2021年05月一覧

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硝子の島

 もう家に帰りましょうよ、あなた。君がそう言った。上着がないと、ここは少し寒いわ。  僕は辺りを見回して、隣に立つ君へ微笑んだつもりでいた。帰るったって、もう家の場所だって分かりゃしないだろう。あらそうね、と笑う君の桃色の声帯が、くつくつと上下に揺れる。もちろん、僕らにとってそれはひとくだりの冗談にすぎない。帰る必要だって、もうない。  透ってしまったアスファルトの道路を、氷...