名無しのNemoです。いまカリフォルニアは12月14日12:38ですね。
本編とは全く関係ありません。
 
 
 
 穴に落ちていた。

12月1日 天気:穴
 ぼくは見上げてからようやくそのことに気がついた。随分と高くから音がするとは思っていたが。穴の中ではそれもうまく聞き取れない。いま思うとここは真っ暗闇だ。自らの手の輪郭さえも掴みきれないほどに。いつ落ちたのかは定かではない。このじめじめとした穴蔵でずっと生きてきたのだろうか。手を伸ばせば両手が壁につく狭っ苦しい穴。
落ちた覚えはない。痛みはなかった。

12月8日 天気:穴
 気づけば毎日のように上を見上げていた。穴は深いようにも浅いようにも思える。穴を埋めようと試みた。地上が遠くなったように感じられた。壁を掘ってみた。爪に土が詰まった。音が近づいては遠のいていく。人が落ちてきたりしないだろうか?
怖いような嬉しいような。

12月10日 天気:穴
 壁の向こうからかすかに声が聞こえることに気がついた。いま無我夢中で掘っている。爪が剥がれたが構うものか。痛みはないようだし。
それほど穴の外に出たいわけじゃない。孤独なわけでもない。それでも仲間はいたほうがいいというものだ。

12月11日 天気:穴
 そこには大きな空間が広がっていた。大勢の人が住んでいるようだ。凸凹とした地形にそれぞれの見た目をした人。仲間はいるのだろうか。天井である岩盤には無数の穴。だれも気にも留めやしないようだった。

12月14日 天気:雨
 あれ以来向こうへは行っていない。気づいたら見上げることもやめてしまっていた。
ほんの少しの痛みがある。

X月X日 天気:晴
 比較的深い穴の中で手稿を拾った。泥や血で汚れているが読み書きはできそうだ。ぱらぱらとページをめくると後半になるにつれ文章が短くなっているのがわかる。私はこれに今日の日付を書きなぐった。
そしてそれを胸ポケットにしまい穴から出た。

コメント

  1. nininga より:

    天気:穴という描写