名前のある猫の話 2017/12/30 小説 1 イオ 「吾輩は猫である。名前はまだない。 この書き出しから始まる本が大昔に発行されたらしい。なんでもニンゲンである某とかいう輩が猫の振りをして本を書いたらしい。これは我々猫に対する冒涜であり直ちにやめさせなければならない!」 広場の真ん中でトラ柄が声高に叫んでいる。周りからにゃー、とやる気のない合いの手が入る。トラ柄が過激な演説をするのはいつものことであるし、一ミリも本能に訴えかけな...