一月一日。
元旦。
僕は、目の前の白絹のような素肌に、ただただ魅せられていた。
彼女は僕のことなど眼中にない様子で、しなやかな肢体を白い床の上に横たえている。その柔らかな曲線と直線の黄金比が、僕の瞳を捕えて離さないのだった。
上気した人肌のぬくもりが、僕の肌を絶えず愛撫する。
思わず生唾を飲み込んだ。
その瑞々しい肌には一点の曇りもなく、洗練された白。穢れや濁りの一切ない、本物の白。「初めて」にふさわしい――そう思った。
手で触れる。わずかに震えていたのは彼女だろうか、それとも僕だろうか。触れた指先を見れば、しっとりと湿っていた。
僕は小さな瓶を手に取り、なだらかな曲線の上から、琥珀色の液体を垂らした。それは重力に誘われるままに、ゆっくりと彼女の体を舐めまわしていく。清廉なものを、この手でもって穢してしまった――その背徳感にも似た昂奮が、僕の背筋を這いまわった。
琥珀色に汚された彼女は、微動だにしなかった。ただ体を横たえているだけだった。しかしその気丈な姿は、かえって僕の欲望を駆り立てた。
もう我慢できない。
僕は箸を手に取り、小鉢の中の白い塊にあてがい、一気に押し開いた。
そのまま口の中へと運ぶ。
新年一発目の湯豆腐、おいしい。
やっぱり冬はこれですよね。
何故記念すべき初投稿をこんなクソみたいな始まり方にしてしまったのでしょうか。僕にもわかりません。
これだけを投稿すると、記事が短すぎるし僕の印象が湯豆腐に欲情する変態になってしまうので、弁明の意味も込めて自己紹介をします。させてください。
初めまして、トルクメニスタンです。パキスタンとも言います。京都大学文学部の末席を汚しております。文学部だから文章がうまいのかと言えば(まあ上の文章を読めばわかってもらえると思いますが)そんなことはありません。これからもっと上手になっていけたらなあと思います。よろしくお願いします。
さて、なぜ僕が冒頭で湯豆腐に欲情していたのかというと、はんぺんの話をしたかったからです。
はんぺん。
おでんとかに入っている、白くてのっぺりしたやつか―きっとこの記事を読んでくださっている皆様の多くは、そう思っていることでしょう。しかし、僕にとってのはんぺんは、白いものではありません。
僕にとってのはんぺんは、黒いものです。
何を隠そう誇り高き静岡県民である僕は、生まれてこの方、静岡県特有の「黒はんぺん」しか見たことがありませんでした。白いはんぺんなるものの存在は知っていましたが、言うなればそれはカバディやシーラカンスと一緒で、「あるらしいけどそんなの見たことないし一生触れる機会なさそう」なものだったのです。
しかし先日、京都某所にて、僕は白いはんぺんを見つけてしまいました。見つけた瞬間は、そりゃまあ衝撃でしたね。白いんだもん、はんぺん。天然記念物を発見したTOKIOの気分でした。そして、驚きと同時に、一種の感動を覚えました。そうか、白いはんぺんってやつは、ほんとうにあったんだなぁ―と。ほんの些細なことですが、それでも僕は、なんとなく幸せな気分になれたのでした。
地元を離れ下宿している、所謂「下宿勢」の皆さんにも、はんぺんの話ではないにせよ、似たような体験はあるのではないでしょうか。自分がこれまで生きてきた十数年間をころんとひっくり返してくれるような、「初めて」との邂逅。それって案外、いつも買い物をするスーパーとか、毎日惰性で走る通学路とか、そういう身近なところにあるのかもなって、そんな話でした。
駄文に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。溶け合った混沌の末端にまで目を配ってくださった皆様に、ささやかな幸せのありますように。
コメント
豆腐は冷奴の方が好き