしこの夢の眺めは網膜にねばねばとこびり付いて離れないし、そう上等な代物にも思えない。なにせ登場するのは一人の女性ではなく、一匹の死んだイグアナだった。

 そのイグアナは、腹を見せた姿勢で数人の輪の中に横たわっている。ずんぐりとした体躯に長く鈍重な尾をぶら下げ、三角形に尖った顎はぐいと反らされていたので、目鼻がどうなっているのかまでは見て取れなかった。

 もっと近くで見ようと一歩踏み込んだ足首に、尾の先が当たった。弱々しい、じゃれつくような一撃で痛みも無かったが、それで危ないと思われたのか、隣に立つ帽子を被った男が身振りで私を下がらせようとした。

 これは生きているのか、と問うたかもしれない。そこは見るからに日本とは離れた異国の地だったので、恐らくは現地の言葉でそう言った。帽子の男は黙って首を横に振った。するとさっき振られた尾は、活け造りが反射で跳ねるのと似た現象だったのかもしれない。

 再びぴくりとも動かなくなった死体を覗き見る。ひっくり返った足裏までは見ていなかったが、爪は生えていただろうか。体長は、尾まで含めて目測一メートル半。顎の形といい体型といい、後から考えてみればイグアナというより中型のワニだ。しかし夢の中の自分というのは無根拠な確信に満ちていることが多く、その時も目の前の生物はイグアナだとしか思えなかった。

 帽子の男とは別の、しかし同じような砂色の服に身を包んだ男が、懐からナイフを取り出してきた。握ると柄がすっかり掌に包み込まれてしまうような短刀で、刃渡りも短いが、よく手入れされているように見える。その証拠を示すかのように、ナイフの男はイグアナの腹めがけて刃先を突き立て、素早く滑らせた。

 イグアナの黒い皮膚はいかにも分厚く硬そうで、表面は不規則な凹凸に覆われ、食べるにはまだ早いアボカドの表皮のような見た目だった。その皮膚が、ナイフの刃によって音もなくなめらかに両断されていく。人間でいうへその辺りから、真っ直ぐ上って喉元まで。内臓を掻き出すつもりかもしれないが、少なくともその時はまだ、外側の皮膚しか切れていなかった。

 着物を脱ぐようにして現れ出たイグアナの肉は、明るい緑色に黒い縞模様が走った奇妙な柄をしていた。表面はてらてらと濡れているが、血の一滴も噴き出してはこない。黒縞は体の正中線に沿って太く縦に伸びたのち、Y字に分かれて足の末端へと続いていた。そうした太い流れからも新たな縞が無数に枝分かれをして、あたかも原始的な血管系のようでもある。皮膚が青いアボカドなら、こちらは歪なスイカだ。もし強いて動物に喩えるならば、鮮やかすぎるウシガエルの体表……。

 そして、私の視野はふいにイグアナの胸元から逸らされた。声を掛けられたのだろう。帽子の男か、あるいはまた別の男なのか。首から上は覚えていないが、手元だけは嫌というほどはっきり覚えている。目玉だ。何かの、生っぽい眼球を二本の指でつまんでいる。何かと言われればそれはイグアナの眼球でしかあり得ない。元の体格にしてはあまりに小さなそれを、男はなぜかこちらに差し出してきていた。視神経は繋がっていないようで、理想的な球形をしている。黒目もまた豆粒のように小さい。

 男の空いた方の手が伸びてきて、あっという間に額を押さえられてしまった。男は無言のまま、片手の眼をさらにこちらへ近付けてくる。小さな潤んだ眼球が視界の右側を覆いつくすと共に、目頭が強く圧迫された。痛みは無い、夢だから。それでああ、イグアナの眼を無理に埋め込まれたのだなと思ったが、右の視界は潰れたまま戻ってこなかった。

 耳元でしきりに声がする。これは日本語で、「右眼に集中して、それから左上に集中」、そんなことを言われたような気がする。帽子の男の声かもしれない。

 言われた通り意識を順繰りに移していくと、確かに元右眼のあった左上の方、ややこしいがつまり鼻梁と右眉に接するぎりぎりの位置から、新しく小ぶりな視界が誕生していた。自由に視線を動かすこともできる。そんな乱暴な、第一こちらは元から盲目だったわけでもなし、とんだありがた迷惑だと目を回して、

 そこで目が覚める。時計は見ていないが、それは朝の十時頃だっただろう。すぐに三度目の眠りに就いたが、再び夢を見ることはなかった。

 

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https://anqou.net/poc/2021/06/15/post-3461/feed/ 0
硝子の島 https://anqou.net/poc/2021/05/07/post-3449/ https://anqou.net/poc/2021/05/07/post-3449/#respond Fri, 07 May 2021 14:24:53 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3449

 もう家に帰りましょうよ、あなた。君がそう言った。上着がないと、ここは少し寒いわ。

 僕は辺りを見回して、隣に立つ君へ微笑んだつもりでいた。帰るったって、もう家の場所だって分かりゃしないだろう。あらそうね、と笑う君の桃色の声帯が、くつくつと上下に揺れる。もちろん、僕らにとってそれはひとくだりの冗談にすぎない。帰る必要だって、もうない。

 透ってしまったアスファルトの道路を、氷の川に喩える人がいた。流れる水も泳ぐ魚もないが、眼下数十メートルの際には微かに濃灰色の煙が揺れている。今もなお下がりゆく地殻の限界高度がそこだ。そこから上には何も見えない、こうして歩いていると、君と二人で空を飛んでいるようにも思える。

 また下を見ているのね。君の咎める声が耳朶を揺らすほど近くから聴こえて、僕は思わず背筋を伸ばした。一拍遅れて首から先が持ち上がる。

 見上げるのは痛いんだ。僕には眩しすぎる。舌が上手く回らないから、まともにそう言えた自信はない。眼前には地平の先まで続く透明で巨大な塊。世界が透り始めて以来、ビルや住宅のように大規模な人工造型は他の何よりも早くこうなった。

 ほぼ完全に透ってしまった屋根瓦や外壁は、さながら数十の面でカットされたダイヤモンドのように、あるいは削られてグラスに入った純氷のように、陽の光を透し、あるところでは跳ねかえらせ、曲げ、散らしてしまう。今やどこを見渡そうと、折り重なる極光から逃れる術はない。僕はこの数日ですっかり下を見る癖が付いてしまって、君はそれを度々注意する。そしてこう言うんだ。「ちゃんと顔を上げて。今なら天国がよく見えるわ」。

 その言葉も今度だけは聴こえてこないことに気付いて、僕は君の立つ方へ顔を向けた。緩やかに結合した頬の筋繊維と左の眼球が真っ先に動いて、君から一番遠い右耳はうっかり元の位置に取り残されてしまったようだったが、僕は気にしなかった。

 君の声帯が透り始めていた。花びらのような形の器官はいつしか鮮やかな肉の桃色からピンクパールの淡い色に変じ、とっくに透りきった喉の奥に滞留して動かない。君の見えない唇が、僕のすぐ傍まで近付いてきたのを吐息の熱で感じた。声がうまく出せないの。左の耳元で君が囁き、指先の髄を伸ばして、僕の声帯に触れる。綿に包んだような緩慢な痛みを感じて、僕は眉間に皺を寄せたことだろう。だが君の指はもっと痛んだはずだ。

 やっぱり。透りの進みはわたしの方が早いのね。あなたを一人にさせてしまうわ。ささやきは既にその声色までをも失ってしまっていたから、それが寂しげに聴こえたのは単なる僕の思い込みだ。

 わたしを見て。君が言ったからそうした。純白の光に晒された君のからだは、今や肌のほとんどが透り落ち、内側を覆う血管や脂肪、さらにその奥までもがはっきりと見て取れる。あらわになった胃袋が僕に見られて恥ずかしがるように小さく蠕動した。

 醜いでしょう。外側から一枚、一枚身ぐるみを剥がされて。最後には骨も残らないわ。あまりに小さな君の声は、ろれつが回らないせいだろうか、どこか楽しげに聞こえた。出会ったばかりの頃の君、何かあるたび弾むように笑ってみせた少女の声。

 下顎の関節が緩んだせいで僕は何も言えなくて、代わりに首をゆらゆらと揺すってみせた。醜くない、綺麗だと、本心からそう思った。氷山のように聳え立つ透明たちの中で一際映える動脈の緋色、脊椎の白、筋膜、烟るような毛細血管が何重にも層をなす彩色を見て、僕はかつて君と見たヴェネチアの硝子細工を思い出している。

 モナート島の硝子工たちは、一握りの珪砂と酸化物からこの世のあらゆるものを造る。花瓶やグラス、耳飾りや、壁に飾る大きな皿はもちろん、翼を広げた鳥、透き通る花弁のブーケ、鞍を背負った馬、柱時計、黄金色の尖塔を戴く壮大なムスク、粘菌の模型、荒ぶる海に浮かぶ帆船、モミの木のツリーに吊るした電飾、兎の親と子供、僕らの住む家、きらびやかなドレス、煙を吐く汽車と乗客たち、野原に生え揃う背の低い植物はみな朝露までもが硝子色に凍りついている。葡萄の房が実った蔓の形のペンダントは、旅の土産に二人で選んで買った。今も君の首元を飾ってくれていることだろう。

 あなた、と君の呼ぶ声が脳へ響く。頭蓋を砕いてやわらかなこの脳を満たす。僕はもうしばらくだけ目を開けておこうと思った。それは単なる直感でしかないのかもしれない。僕らはもう、すぐ傍に自分たちの終わりが控えていることを知っている。僕は片腕を回して君の背中を抱き寄せた。指先の管があちこち君のからだに絡みつく。二人分の肋骨が触れ合って音を立てた。深くゆっくりと息を吸い込む。肺と心臓はまだ動きを止めていない。

 君へ口吻けをしようとして、互いの口元がもう透りきっていることに僕は気付いた。次第に眼が霞む。全身が光に清められ、希釈されていくのを感じた。じきに眩い光が世界の何もかもを照らし尽くすだろう。夢を見ているようだった。眠りへ落ちていく赤子になったようでもあった。焦点の定まらない視界の中で君は、どちらのとも知れない胸元の血管を指の骨で切り解いている。

 火の粉の爆ぜるような音がしたように思う。降り注いだ温かな血が僕らの透明なからだへ、溶け込むように鮮やかな色を差していく。君は一雫の緋色をすくって自分の顔へ滑らせた。何もなかった場所に君の唇が浮かびあがって、次の瞬間には微笑んだ。君がまだ見えることが嬉しくて、僕も同じようにした。寒くなんかない。僕らに上着は必要ない。

 硝子の君に口吻けるその瞬間、腕から垂れた血が君の首元まで伝って、赤々と実る葡萄の房に変わっていった。

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https://anqou.net/poc/2021/05/07/post-3449/feed/ 0
大学を卒業できそうなので大学生活を振り返るやつ https://anqou.net/poc/2021/03/15/post-3438/ https://anqou.net/poc/2021/03/15/post-3438/#respond Mon, 15 Mar 2021 14:19:20 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3438 なんか大学を卒業できそうなので大学生活を振り返るやつをします。

B1

京大は入学するとビラロードとかいうクソみたいなところを歩かされるんですが、そこをビラ 1 枚で通り抜けるなどしていました。

プログラミングの記憶はほとんど無いけど、鼻くんとかを使ってプログラムを書いていた気がします。

もしかしてカオスの坩堝はこの学年で作ったんじゃないかと思ったらやっぱりそうでしたね。もうそんなになるのか。もともとは 2017 年の AdC をやるためのブログだったんですが、いまや総記事数が 300 近いサイトになりました。

あと第二外国語でロシア語をとっていました。キリル文字が面白かったので坩堝に記事を書いたりしていました。今でもキリル文字が出てくると頑張って読もうとするけど、ロシア語自体はほとんど忘れてしまいました。

有志で蟻本を読む輪読会をしたり、Linux 講習会をやったりしていました。AtCoder で ABC/ARC とかを解いていたのも多分このころですが、解けなかった問題の解答がコンテスト後に Twitter に流れてくるのが嫌でやめました。メンタルが競プロに向いてない。

GPA ポケモンのサイトを作ったのもこのころです。

2018 年の正月には、ddの出力先を間違えてディスクを吹き飛ばしたりしていました。fsckを振り回してなんとか復旧しました。

割と A+を取れた授業が多くて GPA 4.12 とかでイキってたら、何人か友達をなくしたりしました。みんなは気をつけてください。

あと鮟鱇丼という Mastodon を立てていたのですが、サーバー操作ミスで吹き飛ばしたりしていました。

B2

5 月にセキュリティ・ミニキャンプ in 兵庫に、8 月にセキュリティキャンプ全国大会に@VTb と一緒に参加しました。全国大会の顛末は坩堝にも投稿しました(応募用紙, 開発記)。低レイヤー的なことをやったのはこれが初めてだったのですが、めちゃめちゃに楽しい経験ができました。 aqcc を書いた後に物足りなくなってAQaml というセルフホスト OCaml コンパイラを書いたりもしました。あと Kernel/VM 関西 9 回目で aqcc について発表して、ベストオブ頭おかしいをもらいました。めちゃめちゃ嬉しかったです。

この話をアカデミアのよくしらないおじさんにしたら全否定されたので、アカデミアには絶対に行かないという強い意志を持ったりしました。このあたりの話はいずれまとめて短いエッセイにしたいなぁと思っています。

ちなみにこのおじさんはこの後もちょくちょく私を惑わせています。

ミニキャンプと同時期にわくわく鮟鱇ランドという Mastodon を立てて、身内で遊び始めました。これも若干メンバーを増やしつつ現在まで続いています。ちなみにこの名前は wotto さんが考えてくれたやつです。

初めは Twitter と相補的に使っていたのですが、最近はもうほとんど Mastodon でしか活動していません。Fediverse はいいぞ。みんなも連合しよう。 Mastodon を 1 年半くらいやったときに坩堝にも記事を書きました。ちなみに B3 で本格始動する未踏のチームから参加のお誘いが来たのもこの Mastodon の DM でした。

あとニューラルネットワークの研究を書くプロジェクトに参加して論文を書いて、査読が通らなかったりしていました。

割と A+を取れた授業が多くて GPA 4.12 とかでイキってたら、何人か友達をなくしたりしました。みんなは気をつけてください。

B3

2019 年の 3 月に@VTb と@nindanaoto にいきなり準同系暗号を用いたセキュアなプロセッサ開発に誘われて、急いで応募資料を書いて未踏事業に応募したところ通ったので、B3 の間はずっとそれをやっていました。その顛末は前に坩堝にも書きました(VSP の紹介未踏体験記)。応募資料と、終わった後の成果報告書はGitHub 上で公開したので良かったら見てください。ちなみに VSP は Virtual Secure Platform の略なんですが、もともとは P は Processor で、後から「プロセッサ以外にも作るもの死ぬほどあるやんけ」といって Platform に変えたという経緯があります。

未踏期間中は、開発をしたいのに試験があったりして、ままならない思いをしていました。

それから、大学の演習で FPGA 上でプロセッサを作るというものがあったのですが、ハードウェアはつらかったのでソフトウェアの勝負に持ち込むべくコンパイラを書いて、当時流行っていた「1000 円でサイゼリヤで最大何 kcal の食事をできるか」という問題を自作プロセッサ上で解いたりしました。これもカオスの坩堝に書いたのですが、思いのほか好評で、初めてはてブにたくさんコメントがついたりしました。あとロボ太さんに言及されたり、ハードウェア実験の主担当の先生に言及されたりもしました。めちゃめちゃ嬉しかったです。

あと世界の真相を知ったりしました。

ちなみにハードウェア実験のソート速度を競うコンテストでは@VTb がぶっちぎりで優勝していました。シングルコアの性能としては歴代トップらしい。

それから応用情報技術者試験を受けて受かったりしていました。普段は自分の好きなことしか知識を得ないので、こういう資格の勉強をすると普段なら絶対に知り得ないような内容(PMBOK とか)を知ることができました。

ISUCON 9 に出て、ボーダーで予選を通過して本戦を欠席したりしていました。これも坩堝に書きました

VSP以外で作ったものとしては、mattnさんのlongcatコマンドが流行っていたので、それに便乗して「流れてくる音楽で伸びたり縮んだりするlongcat」を作ったりしていましたが、全然ウケませんでした。技術的にはSixelを知れて面白い経験でした。

あと A+を取れた授業が多くて GPA 4.11 とかでイキってたら、何人か友達をなくしたりしました。みんなは気をつけてください。

B4

実は 2020 年のまとめ記事を坩堝に投稿したので、新しく書くことはあんまりありません。

4 月に行われるはずの研究室配属がコロナで 1 ヶ月ずれ込んだりしていたので、その間にカラオケ Web アプリ Damjiroを書いたりしました。

GPA ポケモンがトレンドに載って、4 万 hit を叩き出していました。

USENIX Security っていう学会に VSP の論文が通ったので、ツイートしていいねを稼いだりしていました。

論文は理論的な側面が強くて、@nindanoto にめっちゃ負担をかけたので感謝です。

VSP まわりでいうと、@nindanaoto がセキュリティ・キャンプ 2020 で講師をしていたので、それをサポートするチューターをやったりしていました。その過程で都合 3 回目となる TFHE ライブラリを書いたりしました(aqTFHE3)。@nindanaoto の講義スライドに合わせて書かれていて、世界で一番分かりやすいTFHEライブラリだと自負しています。

ISUCON 10 に出て、学生枠で予選を通過して本戦で fail したりしていました。これは梅さんが坩堝に書いてくれました(予選本戦)。このときに aquery という Go 用の SQL スロークエリアナライザを開発したり、fgprof という既存のプロファイラのバグを取ったりしていました。

B4 の後半は F*というプログラム検証用プログラミング言語を使って、ブロックチェーン用のストレージライブラリに証明をつけていました。この F*というのが曲者で、だいぶ泣いていました。

泣いた内容をまとめて技術ブログの記事にしたりしました。これは未だにちまちま更新しています。

F#という言語を触って代読 Discord ボットを作ったりしていました。これも技術ブログの方に書きました。 F#は OCaml を.NET 用に Microsoft が改造した言語で、関数型っぽい形で.NET が触れます。個人的にはオフサイドルールが OCaml の文法とこれほどマッチするとは思いもよらなくて面白かったです。 .NET 側の事情に引っ張られて若干型推論が弱いのと、フォーマッタ(fantomas)の完成度が低いのが玉にキズです。

そのあとずっとやってみたかった Erlang/OTP と Elixir を触っていました。Erlang/OTP でalqo というアルゴを遊べる Web アプリを作ったり、 Discord の代読ボットを Elixir で書き直したりしていました。 Erlang と Elixir はかなり良い言語で、アクターモデルがよくハマる Web まわりではとても楽しくプログラミングすることができました。文法としては実は Elixir よりも Erlang のほうが好みなのですが、Elixir のほうが人気があるのでライブラリが充実していて、 Elixir でプログラミングするほうが楽そうな事情が悲しいところです。あと Dialyzer という型をつけるためのツールがあるのですが、あんまり強くないのも若干残念です。

さて今年度はコロナ禍で、大学に行ったのは年度中 5 日程度しかありませんでした。ほとんどすべてのものがリモートになったわけですが、これが意外と快適で、コロナが終わってもこのままであってほしいなぁと思うくらいでした。特に、ひどいときで 1 週間に 1 回なっていた偏頭痛が、今年度に入ってからピタッと止まったのは、リモートになったおかげで睡眠時間がちゃんと確保できたからだろうなぁと本気で思っています。

あと A+を取れた授業が多くて GPA 4.11 とかでイキってたら、何人か友達をなくしたりしました。さて今の私の友達は何人でしょう。

ちなみに、B1 のときに予言したように、彼女は 4 年間できませんでした。

感想とか

書き忘れていることもたくさんありそうですが、大きなところは大体書いたかなと思います。 4 年間あっという間だった気がするのですが、こうして並べてみると意外と色々おもしろいことができたなぁという感じです。今後もこういう生活を続けて行きたいのですが、世知辛い世の中で就活なるものをしないと餓死してしまうようなので、そうも言ってられないかなと思っています。

というわけであんまり締まらないですが終わりです。ツイートを貼りまくって終わってしまいましたが、ここまで読んで頂きありがとうございました。

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https://anqou.net/poc/2021/03/15/post-3438/feed/ 0
学部4年間で読んでよかった短篇小説best3 https://anqou.net/poc/2021/02/28/post-3425/ https://anqou.net/poc/2021/02/28/post-3425/#respond Sat, 27 Feb 2021 20:12:07 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3425  STARTです。二日後に論文の締切があり、作業をしなければならないのですが、昨日それとは違う大きな締切を越えたところなので気持ちが今一つ切り替わりません。先日のwottoの投稿に端を発する「best3」については、読んだ時から流れに乗るかどうかかなり迷っていたのですが、暇つぶしと思って少し書いてみることとしました。選択肢が増えると選ぶのが大変なのであえて短篇に絞っています。

三位:米澤穂信「シャルロットだけはぼくのもの」(『夏期限定トロピカルパフェ事件』、創元推理文庫)

 米澤穂信から一つ、となるとこれかと思う。「柘榴」と少し迷ったけど。真夏のある昼下がり、甘いものに目が無い女の子である小山内さんの家を訪れた主人公が、彼女のためのケーキをこっそり食べてしまうといういわゆる倒叙形式で展開される日常の謎だ。さっきまでそこに存在していたケーキの痕跡をいかにして消失させられるか、という馬鹿馬鹿しくも綿密な計画と、それが突き崩される瞬間。緊張感ある「日常の中の非日常」が何より読んでいて震えるほどに楽しい。

 それと、短篇ランキングとしてはいきなり趣旨から外れた言及になるが、本書は連作”推理”短篇という形式が組み立てる物語の面白さを初めて教えてくれた小説だったと思う。

二位:津原泰水「天使解体」(『綺譚集』、創元推理文庫)

 本書を開いて初っ端がこれだったということもあり、読んだ瞬間なんだこれは、と驚愕させられた掌編。わずか十二ページで語られるその内容は常軌を逸しているというより他ないが、細かな叙述の積み上げによって、語り手の見る異様な世界を読み手の自分までもがレンズ越しに一時覗き込んだような気になる。絶対に見えないはずの景色、色彩を、瞬く間に眼前へ突き付けられてしまった。初読時にはおかしな笑いが漏れた。人は小説を通して異世界へ足を踏み入れられるとよく聞くが、この小説は言わば一文一文が世界を端から異形のものに塗り替えていっているのだと、読みながらに実感する。

 同短篇集では「ドービニィの庭で」も好きだ。「天使解体」と併せて、小説を通して描かれる色彩について以後考える切っ掛けになった。

一位:伴名練「美亜羽へ贈る拳銃」(『なめらかな世界と、その敵』、早川書房)

 化け物。先程幾度目かの再読を終えて、多分一年ぶりくらいに同じ呟きに至った。「オールタイムベスト一位に挙げて、これが好きだ好きだと言っているうちにいつしか神格化してしまっているのではないか? 自分の過去の感想に胡坐を掻いてはいまいか?」という不安からの再読だったが、同じ理由で去年も同作を再読していたことを今更思い出している。

 舞台は数十年後の未来、脳へインプラントを撃ち込むことによって感情の励起をコントロールできるようになった社会において、遂に科学的な実現を遂げた「永遠の愛情」と、永遠もなにもない恋の話。本文冒頭の言葉を借りるなら、「彼らが、いかに互いを愛し合わなかったかの物語」だ。書き換わり得る人間の感情の下に展開も思考も目まぐるしく変化していくため、読んでいるこちらまでだんだん脳が破裂しそうになってくるが、吹き飛ばされそうになりながら付いていったその果てには、美しく凪いだ海のような結末が待っている。伴名練の小説を読み終えた時に去来する、「果てにまで辿り着いた」という静かな感動がたまらなく好きだ。上では「天使解体」について「見えないはずの景色を突き付けられた」と述べたが、私にとってこの小説は、私を知らない場所へ連れて行ってくれる、一緒に旅をしてくれるパートナーのように思える。

 もう一つこの小説の好きな点がある。話がめちゃくちゃ面白いということだ。ともすれば思考実験的なテーマのはずが、一度読み始めるとこれが止まらない(例:現在時刻は午前四時五十分。今日は論文を書かなきゃいけないはずなのに……)。これも作中の言葉を借りるが、本作には至る所に「ただの劇的効果」なる炸薬が込められていて、そこを通りがかった人間へ雨あられと面白さの弾丸を浴びせかけてくるのだ。もちろんそれが刺さるかどうかは個人の好みによるが、読んでいると「こちらにこれが刺さると分かって深々と刺しに来ているな」としみじみ思う。伴名練に対して時折「ずるい、許すまじ」との感想が湧いてくるのはこういう次第だ。いつか私も、別に読み手の心情を意のままに操ることなど望みもしないが、この手で綴る文章は、物語は、一作くらい自分でも満足行くほどに操ることができればなどという、これは単なる野望である。

 以上best3でした。眠いので、寝ます。今後は少なくともここに書いた内容が恥ずかしくってたまらなくなるくらいには本を読んで、色んなものを知っていきたいと思います。いやまあ、既に大分恥ずかしいんですが。こんな記事誰も見ないでください。でも伴名練の小説は読んでください。

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https://anqou.net/poc/2021/02/28/post-3425/feed/ 0
学部4年間で読んで良かった歌詞ランキングbest3 https://anqou.net/poc/2021/02/11/post-3374/ https://anqou.net/poc/2021/02/11/post-3374/#respond Thu, 11 Feb 2021 09:57:15 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3374 feeleです。卒論の試問会も終わり暇なのでやれと言われた前から書きたかった記事を書きます。これを見た本年度卒業予定者の方も是非書いてみてくださいな。

ちなみに自分は学部4年間で本を読んだ記憶がほとんどないので読んで良かった本ランキングが付けられないんですが、 ぱっと思いつくのは響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそですね。高校の部活での熱血さと歪さ、そして女の重さが2巻で詰め込まれていて非常に面白かったです。

ということで3位から順に発表していきます。

 

3位 : カレンダーガール

何てコトない毎日が かけがえないの

オトナはそう言うけれど いまいちピンとこないよ

アイカツ無印の初期ED曲のカレンダーガールですが、この曲のいいところは物語が進むにつれて歌詞とアニメのシーンがリンクしてくるところです。特に50話のタイトルがそのまま歌詞から引用されているため、そこまで見ると一気に違った聞こえ方になると思います。曲名のカレンダーを過去の想い出や未来の予定、そして現在の忙しさを表現することに使っているところがとても洒落ていて、その性質からアイカツシリーズが続く限り永遠に伸び続ける曲だと思っています。

 

2位 : STORIA

明日はGLORIA 明けない夜は

星を追いかけよう きっとね

そこでしか見えない景色がPre cious

Re:ステージ!のトロワアンジュというユニットの曲です。この絵の清楚さからわかる通りトロワアンジュはお嬢様3人アイドルユニットで、この曲では特にセンターの白鳥天葉様に寄り添った歌詞となっています。ただし、彼女の背景について語られたストーリーがあまりないため、キャラクターとしての曲の解釈はまだまだ不十分です。

しかし、キャラクターについて詳しくなくてもこの曲の歌詞には素晴らしいものがあります。この曲は落ち込んでいる人や失敗した人に対し、素敵な言い回しと力強い歌声で励ましてきます。たとえばチグハグな日も シナリオには必要でしょうだったり壁が見えるのはきっとね その先を見ているからでしょう高く飛ぶためにはしゃがむ日もあるでしょ?などです。こういった肯定的な言葉を投げかけてくれるため、落ち込んだときや疲れた後などに聞いて雑に自己肯定感を高めることに重宝してきました。

 

それはそうと引用箇所の最初1行は天葉先輩が歌うのに対し後ろ2行は奏先輩が歌うのヤバくないか?なあ

 

1位 : 宣誓センセーション

一寸先は笑顔だよ だってボクがそばで笑うから

 

 

 

   

一寸先

読み方:いっすんさき・ちょっとさき

ほんのすぐ先。距離的な意味でも時間的な意味でも用いられる。「一寸」は「ちょっと」とも読むが、「一寸先は闇」の慣用句では一般的に「いっすんさきはやみ」と読まれる。

実用日本語表現辞典

 

 

……

 

 

 

???????????????

 

いっ‐すん【一寸】

1 尺貫法の長さの単位。→寸

2 わずかな時間・距離・量、また小さい物事のたとえ。「一寸のひまも惜しむ」「一寸のすきもない構え」

デジタル大辞泉

 

……………………?

 

すん【寸】

1 尺貫法の長さの単位。1寸は1尺の10分の1で、約3.03センチ。

2 長さ。寸法。「寸足らず」

3 ごく短いこと。また、ごく少ないこと。

デジタル大辞泉

 

……………………

 

 

…………………………………………

 

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

??

 

 

!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?

 

……

  

…………

 

 

 

……

 

 

……………………

 

……………………………………………………………………………………

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 

 

あ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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https://anqou.net/poc/2021/02/11/post-3374/feed/ 0
学部4年間で読んで良かった本ランキングbest3 https://anqou.net/poc/2021/02/10/post-3370/ https://anqou.net/poc/2021/02/10/post-3370/#respond Tue, 09 Feb 2021 18:19:23 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3370 wottoです.明日(今日)は卒論の試問会があるので,それまでに研究室のセミナーでボコボコにされたスライドを修正しなければならないのですが,やる気が出ないので前から書きたかった記事を書きます.これを見た本年度卒業予定者の方も是非書いてみてくださいな.

3位:Effective Python 第2版

Python言語を書くにおいての様々なテクニックが載っています.なんというか,私のような「プログラミングは数値実験でしかほとんど使わないよう,きれいなコードを書くモチベーションがないよう」という人にとってぴったりのレベル感だと思います.でも半分くらいしか読んでない.はよ読め.

第2位:情報幾何学の基礎

情報幾何学の基礎と銘打っていますがちゃんと多様体の基礎(接ベクトル空間,ベクトル場,アファイン接続など)をやってくれます.情報幾何自体はまあ面白いなあ程度だったのですが,この本で勉強した多様体の諸概念を知っといてよかった!という場面がこの1年でしょっちゅうありました.逆に言うと,情報系の人はこの本に出てくる程度の多様体の知識があれば良いんじゃないでしょうか.知らんけど.

 第1位:量子情報科学入門

この本に出合って人生が狂いました(本当)
情報系の人で量子情報に興味ある人はとりあえずこれ読めばいいんじゃないでしょうか.非常に丁寧に説明の上に量子情報理論の面白さが濃縮されています.でも最後のほう読んでません.はよ読め.

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https://anqou.net/poc/2021/02/10/post-3370/feed/ 0
2020年のまとめ https://anqou.net/poc/2020/12/31/post-3355/ https://anqou.net/poc/2020/12/31/post-3355/#respond Thu, 31 Dec 2020 11:21:47 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3355 2020 年にやっていたことを雑にまとめる。

1 月

未踏で VSP の開発をしていた。KVSP の基幹部分である準同型暗号ゲートの評価エンジン Iyokan を 1 月 13 日あたりから書き始める。当時並行で、ユーザーインタフェースの kvsp コマンドも作っていた。いまの KVSP のベースは、おおよそこのあたりで形作られていく。 @nindanaoto が TFHEpp を書いたのも正月三が日だったはず。

締切が近づくにつれ VSP チームに険悪なムードが漂い始めるが、全員で Factorio マルチプレイを n 時間やり、ギリギリのところで均衡を保っていた。

あと大学の試験勉強とかしてた気がする。覚えてない。

2 月

引き続き VSP を開発した。未踏の発表会が 2 月中旬にあって、この直前にバグが見つかって直したりした。発表会が終わった後も未踏の作業期間が続いていて、Iyokan とか kvsp の改善をやっていた。カーネル/VM 探検隊@関西 10 回目で発表したのもこのころ。

2 月末から 3 月頭にかけて大学で試験があったはず。このあとコロナ禍に突入していくため、試験日を最後に大学に来なくなる。

3 月

東京に VSP の紹介発表をしに行ったりしていた。多分これが最後の東京旅行。次に行けるのはいつになるのか。

2 月末から 3 月頭にかけて未踏の成果報告書を書いたりした。全文をGitHub で公開した。未踏期間は 3 月中旬で終わった。

3 月末に VSP チームで温泉旅行の予定だったが、大阪で外出自粛令的なやつが出たので中止。結局今まで行けていない。

3 月 29 日にカオスの坩堝で2020 年春季投稿大会をやった。

4 月

大学が、4 月の講義計画を 3 月末になって白紙に戻したため、めちゃめちゃに暇になった。暇に任せて採点機能付きカラオケ Web アプリ Damjiroを作ったりしていた。

なんだかんだあって研究室配属が第一希望に決まったりした。

5 月

研究室での活動がリモートで始まった。研究会やら輪読やらは全部 Zoom 経由になった。昨年と比べて、朝早く起きる必要がないのでめちゃめちゃに楽になった。昨年までは偏頭痛に悩まされていて、ひどいときには一週間に一回死んでいたが、今年はよく眠れたおかげか、ついに一度もならなかった。

院試で必要な TOEIC がコロナ禍で中止になったりした。最終的には、今年の院試では TOEIC の結果が不要になった。

4 月終わりから 5 月にかけて、VSP を論文にまとめるため動き始めた。動き始めたといってもメインで書いていたのは@nindanaoto で、私は追加で実験をやったり、@nindanaoto の無茶振り機能追加要求に対応したり、 @VTb をせっついて新しいプロセッサを書かせたり、それを KVSP に取り込んでもう一度実験をしたりしていた。未踏期間が終わるとコードを書いてもお金が出ないんだなぁということを認識したりした。

6 月〜7 月

論文を書き上げて USENIX Security に提出した。書くべき英語が全然分からなくて、先生にめちゃめちゃにお世話になるなどしていた。

あとは院試勉強というのをしていた。始めの方は気楽にやっていたが途中から余裕がなくなってきて大変だった。とくにコードを書く時間がなくなってきた。実際 GitHub の contributions のところを見ると、6 月から 7 月にかけてぽっかり空いている。 OS の勉強をすると OS を書きたくなってくるのでつらかった

8 月

院試を受けるために大学に 2 日行った。実に半年ぶりの大学だった。寒かった京都は暑くなっていた。ちなみにネタバレすると、院試後に次に大学に行くのは 12 月末に一度だけなので、今年度は結局 3 日しか大学に行っていない。

研究室で、OCaml でなにか書かないといけないというタスクがあったので、定理検証器 Qlown を書いた。依存型ベースの、Coq の弱いバージョンみたいなものができた。一応n + m = m + n程度は証明できる。もともと Qiita の記事を参考に書き始めたのだが、雰囲気で拡張したら簡約が良くわからなくなってそのまま放置することになった。

9 月

ISUCON10 に出て、予選を学生枠で突破し、本選で fail(失格)した。どちらもチームリーダーの梅さんが坩堝で記事を書いてくれた(予選本選)。今年は本当に何もできなくて、メンバーの他二人に終始助けられた。Web は難しい。

VSP 論文の rebuttal が 9 月頭くらいにあって、なんやかんやあって minor revision になって、諸々を修正して accept された。

あと卒業研究が本格的に始まって、F*というプログラム検証用の関数型プログラミング言語をつつきはじめた。

10 月

コロナの流行が若干落ち着いていたので、VSP チームでモツ鍋を食べに行った。その折に@nindanaoto から誕生日プレゼントで Let’s Split というキーボードを貰ったが、ファームウェアの焼付がまずいか何かで片手だけキーの位置が反転していた。直し方がよく分からず、そのまま倉庫に眠っている。

セキュリティキャンプに L トラックチューターとして参加した。講師は@nindanaoto で、チューターは私と@VTb で、TFHE を教えるという内容だった。今年のセキュリティキャンプはリモートな上に 10 月から 12 月まであるという長期戦で、本当にこれで大丈夫かと思っていたが、最終的には結構うまくいったんじゃないかと思う。

11 月〜12 月

F*に苦しめられていた。なかなか思い通りの証明が書けずに苦労している様子がわくわく鮟鱇ランドの#fstarハッシュタグで確認できる。最近ようやく理解してきた。

まとめ

良いお年を。

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造語症 https://anqou.net/poc/2020/10/23/post-3347/ https://anqou.net/poc/2020/10/23/post-3347/#comments Fri, 23 Oct 2020 07:02:26 +0000 https://anqou.net/poc/?p=3347

オリジナル単語を自然に創る症状。主に精神病疾患者が「一般的ではない、辞書に載っていない造語」を創作し、さも当たり前のように使う症状。統合失調症の典型的な症状であり、アスペルガー症候群にも多くみられる。自分と他人との境界線が薄い(あるいは無い)という事が原因として「自分が当たり前に使う言葉」は「他人も認識出来る」という思考が原因とされている。

http://takei.anonyment.com/wp/精神疾患用語集/サ行/造語症/

かつて,私は「連歌的ジレンマ」という語を作り出したことがありました.あれは今から思うと自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群)の一症状である造語症だったのかもしれません.

「連歌的ジレンマ」を生み出したとき,周囲の反応が過剰ではないかと私は思っていました.私にとってこのような語を使うことは特に不自然なことではなかったからです.今はもう「連歌的ジレンマ」しか思い出すことはできませんが,このような造語を私はいくつも作り出していたのでしょう.

「連歌的ジレンマ」の経緯から,私は造語を作り出し使うことを避けるようになりました.それは一つの成長だと思いますし,そのときに自分の造語癖に気付けてよかったと思っています.

しかし「連歌的ジレンマ」は造語症という言葉では片づけられない,私の大事な思い出でもあります.造語症という言葉は今知りましたが,そんなくだらない概念に思い出を壊されてたまるか,とも思います.

まあ何が言いたいかというと,クソ食らえ,ということです.造語症は社会的にはよろしくないのでしょうが,そんなことはどうでもいい.「連歌的ジレンマ」に関して色々考えるのは楽しかったし,それが「造語症」なんていう造語じみた言葉で説明されてしまうなんて悔しいです.

私は自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder: ASD)と呼ばれる障害を持った人間です.ASDについて調べれば調べるほど,自分の行動がASDの症状やその二次障害で説明がついてしまう.じゃあ私はいったい何なのか,私はASDが人間の皮を被って歩いている(誤解なきよう,ASDの人を差別する意図はありません)存在なのか,と憤りを覚えてしまう.

なんというか,空しい,とそういうわけでこの文章を書きました.読んでもらった人には申し訳ないです.

以上

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